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ラクトのエンニュイレポ⑩「『Let It Be』だけ残して解散することはできるけど」


前置きとして述べておきたいのは、これを書いている俺の精神状態が3月半ばに一度ガタついたということ。また、エンニュイの3月公演のはじまりと、そのあとのLLRの伊藤さんが脚本を書き、エンニュイを主宰する長谷川さんが演出を行うたまRiver第一回公演『青いきおく』の終わりのまでの期間で自分を立て直し、今は芸名をアイスラクトとしてスタートするに至ったという経緯があるということだ。なのでこれはレポートというよりかは、あくまで私的な3月の回帰録のようになるかもしれない。このような前置きは自分が自由にこれを書きやすくするためにいくばくか効果があるので自分のために書いておく。いかに進めていく。

エンニュイの公演の話を最初にしていくと演者たちはより能動的に演出やセリフをアレンジしていくことに慣れていく半面、コミュニケーションの面ではその分他者との対話の繊細さゆえの歯がゆさや難しさを感じていると思う。見たところ誰もエゴイスティックに自分の意見を主張し、他者を押さえつけたり、ずっと押し黙っているだけの人はいなかったかと。(これはあくまでも自分が見ていた稽古での話)いずれにせよ極端な言い方をするとサド的な人もマゾ的な人もいい意味で上手くコミュニケーションを通して、ぶつかることが大事であり、そういったことも出来ていたと思う。

信頼関係もあるだろうけれど、一方で薄氷の上を歩くような作業を経て、二グループごとに行われた公演はグループごとの個性に色付けられ同じ台本であるのに公演の雰囲気はがらっと変わることとなった。16日の公演の最初のグループは奥行きはあまりないが、蛍光灯を効果的に使うことによって舞台空間を上手く強調しており、前回の公演よりもソリッドに仕上ていた。またラストに関しても前回のような長く複雑なセリフ回しはないが「終電」のパートをラストにもっていき、同種の余韻をもたらしていた。

次の21日公演では波多野さんが残念ながら体調不良のため当日は参加できなくなってしまったが、波多野さんの稽古中の音声を用いたり、波多野さんの話題を出すなど、単純な公演内容とはプラスして、優しい世界の空気を吸う感覚があった。この点についていえば、俳優が欠けたときに体制を崩すような脆さのない、いわば波多野さんのことを言及することもしないでも、公演を成立させることができるというエンニュイの柔軟性と強度をみた。(これはあくまでも可能性の話で合って、言及しないというのは特に前回公園に関しては今となってはありそうもない話だが。)加えて、21日公演は配信メインになったわけだが、会場外の風景を映像に取り入れたり、新しい演出や見せ方をその場で取り入れたりできたことも、状況によって掴みを変更しうる漫才ようであった。天候や空間も相まってだいぶ落ち着いた回になったが意図的にしろ偶然にしろ、空間などとの親和性がうまれ今回の公演を独自のモノにしていたと思う。

上記の二つの公演を裂いたさけるチーズのような精神でみていた俺は、公演が特に染み入ってくるようになったと感ぜられた。ずいぶん俺はコミュニケーションの難しさしかり優しさしかり、公演外のメタ的なことを記述しやがるなぁと思っている方もいるとはだろうが、演劇は集団で行うことと、空間という意図を一番固定することが難しい中で何かを伝えるということのあたりまえさを考えると、そのことについてかつて鈍かった俺は、他者との壁をノックされたり、乗り越えられるときの感動を素直に受け取れるようになったのである。

16日の公演が終わり、21日の公演が終わった。精神は立て直したけれど、最初のガタつきを呼び水に、体調を壊した俺は、深夜のクラブの仕事で、60%の体調で立ちながらDJ KRUSHを聴いていた。
そしてそのあと見に行った、たまRiverの公演『青いきおく』。脚本と演出は前述。出演はピクニックさん、てつみちさん、シューレースジョーさん。自分は何度か稽古中に立ち会わせていただける機会があり、見る、というより傍観していたが、服がお洒落だのそうでないのだとか、ライトがあたると禿げてるか否かだとか、台本にうんこがついているetc...40前後のおじさんたちの和気藹々としたふざけは筆舌し難く面白かった。この人たちの青春の1ページはまだ栞紐よりも手前で全体は広辞苑よりも厚いのではないかと思った。俺があこがれていた世界。青い記憶として過去を振りかえることがあっても、その振り返った今を振り返ってもそれも青い記憶でありつづけたい。そう思わせてくれる先輩たちであった。

そして公演もそのことを象徴しているかのように、芸人として、役として、瞬間的に生き、楽しむ男としての子供としての姿があった。『青いきおく』は学生3人の何気ない日常と友情がやりすぎず、平坦すぎずの塩梅で過ぎていく。話はつながっているのだが、どこか記憶をたどり反芻するかのように逆行していくような心象の流れも俺の中にはあった。ブレンドされた茶番と日常、ほほえましい友情の軌跡のエスプレッソがミルクの中に広がっていくような脚本、この感覚をよりダイレクトにに伝えるためにお笑いと演劇を解体し、再構築した長谷川さんの演出。そして演者の忠実な演技に裏打ちされたこの作品をみて、不思議と体調がよくなった。自分も早くこのようになりたいと、青春したいという思いが、潜在的な力で不健康という枷を取り去ってくれたんだと思う。

