俳句ラジオ番組「夏井いつきの一句一遊」のご紹介

【はじめに】

今回の記事では、2020年9月10日にYouTubeの夏井いつき俳句チャンネルにアップされた『【本棚回】壇蜜さんが気に入ったぬいぐるみとラジオの話』という動画から、夏井組長の冠ラジオ番組「夏井いつきの一句一遊」に関する部分を抜き出して、番組紹介記事として再編集しました。

一言でいえば、『聞く英会話』ならぬ『聞く俳句(上達)番組』だそうで。一体、どんな番組なんでしょう? さっそく見ていきましょう。

1.ウィキペディアの記載について

『夏井いつきの一句一遊』は、一地方ラジオ局のローカル番組でありながらウィキペディアに単独記事が立てられています。そこから概略を押さえていきましょう。

『夏井いつきの一句一遊』(なついいつきのいっくいちゆう)は、南海放送制作のラジオ番組。2001年7月2日に放送を開始した南海放送の他、IBC岩手放送、信越放送、RSK山陽放送、新潟放送(BSN)にもネットされている。本項では派生番組の『「一句一遊」虎の巻』も扱う。(2020/08/12 版)

南海放送というのが、夏井組長の地元たる愛媛県のAMラジオ局です。この記事を書いている段階では、全国5局ネットに拡大し、全国のみならず世界各地から投句が寄せられる人気長寿番組、20年の歴史があります。

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放送時間
RNB 南海放送:月 - 金曜日 10:00 - 10:10(2001年7月2日放送開始 - )
※「モーニングディライト」(月 - 木曜は「モーニングディライトブリーズ」、金曜は「江刺伯洋のモーニングディライト」)の内包番組

概要

毎週、事前に提示された兼題(季語や、漢字一文字など)ひとつについて、投句作品を夏井が出来に応じて……分類して、各曜日に紹介していく。

ということで、毎週平日の10分間の帯番組で、毎週一つの「兼題」にそってリスナーが俳句を送り、その出来を曜日ごとランク付けして紹介していくという形の俳句番組です。

まあ、「百聞は一見にしかず」なので、機会があればぜひお聞き下さい。

2.元動画について

冒頭にも記載した『元動画』は「本棚回」と題して本棚を紹介していく……はずの企画だったのですが、本を1冊も紹介することなく、『ぬいぐるみ』のエピソードだけで終わってしまった10分間でしたww(↓)

ただ、一句一遊という番組自体が毎日10分、週合計50分しかなく、投句の数も膨大になってきて、雑談などをする時間が全くないこともあり、夏井組長が番組について語る場面というのは、案外珍しかったりもするんです。

番組ディレクター「やのひろみ」さんのYouTubeチャンネルでの回も以前、noteでご紹介しましたので、そちらもご覧頂ければとは思いますが、(↓)

番組が発足したのは2001年。当時は今に比べて全く無名で、愛媛県下でごく一部の人だけが知っている程度の俳人だった【夏井いつき】が、ラジオ局で俳句番組を始めるにあたって、『様々な工夫』をしたんだと語ります。

一句一遊って、すごい下手くそな人も参加できるようにって工夫を、番組を始めた時に考えた。一週間に兼題(季語)が一つ出る。

という番組コンセプトは、放送開始当初から現在まで一環しています。ではその工夫とは何なのでしょう、一つひとつ見ていきます。

3.曜日ごとのランク付け

「一句一遊」は、平日5曜日の帯番組であることを活かして、曜日ごとに、ざっくり「出来」をランク分けしています。公的には、

 曜 日   目安    正人評
「月曜日」 才能ナシ  一番下手なグループ
「火曜日」  凡人   ちょっと俳句になってきた
「水曜日」 才能アリ  なかなか上手いグループ
「木曜日」  ―    基本的にはお便り紹介
「金曜日」名人・特待生 優秀作品(最優秀が「天」)

