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「マダム・ウェブ」:スパイダーセンスが何かを知っている人だけ狙ったニッチ・ムービー。

<あらすじ>
アメリカ・ニューヨーク。救命士として懸命に働いていたキャシー・ウェヴ(ダコタ・ジョンソン)は、ある日、生死を彷徨う事故に遭い、それをきっかけに“未来予知”の能力を手にする。突如覚醒した能力に戸惑うキャシーだったが、未来を予知するだけでなく、自分の意思で未来を変えられる事が分かってくる。そんなある日、キャシーは偶然出会った3人の少女が、黒いマスクとスーツに身を包んだ謎の男に殺害される未来を見たことから、図らずもその男から少女たちを守ることに……。ある重要な秘密を持つとされる少女たちは一体何者なのか。そして、キャシーと同じく未来が見える黒いマスクとスーツの男は、どこからやって来たのか。やがて全ては、キャシー出生の秘密とともに、壮大な“運命”の糸で結びついてゆく……。

KINENOTEより

評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「アベンジャーズ /エンド・ゲーム」(2019年)以降、低空飛行気味なマーベルシリーズの最新作。今後の物語次第なところはありますが、現時点では本作はアベンジャーズ主要キャラが全く登場しない、傍流の傍流的な作品。それじゃ面白くないかと言われると、(興行成績の悲惨さは置いておいて笑)僕はそんなそんなことはないと思います。僕はMCUシリーズのサイドストーリーというよりは、やっぱり「スパイダーマン」シリーズの傍流として観たほうがやっぱり面白いと思います。本家「スパイダーマン」でもあんまり取り上げてこなかったスパイダーマンの超能力、”スパイダーセンス”そのもので映画を組み立てているからです。

じゃあ、”スパイダーセンス”って何なの?と言われると、予告編でも垣間見えるように、事件や事故が起こる前触れみたいなものを感じられる能力のこと。未来予知とも言えるのですが、本家「スパイダーマン」でも、この”スパイダーセンス”は取り上げられているものの、何か悪いことが起こりそうという武者震い的な能力に留まっているのに対し、本作はどちらかというとヒーローものによくありがちな、未来が詳細に見通せて、それを回避するためにどのような行動ができるかというところに焦点が当たっています。それでも同じ未来予測の延長に語られるようなタイムリープ(未来を繰り返しやり直す)するようなことはできず、あくまで現時点で感じられる未来への線上で如何に相手の攻撃や意図を交わしたりすることができるかを描いています。だからキャシーはスパイダーマンばりに素晴らしいアクションはできないまでも(もちろん、スパイダーによる超人的な体力はあるものの)、そうした悪い方向へ傾くことを上手く予知し、回避し、自分の思う未来を作り出していく。それも最初からすべて完璧にできるわけではなく、力を上手く制御できないことで起こる序盤の不幸な出来事を乗り越えていくというところも、「スパイダーマン」的な要素が含まれていて、スパイダーマン好きにはたまらない作品になっていると思います。

とはいっても、冒頭に取り上げたように今までのMCUシリーズのスピンオフものと違って、本作ではここから新しくスタートしてくる面々しか登場しないので、絵面的にも地味なのは確か。マーベル作品っぽく、エンドクレジット前後でも次回作を匂わせる演出もさすがではありますが、日本でも、米国でも悲惨な興行成績だっただけに、このシリーズで続編が作られるかはちょっと微妙なところ。それでも繰り返しになりますが、固く面白い作品なので、堅実なミステリーアクションを楽しみたい人には素直におススメできる作品だと思います。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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