エンニュイの話に戻ろう。たまRiverがそれぞれ固有のクオリティーを合体させることを重視するとしたら、エンニュイはいかに他者のクオリティーを尊重するかだと思う。そしてそのことが今までもそうだがこれからのキーであるのは変わりない。どんなグループだって劇団だって、些細なことで衝突し、解体されたり、作品自体が損なわれたりする可能性を秘めている中で、エンニュイの雰囲気は皆の超人的な努力でもって非常に良く保たれていると勝手に思っている。『Let It Be』だけ残して解散することはできるけど、その先がないこと、過去が記憶にとどまることは悲しくある。ずっと続けていくために、1年かけて洗練させていくために、できることは何かを俺も考えていきたい。


アイスラクト
https://twitter.com/ice_lacto_


『青いきおく』配信アーカイブ販売中!(2000円/ツイキャスプレミア)

たまRiver『青いきおく』
2021年3月26日〜28日
脚本 LLR伊藤智博
演出 長谷川優貴(クレオパトラ/エンニュイ)

[出演]
ピクニック
てつみち
シューレスジョー

視聴・購入期限は以下の通りとなります。

【26日19時回】4月2日23:59まで
【27日14時/19時回】4月3日23:59まで
【28日13時/18時回】4月4日23:59まで

アフタートークゲストはこちらです!参考までに!

3月26日(金) 19:00・・・佐久間一行
3月27日(土) 19:00・・・ジェントル
3月28日(日) 18:00・・・又吉直樹

配信ご購入



明日です!!
4月1日15時〜 『無表情な日常、感情的な毎秒』4月公演初回稽古(エチュード公演)有料配信決定!

4月公演メンバーの初回稽古にてエチュード公演を開催!エチュードで生まれたシーンが公演本編にも組み込まれます。

ツイキャスプレミアにて500円!(1週間アーカイブ付)

ご購入


↓この記事を読むと更に公演が楽しくなります。是非読んでみてください。


Performance of the day
『無表情な日常、感情的な毎秒』4月公演

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2021年4月24日・25日 飯島商店
原作・演出 長谷川優貴


【クリエイションメンバー(50音順)】
荒波タテオ
小林駿
齋藤永遠
波多野伶奈
*生演奏:高良真剣


【タイムテーブル】
2021年
4月24日(土) 14:00/19:00
4月25日(日) 13:00/18:00
*受付開始・開場は開演の30分前
*各回ライブ配信あり


【チケット】
<券種・料金>
劇場観劇チケット【各回15名限定】(当日精算・日時指定全席自由) ¥2300
配信観劇チケット(事前精算・1週間アーカイブ付) ¥1500
(予約・当日共通価格)
[劇場観劇:当日券の販売について]
*残席がある場合、開場時間より劇場窓口にて当日券の販売を行います。
(開演3時間前まではカルテット・オンラインでの予約受付を行っております。ぜひご利用ください。)
*当日券をご購入いただく際、受付にてお客様の個人情報入力用フォームをご案内いたします。ご予約の場合と同じく、お客様のお名前・ご連絡先をご入力いただきます。
いただいた個人情報は、万が一入館者の感染が発覚した場合にのみ利用させていただきます。
ご理解・ご協力をお願いいたします。


<予約開始日時>
配信観劇チケット:ただいまより受付開始
劇場観劇チケット:3月31日(木)21:00


<チケット取り扱い>
劇場観劇チケット:カルテット・オンライン
https://www.quartet-online.net/ticket/yennui202104


※劇場観劇チケットは開演の3時間前まで予約受け付けを行なっております。
※感染症対策に伴う個人情報取得のため、1度のご予約につき1枚のみご予約可能となります。

配信観劇チケット:ツイキャス プレミア配信
<24日14時>
https://twitcasting.tv/hase0616/shopcart/64460

<24日19時>
https://twitcasting.tv/hase0616/shopcart/64465

<25日13時>
https://twitcasting.tv/hase0616/shopcart/64466

<25日18時>
https://twitcasting.tv/hase0616/shopcart/64467

※アーカイブは1週間視聴可能となります。(例:4月24日14時回→5月1日23:59まで視聴可能)
※配信観劇チケットはアーカイブ視聴可能終了時点まで販売しております。

【会場】
飯島商店
〒238-0007 神奈川県横須賀市若松町1-12
https://www.iijimashouten.com

【スタッフ】
制作:宮野風紗音(CHARA DE/かるがも団地/K-FARCE)
制作協力:アイスラクト(CHARA DE/Duration)/児玉健吾(かまどキッチン)
主催・制作:CHARA DE/エンニュイ

【その他】
・車椅子でのご観劇をご希望の場合は、あらかじめ下記お問い合わせ先にご連絡ください。

【お問い合わせ】
yennuinfo@gmail.com

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