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「コットンテール」:亡き妻の遺言を実現するためにイギリスに旅立つ父子。ラストのぶつかり合いがよく分からないな。。

<あらすじ>
一人息子の慧(トシ)(錦戸亮)と疎遠になっていた兼三郎(リリー・フランキー)は、妻・明子(木村多江)を失い、明子の葬式で久し振りにトシと妻さつき(高梨臨)、孫のエミに会う。喪主の兼三郎は酒に酔い、だらしない態度だった。明子の遺言状には、子どものころに好きだった『ピーターラビット』の発祥地で、夫婦で行きたいと思っていたイギリスのウィンダミア湖に散骨してほしいとあった。明子の願いを叶えるため、兼三郎とトシ一家は東京からイギリスに向かうが、心を開き合えない二人は言い争いに。何も言わずに一人で湖に向かった兼三郎が道に迷い途方に暮れていると、ある農場のジョン(キアラン・ハインズ)と娘メアリー(イーファ・ハインズ)の世話になる。兼三郎は次第に心が安らいでいき、迎えに来たトシにずっと言えなかった秘密を打ち明けるのだった……。

KINENOTEより

評価:★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「万引き家族」のリリー・フランキーが主演で送る日英の合作映画。前半は日本中心で愛する妻が亡くなって、その葬儀と息子との関係で溝を描いている部分、後半は妻の遺言でイギリス・ウィンダミア湖に散骨するために息子家族とともに旅をしていくロードムービー部分と分かれている形になります。僕は予告編を観る限り、イギリスが中心のドタバタ劇な中で、地元のイギリス人たちとの交流が中心なのかなと思っていましたが、映画全体はどちらかというと、主人公・兼三郎と息子・トシとの亡くなった妻(母)との違う距離感と旅行の中のぶつかり合いみたいなところに力点があり、ロードムービーらしい各地元の人との交流みたいなところが希薄には感じる作品とはなっています。

多分、多くの人に共通する考え方(捉え方?)だと思いますが、子どもとして父親・母親に接するときに見えている姿と、父親と母親間でパートナーとしての関係で見えている姿を(特に大人になってくると)垣間見えることがあるかなと思います。本作の兼三郎とトシのぶつかり合いの原因は、まさにそんなところにあるかな。妻(母)・明子が亡くなる直前の状況に、兼三郎は毎日のケアを行いながらも元気な頃の彼女をどこか追い求める姿が、逆にトシのほうは今の状況を理解しながらも、夫婦である兼三郎・明子の関係に深く介在できないもどかしさがあり、それが明子の死によって、モヤモヤした父子の関係だけ残ってしまった。それが作品後半のイギリスに渡った後もなかなか解消できないところに、作品全体にどこか霞ががった印象とともに拭えなくなっているところに表現されてはいるものの、結構好き嫌いは分かれるかなと思います。

ピーター・ラビットの生まれ故郷をたどる旅としては、ピーター・ラビットの実写化映画「ピーター・ラビット」(2018年)であったり、原作者ポターの生涯を描いた「ミス・ポター」(2006年)にもあったイギリス湖水地方の美しい風景が本作ではあまり見えないのも少し残念なところ(それが、なかなかウィンダミア湖が見つからないという暗示なのかもしれないですが)。イギリス旅行という大きな見どころがあるのに、意外に内省的な作品になっている不思議な作品でした。

<鑑賞劇場>MOVIX京都にて


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