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「落下の解剖学」:事件が起きてから解明していく本格ミステリー。緊迫感は凄いが、観ている緊張感が終わりまで続かない。。

<あらすじ>
人里離れた雪山の中にある山荘で、男が転落死しているのが見つかる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけだった。当初は単なる転落事故かと思われたが、その死には不審な点があり、男の妻であるベストセラー作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に夫殺しの疑いがかけられる。やがて夫婦の秘密や嘘が暴かれていき、サンドラは無罪を主張するが……。

KINENOTEより

評価:★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

2023年のカンヌ国際映画祭パルムドール(最優秀作品賞)に輝いた本格的山荘ミステリー。とはいっても、映画の冒頭で被害者である男が死んでいるところから作品はスタートし、疑いをかけられた男の妻・サンドラと、視覚障害を抱える第一発見者の息子・ダニエル、そしてサンドラの古い友人で弁護士のヴァンサンが謎多き事件を振り返りながら、事件の謎に迫っていくという構成。1つの男の死という事件を中心に描きながら、冷え切ったサンドラ夫婦の関係や、息子ダニエルが抱える心の闇的な部分、そしてヴァンサンとサンドラの微妙な関係など、事件の謎が様々なピースから紐解かれながら、各人物の隠された裏の顔みたいなところが徐々に見えてくるのが本作の魅力なのかなと思います。

と、映画はなかなか面白いし、特に中盤から後半にかけては上記の3人だけではなく、サンドラの裁判シーンとかも絡んできて、第三者的な目線(感情)からも事件を見つめなおすことができるなど、サスペンスとしてはすごく本格的だし、面白いと思います。ただ、映画の尺が150分を超える結構長尺なのと、冒頭の事件以降、裁判シーンを含め、回想部分は除いてほぼ会話劇で進行していくので、この緊張感をずっと持ち続けれるかどうかが映画の評価が分かれる部分だなと思います。僕は眠たくなる昼過ぎに見たこともあって、やっぱり緊張感が正直持続しませんでした(笑)。サンドラと殺された夫との関係や、それぞれの家庭観・キャリア観の違いから、ヴァンサンとの関係が見えてくるのも面白いし、息子ダニエルはダニエルで彼自身が家族に見せない意外な一面みたいなところが、少年っぽい脆さみたいなところが浮き彫りになるところはさすがだとは思うんですけどね、、、いいといわれる作品と、それが個人的な面白さには直結しない典型みたいな作品に僕の中ではなってしまったように思います。

それに本作、一部ネタバレにもなりますが、実は話される言語というのが1つのキーになっています。だからこそ、オリジナルな字幕版で楽しむというのが映画通なところかもしれないですが、僕はこういう会話劇中心な映画は正直日本語吹替え版のほうが楽しめるのではないかと昔から思います。映像としてダイナミックに変わるところも少ないし、集中力がキレそうな中で字幕を追うというのは余計に眠気をも誘うような気がします。人が入りそうな拡大公開系な作品だけでなく、本作のような小規模なアート作品にも是非、日本語吹替えを今後は選択肢として増やしてほしいなとも思いました。

<鑑賞劇場>ユナイテッド・シネマ枚方にて


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