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【キネマ宅配便!!】2020年10月の推し映画#2『家族という名のHOME』

今月は(もう11月終わりですがw)もう一本。

「浅田家」を観ました。
(評価:★★★★★:★が星1つ、☆が星半分。★5つが最高)

<あらすじ>父(平田満)・母(風吹ジュン)・兄(妻夫木聡)という4人家族の次男として育った浅田政志(二宮和也)は幼いころから、写真好きの父から譲ってもらったカメラで写真を撮るのが大好きだった。どこか個性的でのんびりした家族や、幼馴染で初恋の相手・若菜(黒木華)を撮ってきた政志は、写真専門学校の卒業制作のテーマ「たった一枚で自分を表現すること」にも、迷わず家族を被写体に選ぶ。実際の浅田家の思い出のシーンを当人たちがコスプレして再現した写真は、学校長賞を受賞する。そこから政志の人生は大きく好転していくのだが、、

邦画のメジャー公開映画で★5つを付けたのは久しぶりですね。三重県に実在している写真家・浅田政志さんの写真集をもとにした作品。僕自身、今は京都に住んでいますが、前職では三重県のソフトウェアハウスに勤めていたこともあり、津を中心とした街並み(映画でも登場した近鉄や津新町駅なども)は日常風景だったので、そこで繰り広げられている物語というのも親近感が湧いた要因かと思います。

とはいいつつも、それだけで高評価ということではありません。この映画で取り上げられているのは、今は希薄になりつつある『家族』という形の良さというか、人生の基軸となるべき『家族』がもたらしてくれるものの良さを描いています。もともと人は親から生まれてくるのは自然ではありますが、小さい頃から当たり前にあった『家族』だからこそ、それが人生の中でどれだけ重要なものなのかを気づかずに生きている人が大半だと思います。

少子化の中、家族という形を取らなくても、仕事だったり、違う形のコミュニティで暮らす選択をしていく方も多くなってくる時代。その中で『家族』が果たす役割ってなんだろうとよく考えます。僕自身も今は一人で暮らしていますが、実家で両親・家族と一緒に暮らしていた頃は、家族というのが、家というものに縛られる少し窮屈なものにも感じ、早くそこから出ていきたいという思いが強かったと振り返ると思うのです(サザエさん的な家族の在り方に、少し閉口していたようにも思います)。

それでも実家で過ごしてきた時期より、一人暮らしでの生活が人生の中で長くなってきた今考えると、きっと家族というのは自分がボロボロで無残な姿になっても(笑)、いつでも変わらない顔で迎えてくれる場所であると思うのです。特に、映画やドラマ的に愛情豊かな掛け合いとかがなくても、自分が自分でいてもいいところ。それはたまにはぶつかることがあるかもしれないけれど、毎日人生というバッターボックス、ピッチャーマウンドに向かって、いくら三振しても、打たれまくっても、戻ってこれるベンチがあることが何事にもありがたい。ベンチがあるから、また再びマウンドに戻る勇気が湧いてくるのです。

本作でも、「浅田家」はほんとに奇抜な面々ばかり、自分が自分がというメンバーでも、『家族』というチームワークがあるからこそ全てが許せ、帰ってこれる場所となる。作品中いいなと思うのは、「浅田家」だけに焦点を当てず、そこから育っていく息子たちの家族を作っていく営みにも焦点が当たっているところ。ここから新たなホームができていくんだなと、『家族』をつなげていく形も見えてきます。

本作の監督は、「湯が沸くほどの熱い愛」で注目を浴びた中野量太。「湯が沸く〜」でも、独自の家族の形をやはり燃えたぎる(これは文字通りなんですが、、)愛の形で昇華させるなど、描き方は独特でしたが、その精神は本作でも分かりやすく活かしているなと感じます。この監督の今後も目が離せないですね!

<その他の2020年10月鑑賞映画の評価>

では、その他の鑑賞映画の評価をささっと

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「ミッドナイトスワン」(評価:★):草なぎくんがトランスジェンダー役に挑んだ意欲作。世間の評判はすごぶるいいけど、僕はちょっと狙いすぎ過ぎて白けてしまった。。

「フェアウェル」(評価:★★☆):アメリカに移住した中国人家族を襲う余命告知問題。扱うテーマも古いが、演出も少しあっさりし過ぎでは?

「望み」(評価:★★):雫井脩介による同名サスペンス小説を堤幸彦監督が映画化。サスペンスというよりは人の偏見の恐ろしさに身震いする。話は薄い。。

「異端の鳥」(評価:★★★★):ポーランドでナチスから逃れる少年を襲う様々な苦難。迫害モノではあるが、ここまでリアルで悲惨なものは見たことない。。中世と現代の狭間で垣間見える差別の実態。

「朝が来る」(評価:★★★★☆):直木賞作家・辻村深月の小説を河瀨直美が映画化したヒューマン・ミステリー。原作モノだったからかもしれないが、河瀬監督作でも分かりやすい作品。時間軸を見事に操って、作品のテーマを浮き上がらせるところは秀逸。

「おもかげ」(評価:★★★):幼い息子を行方知れずで失った女性が出会った、息子のおもかげを残す少年。欧州を感じるサッパリした演出感はよいけど、物語は結構ドロドロ系。。

「罪の声」(評価:★★★★):グリコ・森永事件をモチーフにした同名小説を映画化した作品。和製大作映画感をするところが好き嫌いが分かれるかもだが、土井監督らしい地道なドラマの積み上げは素晴らしい。小栗旬はもう中年俳優感が出てきたなー。

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