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厳密には、肌感覚としては、水曜日の句の中にも凡人60点台だったりしそうな俳句もありますので、あくまで「目安」と考えて頂ければとは思います。そして、番組内では、曜日名がそのまま「俳句の出来」のことを指す代名詞的な存在になっています。

4.上手い句以外も読まれるシステム

テレビなど他の俳句番組であれば、通常は『上手い句』しか読まれません。例えば、NHK Eテレの「NHK俳句」などでは、(一部、添削紹介コーナーを設けている選者もいますが、基本的には、)その週の兼題の優秀句9句や、過去の名句を紹介するだけで、下手な句は一切読まれません。

投句が沢山来て選び放題な「一句一遊」において、上手い句を上から順番に選ぶシステムだったらば、才能ナシの下手な句が取り上げられることは無かったでしょう。

しかし、「一句一遊」では5曜日のうち、才能ナシや凡人の俳句を紹介する曜日を「固定枠」として設けていて、上手い句を紹介する時間を削ってまで下手な句を紹介しているというシステムの番組なんです。

家藤正人さんは、『底の底にたまり切った、本来全く紹介されない俳句も、紹介して差し上げたい』と(好感度が 上がるか 下がるか は別にしても、)本音を語っていらっしゃいました。

夏井組長
「一句一遊という番組を、なんでそんなシステムにしたかといったら、下手くそな人から本当に上手な人まで、聞きながら投句しながら、成長していってくれるそういうものにしたかったんだよねー」

5.「聞きながら覚える英語」ならぬ

私も実際そうだったのですが、「一句一遊」は帯10分番組ということもあって、ちょうど『英会話リスニング』のラジオ番組や、CD講座1回分ぐらいの長さと似たイメージになるかと思います。組長曰く、

夏井組長
「ほら、『聞きながら覚える英語』とかあるじゃない、あれと一緒で、一週間聞くのを繰り返してると、ある日ね、難しくて意味分からなかった金曜の句の良さが、あー!って分かるようになる。それが分かるような日が来たら、その人は大きな階段を一つ上がることになる。」

ですから、「夏井いつきの一句一遊」というラジオ番組は、『聞く英語』ならぬ、『聞きながら覚える俳句』番組だと言えるのではないかと思った次第です。

(参考)夏井いつき一句一遊の『一週間』

「月曜日」は 失敗学び 「火曜日」は平凡学ぶ~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~

「水曜日」は才能アリで 「木曜日」はお便り紹介~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~

「金曜日」は難しくても 名人の優秀句ばかり~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~

新人よ 一句一遊の 一週間の流れです
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ~(後略)

6.人気番組になりすぎての苦悩

夏井いつきの一句一遊は、当初「5分番組」。それでも投句が全然なかったから、スタッフがリスナーの振りして投句していたと言います。開始当初は「半年で終わる」ぐらいに思っていましたが、徐々に夏井組長の毒舌が病みつきになり、「10分番組」となり、投句も広がっていったと言います。

人気が広がったのは特に2010年代。「プレバト!!」が始まり、「radikoプレミアム」で全国で視聴が可能になるとともに、ネット局が1→2→5局へと拡大していったことで、投句数が急増したと言います。

10分×5日で、週1時間足らずの番組では、どんなにペースアップして沢山の俳句を紹介したくても週150~180程度が限界。そうした物理的な制約がある中で、投句数だけが倍加して、上のブログ記事にあるように、投句数は数え切れず、今や『投句の重さ』を体重計で量ってる状態なんだそう。

2020年9月の『赤蜻蛉』の回では(兼題が作りやすかったこともあってか)過去最大の6kg超の投句が寄せられたんだそうです!

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ちなみに、ハガキ1枚「3g」、コピー用紙1枚「4g」ではあるんですが、その1枚あたり平均3~4句は書かれているとのことなので、概算ですが、『グラム数 ≒ その週の投句数』だという恐ろしい計算結果も出そうです。

故に、『週150~180』しか紹介できない(分子)中で、投句が『6,000句』程度寄せられる(分母)とすれば、競争倍率は「30~40倍」になってるというのが実情ではないかと思います。(すごい倍率!)

