見出し画像

「中田敦彦のYouTube大学」の書籍をクイズで紹介(その6)/書店業界の危機

【はじめに】
この記事は、2020年ゴールデンウィークに書いた記事4本の続編で、
・ クイズスレの感想戦(2021年4月24日開催「サン・ジョルディH」
「中田敦彦のYouTube大学」で取り上げられた書籍の紹介
の2テーマを兼ねよう、という試みの「第6弾」です。

(↓) 前回(第5弾)はこちらから

16.記事についての紹介

前回「第5弾」では、2020年度に紹介された「エクストリーム文学」な書籍を駆け足で紹介してきましたが、「その6」となる今回は1冊の書籍=2本の動画を深堀りしていこうと思います。その動画というのが、

【書店業界の危機①】スマホが書店の主力商品を駆逐(Bookstores in crisis)

です。元にした書籍というのが「私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏」永江朗 です。

(参考)記事を読む際の注意事項
問題群は基本的に「ウィキペディア穴埋め」形式です。
※作問当時(2021年4月)の情報であるとともに、あまり裏取りもしていませんので、内容の正確性等についてはご留意下さい。

17.「書店業界の危機」

まず、そもそも「書店(本屋)」というものの現在位置について見ていきましょう。今、本屋はどういう状況にあるのか。近似値クイズから参ります。

【 1問目 】
【 近似値クイズ 】です。
書店とは、本の店、という意味で、より具体的には書籍や雑誌の小売店や卸業者や出版社である。本屋とも呼ばれる。……

日本 [編集] ……
2000年から2018年の18年間で半減し【 何 】店であった。

これも「書店」の定義や、調査団体によって数字が大きく異なるので、本当の意味では適当でない「近似値クイズ」なのですが、ポイントになる推移という点では、概ね共通しています。動画にも出てきた通り「半減」しているのだそうです。

【 正解 】12,026店

これ、1万店って聞いて、多いのか少ないのか分かりませんが、日本の人口のほぼ1万分の1と考えると、1万人の町で「平均1軒」、10万人の都市で「平均10軒」という単純計算になりますね。

リアルの書店が半減(衰退)した大きな要因として挙げられていたのが、「スマホの普及」でした。スマホの普及が、様々な業界を駆逐している。
渋谷から「レコード(CD)ショップ」が撤退 したのと同じように、

(2010年代:)あらゆるメディアをスマホが駆逐してきた10年間

これは、CDだけでなく、テレビも新聞も、そして「書店」も同じなのだ、ということなんだそうです。スマホが書店を駆逐するようになった理由に、技術の進歩があり、もちろん「電子書籍」の利便性の向上もあるのですが、

【 2問目 】
【 何 】方式はビジネスモデルの1つ。商品ごとに購入金額を支払うのではなく一定期間の利用権として定期的に料金を支払う方式。
契約期間中は定められた商品を自由に利用できるが、契約期間が終了すれば利用できなくなるのが一般的である。……
英語の「【 何 】」には雑誌の「予約購読」「年間購読」の意味がある。転じて「有限期間の使用許可」の意味となった。またクラブなどの「会費」の意味もある。

Ans. サブスクリプション

「雑誌」という回転率の高い商品が、サブスク電子書籍化したことで、書店での売上が激減してしまった事が、収益率低下に結びついているのだそう。

画像1

2019年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にも入った「サブスク」は、元々『雑誌の予約(年間)購読』という意味があるのを今回初めて知りました。

収益率の低下が商売をやる上で「死活問題」となる中、書店が「苦肉の策」として拡大し広まっているのが、『雑貨コーナー』や『カフェ併設』型で、収益率の高いサイドビジネスで何とか維持しているというパターンです。

画像2

雑誌、コミックといった主力武器をデジタルデバイスに奪われ、「リアルの書店で立ち読みして良かった本を電子書籍で注文する」時代になった昨今、参考書籍のタイトルにもある通り、新たな問題が生じてきているそうです。

【 3問目 】
【 何 】には、以下の3つの異なる意味がある。ただし、3.の意味は英語……にはなく日本独自のものであり、誤用とされることが多い。また、論者によって意味が大きく異なり、扱いの難しい用語である。……
 
3.倫理の欠如。倫理観や道徳的節度がなくなり、社会的な責任を果たさないこと(「バレなければよい」という考えが醸成されるなど)。

Ans. モラル・ハザード

画像3

保険業界等で「モラルハザード」と言えば、まだイメージしやすいですが、書店の「モラルハザード」って、どういうことでしょう? それが、

【 4問目 】
【 何 】本が売れる背景 [編集]
外交的対立などをもとに、嫌韓、反中とよばれる感情が高まりそれが売れる背景になっているという分析がある。見計らい配本の制度によって、書籍が書店に推薦されることがあるほか、書店の収益が厳しい中で「嫌韓本は売れるから販売する」という書店側の事情もある。

