「マッドマックス:フュリオサ」:マッドマックスシリーズの最新作は前作の前日譚。盛り上がりシーンは前作以上だが、ちょっと盛り場が多すぎかも。
評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)
1979年に公開されたジョージ・ミラー監督、メル・ギブソン主演の終末映画「マッドマックス」がVFX満載でニューシリーズとして復活したのが前作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年)。今回はその続編にあたるのだが、時間軸は巻き戻り、前作でシャーリーズ・セロンが演じた戦士フュリオサの若き日の物語を描く作品になっています。もちろん、前作でも登場した改造バイクやバギー、白の兵隊ウォーボーイズたちも本作でも登場し、砂漠上でのバトルやカーアクションはもしかしたら前作以上になっていて、パワフルさだけで見ると、もしかしたら前作以上の迫力で迫ってくるといっても過言ではないかと思います。
思えば、このシリーズの初期三部作となるメル・ギブソン主演の「マッドマックス」(1979年)の三部作は、本作の源流となるカーアクションと資源を使いつくした崩壊した地球(1作目はその世界観すらないけど)における道徳感なしの世界の非道さ満載の悪の世界で、警官だった主人公マックスが家族や友人を殺され、復讐の鬼となる単純な勧善懲悪ものだったわけでストーリーは単純な中で、アクションを中心に楽しませるだけの作品になっていたように思います(もちろん、各悪キャラの立っていたけど)。ところが年月を経て、更に終末化した世界で繰り広げられる新マッドマックスな世界では、善人・悪人問わず、それぞれのグループの中で如何に生き残っていくかという単純に善VS悪の戦いだけでなく、それぞれのグループがどう戦略的に相手を扱い、資源を奪い取るか、逆に奪い取られないように防衛するかの戦い(ちょっとヤクザ映画っぽい)が物語の上層であり、下層では前作だったら囚われの身になった女たちの脱出劇であったり、本作だったらフュリオサが自身の復讐とともに、如何に不利な状況から逆転して生き残っていくかのサバイバル劇があり、そうした重厚な物語世界がカーアクションをより盛り上げる要素になっているかと思います。
ただ、本作に関しては、前半部分の少女だったフュリオサに襲い掛かる悲劇と、復讐のターゲットになっていくクリス・ヘムズワース演じるデメントスがちょっと中途半端なキャラに見えるんですよね。単純にいえば、頭の悪いナルシストな悪役キャラで、ヘムズワースもちゃんと理解して演じているとは思うのですが、やっぱり彼は(砂漠世界で演じられるということもあり)どうしてもマイティ・ソー感も出てしまって、物語からちょっと浮いたキャラに見えてしまうんですよね。あと、アクションシーンの連続は観ていて楽しいものの、各シーンごとでフュリオサに協力しながら散っていくチョイ正義キャラがちょっと安っぽく映ってしまう。フュリオサの半生という成長劇の中で描かれていくアクションシーンなだけに、前作のような数日を描いた骨太感が薄くなるのは仕方ないとは思うのですが、もうちょいこの辺りに工夫があると脳汁ダラダラな映画にもっとなったかなと思ってしまいます。
<鑑賞劇場>MOVIX京都 ドルビー・シネマにて