だから、月1回読まれるだけでも、実は凄いことなのだと再認識しなければなりません。以前は月に複数回読まれることもザラでしたが、ここ数年で投句が倍増している現状とに鑑みれば、致し方ない面も大きい気がします。
(もし仮に、上手い人の句しか読まれない番組だったならば、更に競争は激化し、上手い人ばかりが毎週読まれ、二極化していたものと想像できます)

7.『聞き書き隊』放送を聞けない地域からも投句が来る理由

動画の中では、以下の通りお2人が本音を吐露しています。

家藤正人
「今、全国5局ネットで放送してるんですけど、それに伴って投句の数も膨大に増えてきて、投句を全く紹介しきれないのが心苦しい。」
夏井組長
「全国だけじゃなくて、海外からも来てるじゃない? 『一句一遊』独特の聞き書き隊。」

2010年代に入って「radikoプレミアム」がスタートし、月額料金を払うことで全国のラジオ局の放送をリアルタイムに聴取することが出来るようになりました。しかし、海外のリスナーには対応していません。
それなのに、radikoプレミアムのスタート前、或いはスタート後も、ネット局以外の地域や、果ては海外からも投句が『一句一遊』には寄せられます。

そうした方々がどうやって番組を楽しんできたのか。それが『聞き書き隊』です。(掲示板のリンクを貼っておきます ↓)

番組始まって少し経った頃、『有志』が『勝手連』で始めた「聞き書き隊」は、番組の放送内容を文字起こしして、放送が聞けない地域でも、『採用』状況などを確認できるようになりました。十数年が経った今でも、担当者の変更はありながら途切れることなく続いています。(過去ログは特に重宝)

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【おわりに(1)】一句一遊を初めて知った貴方へ

完全なる初見の方には、ちょっと飛躍があったりしたかも知れませんが、『夏井いつきの一句一遊』というラジオ番組について、ご本人の動画をもとに紹介してまいりました。

今や、月額350円の「radikoプレミアム」を聞けば、日本全国どこでも聴くことが出来る時代になりましたし、そうでなくても、「聞き書き隊」を通じてラジオを文字で楽しむことが出来ます。

プレバト!! などで俳句に興味をもった人、俳句に興味はあるが番組を知らなかった方は、ぜひ『一句一遊』に一度触れてみてください!

【おわりに(2)】一句一遊に参加してみたい貴方へ

そして、「プレバト!!」で俳句に興味を持ったり、それ以前から俳句を作っていらっしゃる方、『夏井いつきの一句一遊』は、夏井組長に直接、俳句を選んで頂ける可能性が高いメディアの一つです!

上記のとおり、採用率は非常に低くなってきてはいますが、俳句の出来に応じて採用枠が設けられていますし、全国・世界どこからでも投句自体は募集中なので、ぜひ試しに投句してみて下さい!

投句に関しては洒落神戸さんのサイト(↓)をご参考になさってください。

ちなみに、投句については「専用投句フォーム」が出来ましたので、そちらからぜひ宜しくおねがいします。(組長が選句しやすくなるので)

私含め、月に1回も採用されない日々が続くかとは思いますが、番組で紹介されることは、あくまで、「俳句を続ける」ことの“グリコのおまけ”として考え、『採用されることを目的』にしないよう肝に銘じた上で『一句一遊』をお楽しみ頂ければと思います!

(紹介)一句一遊に投句してみた私の参加歴の記事

私も、2018年夏に『一句一遊』を知って、秋から投句をスタートしました。参加歴については、以下の記事に纏めてありますので、番組に興味をもった方はお時間あるときにご覧頂ければと思います。

それでは、番組内で、または次の記事でお会いしましょう!Rxでした!

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