Ans. ヘイト本

「ヘイト本」に関する問題だそうです。あっちゃんが紹介した書籍での問題提起とほぼ同じ内容が「ウィキペディア」にも記載されていました。

やや不必要に対象を限定している部分が気になりましたが、(これはこれで差別的じゃないか、という視点も抱きつつ、)筆者によれば、「60~70代」が、中国や韓国・北朝鮮に対するヘイト本を「新聞広告」を手に買い求めに来るんだとか。

画像4

【 5問目 】
一面下部の書籍広告 [編集]
【 何 】新聞を除く一般紙では、一面下部3段を6~8個に分割して、書籍の広告に充てている。(【 何 】(新聞)は一面に広告を載せていない)

Ans. 産経新聞

こうした方々が特にたまらないのが、「ヘイト本」と、「日本礼讃本」なんだとか。さて、先ほど出てきた漢字、ちゃんと読めますよね?

画像5

【 6問目 】
【 辞書クイズ 】です。(明鏡)
【 何 】 【礼賛・礼讃】 ※読みを《 かな 》でお答え下さい。
〔名・他サ変〕
(1)すばらしいもの、ありがたいものとして、ほめたたえること。

Ans. らいさん

一瞬でも、「れいさん」と読むのと迷って頂ければ幸い。「ヘイト本」や「日本礼讃本」がジャンルとして書店に並んでいる様を見たことがある方もいらっしゃるのではないかとは思います。(良し悪しは別にして)

18.流通システムの問題点

というかなぜ多くの本屋がそうした「ヘイト本」を店頭に並べているのか。そこには、書籍の「流通システム」の弊害があると語っています。

【 7問目 】
主な出版【 何 】会社 [編集]
2社でシェアの70%以上を占めるといわれる
トーハンと日販が二大【 何 】と呼ばれる。

Ans. 取次(とりつぎ)

「 出版取次会社 」という業種が、「出版社」と「書店」の間に入るのが、日本の書店業界における『通常ルート』なんだそう。図示すると、

画像7

となるんだそうです。それぞれの役割を少しだけ補っておくと、

(1)出版社:著者の実績から「出版部数」を決定
  ↓
(2)取次 :書店の店舗実績から「配本」数を決定
  ↓
(3)書店 :注文していないけど、書籍が半自動的に納入

という流れになるんだそうです。本が半自動的に「納入」され、それとほぼ同時に代金を支払っているんだそうです。売れ残った本を返品することで、代金が返金される部分もありますが、書店で「品選び」するという「仕入」の感覚が希薄になっている点は、特筆しておきたい所でしょう。

出版、取次の説明をして、続いて「書店」の紹介では、あっちゃんの好演。

【 8問目 】
【 ランキング問題 】です。
東京商工リサーチ2015年度 > 書籍・雑誌小売業 売上高トップ10

1位 : 【 何 】書店 1086.32億円

Ans. 紀伊國屋書店

レベル10(?)の紀伊國屋書店新宿本店を、まるで魔王かのように演じてるあっちゃんの顔が冒頭の動画にあったサムネです。再掲しときますねww

中田敦彦「我々が思っている以上に、書店には意思がない。」

(約4割の返本率、好景気で体力がある時は良いんだけど)
 約4割の返本分の代金を書店に返すのが厳しい
 → また新刊を送りつけて「自転車操業」で何とかやりくりしている
 → とてつもない数の本が出版されるようになった(出版点数が倍増)

画像7

それだけ出版点数が増え、本を書店がさばかなければいけなくなった結果、書店に陳列することで社会的にモラルが問われる様な本についても「即返(即返品)」されなくな(検討する余裕がなくな)ってしまっている。

こうしたスピード感と利益率の中で、書店はコストカットが迫られている。削れる余地が少ない書店が削り続けているのが「人件費」であり、正社員の人件費を削りに削っている。

我々(一般人)が「書店員」として連想する『図書委員の最終形態』みたいな『本が大好き』な書店員さんは、実態としてはかなり減ってきているんだそうで、そうした現状が、次の項にも繋がっていきます。

19.書店員のジレンマ ~「本屋大賞」の幻想~

ここから「本屋大賞」に対する項に入ります。

本屋大賞(ほんやたいしょう)とは2004年に設立された、NPO法人・本屋大賞実行委員会が運営する文学賞である。
出版不況と言われる中、本の売り上げが伸びず書店も数を減らしている一方で、出版される本の点数だけが増えていく状況が背景にあった。実行委員会を立ち上げたメンバーの1人である杉江由次(本の雑誌社・営業担当)は、そんな出版界の苦境のなかでも本を売る大きな機会であるはずの直木賞で、2003年の1月発表分で「受賞作なし」だったことに憤り、出版社の営業として自分が普段接する書店員の声を拾い上げるために本賞の設立を思いついたのだという。

業界の方から、結構「間違い」というか「一側面からしか見ていない偏った捉え方だ」という声も目立ったので、細かい部分については割愛します。

動画・書籍を見ていただいたうえで、皆さんでお考え頂ければと思います。そして、反論の記事なども所々にあがっているので、そちらも合わせてご覧くださいますよう。

【 9問目 】
【 4択の問題 】です。
日本語版ウィキペディア「文芸雑誌」の“主な文芸雑誌”として例示をされて《 いない 》選択肢は次のうち【どれ】でしょう。
 
『文藝春秋』 『文學界』 『群像』 『すばる』

Ans. 『文藝春秋』

文學界、群像、すばる は記載されていますが、『文藝春秋』は「総合誌」と書かれています。「芥川賞」が掲載されますが文芸雑誌ではない扱いです。

画像8

芥川賞・直木賞受賞作は、受賞段階ではまだ書籍化されていないので、雑誌を買うしかなく、そこに書店員の不満があるといった説明がありましたが、

実行委員会を立ち上げたメンバーの1人である杉江由次は、そんな出版界の苦境のなかでも本を売る大きな機会であるはずの直木賞で、2003年の1月発表分で「受賞作なし」だったことに憤り、出版社の営業として自分が普段接する書店員の声を拾い上げるために本賞の設立を思いついたのだという。

と「日本語版ウィキペディア」にあるように、『受賞作なし』だったことが発端だったのではないかと思います。だって前半の動画にあった様に、仮に書籍化されていなくても、作品が掲載されている『雑誌』(回転率が高い)は飛ぶように売れるのですから。そして、受賞して少しすれば必ずと言って良いほど書籍化、あるいは文庫化し、ロングセラーになりうるのですから。

画像9

一方、『受賞作なし』だったら、『雑誌』も売れないし、書籍もさほど売れずに終わってしまいかねませんからね。そこに事実誤認はあったかもです。

また、その「本屋大賞」も、大々的なネーミングを取っています。まるで、1万店ある書店員さんが全国的に参画しているように感じる人もいらっしゃるかも知れませんが、実態はそこまで大きくはありませんで、

【 10問目 】
【 近似値クイズ 】です。
2021年「本屋大賞」の二次投票に投票した書店員の人数は「【 何 】人」だったでしょう。

Ans. 355人

(それでも投票数は多いように感じますが、)本をちゃんと読んで二次投票をした書店員の人数は数百人単位です。ここらへんも、「本屋大賞」というネーミングに抱く幻想をうまく利用していると言えるとのことです。

さらに書店で「本を買ってもらう」ことを大きな目的とした賞であるため、多くの本屋の店頭に既に並んでいる本の中から「ノミネート作」が選出されることも案外と見落としがちだったかも知れません。
結構メジャーな作家の最新作がノミネートされがちなのは、ある種、必然といった側面すらあるのです。

そして4つ目に書かれているのが、『売れない2位以下』という項目です。確かに、クイズ界隈でも「本屋大賞受賞作」については取り上げられることが多いですが、2位以下については1位と比して触れられることは稀です。

試しに、2021年を例にとって出題してみましょう。

【 11問目 】
青山 美智子は、日本の著作家。……
・『お探し物は【 何 】室まで』(ポプラ社)が
 2021年本屋大賞にノミネート。2位を獲得した。

Ans.『お探し物は図書室まで』

結構こちらも面白そうな作品なのですが、知名度・話題性では、1位である『52ヘルツのクジラたち』/町田そのこ に比べると、かなり劣ってしまっている側面は否めないかと思います。

実際、クイズ界隈だけでなく、書店でも『売れるのは1位だけ』で2位以下の売上は殆ど変わらないんだそうです。まあ、そうかも知れませんね………。恐らく、本屋大賞発表後に書店に買い求めに来る人の多くは、「話題になっている本だから」買いに来るのであって、話題性に欠ける2位以下の作品はその購入目的からするとインセンティブはかなり低いものでしょうから(汗

この節の最後には、あっちゃんも「本屋大賞」を批判したい訳でなく、裏側を知っておきたいだけだと語っていました。

20.未来への提言

そして、最後のブロック「未来への提言」として、著者の思いを語る前に、あっちゃんが「YouTube大学」を通じて書店への思いを語りました。

中田敦彦
「(このチャンネルは)YouTube大学であってYouTubeブックスではない。それなのになぜ本を紹介しているのか。それは、
 ・情報量が多いから
 ・密度が濃いから
 ・そして、だからこそ読む人が少ないから
  (読む人少ないけど、読んだら面白い)
 だからわたしが一生懸命本を読んで喋りますから!」

だからそういう「本の好きな人」のために、良心的な本屋になりませんか? というのが著者の思いだそうです。

「知の番人」としての大型書店の時代じゃなくなるかも知れない。このまま行くと、ただ本を売るだけの「むちゃくちゃな文化の城になりますよ」と。

(提言1)パターン配本と委託制からの脱却

そこで、「パターン配本と委託制からの脱却」を、1つ目にあげています。

書店には『書店員の目利きで仕入れをする』ことを提言しています。
・さらに取次には『本に関する情報を取次ぐ』ことを提言しています。
・そして出版には『編集者の名前をしっかり出す』ことを提言しています。

【 12問目 】
本の書誌事項として登録される公的なものではない。いわば匿名性のなかで仕事をすすめていくのが、【 何 】者の仕事の特質のひとつである。
しかし、【 何 】者のなかには、「スーパーエディター」を標榜した安原顕のように、書籍の奥付に自身の名前をクレジットする者もいる。

Ans. 編集者

売るためには匿名性が必要な場面もあるとは思うが、それに甘んじた結果、中身よりも見た目やキャッチコピーなどに力を注いだり、モラルハザードの温床となったりしている側面もあるのではないか。

書店・取次・出版それぞれが、現状の「“通常ルート”の流通システム」の問題点を自覚し、少しずつでも改善していかなければ、業界全体が沈んでいく懸念があることを強く示しています。

【 13問目 】
“取り扱いや実行などを人に頼んで代りにしてもらうこと”を表す「イタク」の「タク」の漢字の総画数は【 何 】画でしょう。

Ans. 10画 (委託)

※あっちゃんが漢字を間違っていたので、「託」の字の確認を兼ねて出題。

(提言2)人が選ぶ“セレクトショップ”へ

書店員が選んだ「セレクト・ショップ」型の書店には、ヘイト本はまずないと著者は語っています。なぜなら、そんな本を置いたら民度が問われるからだとあっちゃんは補足説明をしています。

【 13問目 】
【 何 】ショップや【 何 】ストア(どちらも和製英語)は、複数のメーカーやブランドの商品を扱う小売店のこと。複数メーカー品取扱店のこと。

Ans. セレクトショップ/セレクトストア

こうして、セレクトショップ型の書店が増えることで、「ヘイト本」が駆逐されていく未来を期待したい、という著者の思いが垣間見えます。

ただ、ここまでの提言2つは「理想論」だとお考えの貴方に、3つ目の提言は極めて強い警告となっています。

(提言3)書店員は作業員ではない

この本の最も強い主張はここに繋がると思います。その前に、一旦、最後のクイズを出したいと思います。

【 15問目 】
【 誰 】は、親衛隊隊員。最終階級は親衛隊中佐。ゲシュタポのユダヤ人移送局長官で、アウシュヴィッツ強制収容所へのユダヤ人大量移送に関わった。「ユダヤ人問題の最終的解決」(ホロコースト) に関与し、数百万人におよぶ強制収容所への移送に指揮的役割を担った。

Ans. アドルフ・オットー・アイヒマン(Adolf Otto Eichmann)
中田敦彦
「この無機質に動いていてモラルがハザードしていく流れ。物凄く恐ろしいたとえで言うと、あのナチス・ドイツにおいてユダヤ人虐殺が起こった。
 実は、ハンナ・アーレントによると、とてつもなく残虐な行為を行うのはとてつもなく残虐な独裁者ではない。実際に虐殺のスイッチを押した人たちというのは、何の考えも持たないルールに従う普通の市民だった。」

これが、オートメーション化した今の書店業界のような各業界に起こりうると警告しているのです。

中田敦彦
「恐怖感が煽られに煽られた結果、何かの引き金でこういう事態になる。今、日本って経済的に厳しいよね。……この状況(当時のドイツの国民に)めちゃめちゃ似てるんじゃない? って書いてある。」

とあっちゃんは本の紹介を締めくくっています。そして、動画の最後には、

中田敦彦
「意外と恐ろしい話かも知れないってことです。これも一つの意見。YouTube大学、疑って掛かって結構。ではまたっ!」

と動画を締めくくるコメントを残しています。以上、「書店業界の危機」の動画の紹介でした。ではまたっ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?