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「マエストロ その音楽と愛と」:日本では全く注目されなかったバーンスタインの半生を瑞々しく描く作品。独占配信も問題だな、、

<あらすじ>
ウクライナ系ユダヤ人移民の2世としてマサチューセッツ州ローレンスに生まれたレナード・バーンスタイン(ブラッドリー・クーパー)は、美容器具販売業を営む父の反対にあいながらも、プロの音楽家の道を志す。決して恵まれた音楽環境ではなかったものの、ニューヨーク・シティ交響楽団の音楽監督に就任するレナード。チリ系アメリカ人の女優フェリシア(キャリー・マリガン)とパーティーで出会ったのは、そんな希望に満ちた1946年だった。レナードとフェリシアは結婚、ジェイミー、ニーナ、アレクサンダーと3人の子どもを授かる。だが、フェリシアは結婚前からレナードが男性と関係を持っていることを知っていた……

KINENOTEより

評価:★★★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者として長く務め、ミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」などの作曲者としても知られるレナード・バーンスタインの半生を、「ハングオーバー」シリーズや「アメリカン・スナイパー」などの作品でキャリアを重ね、「アリー/スター誕生」(2018年)で監督業にも進出したブラッドリー・クーパーの主演・監督で描く作品。バーンスタインの妻で、三人の子どもを設けたが早くに亡くなってしまった、自由奔放な彼を支え続けた妻・フェリシアを「SHE SAID」(2022年)や「未来を花束にして」(2015年)などで印象的な演技を魅せたキャリー・マリガンが演じています。

僕は吹奏楽を学生時代からずっと続けさせていただいていることもあり、バーンスタインの曲の吹奏楽アレンジを何回も演奏しているので、何となくバーンスタインの人となりを知っているつもりでいましたが、学生の頃に彼のニューヨーク・フィルでの演奏CDや実際に曲として対峙している印象と、本作でクーパーが演じた彼の姿を見て結構よい意味で予想を裏切られました。いや、逆に言えば、ある程度音楽家としては予想の範囲内というところもあるかな笑。それはすごく性に対して開放的であったということ。本作を観た後にいろいろ調べてみたのですが、彼が指揮者としても、作曲家として名声を得てきた1950~60年代から、妻の死後、1990年に亡くなるまでフェリシアとの家庭を築いたものの、同性愛者であったこと(今風に言えば、既婚ゲイということになるのかな)は周知な事実で、ビジネスパートナーであったり、ファンであったりしても(悪く言うと)手を出しまくっていたいうことは意外でした。でも、一音楽家として考えると、結構プロの人には演奏や生み出される作品は一級であっても、それ以外の部分はだらしないことが多く、浪費家だったり、パートナー以外にも何人か愛人がいる人も、教えている学生にも手を出しまくっているような人もいる(もちろん、真面目な方もいますが笑)ことも見聞きした体験で知っていたりするので、ここは予想の範囲内であったかと思いました笑。

でも、バーンスタインが世の中で名声を得ているのは作品だけというわけではなく、彼は彼なりに曲以外の部分でも周りに対して、良くも悪くも愛情深い人だったんだなというのが作品を見ても、彼と関係をもった人との後日談を読んでも分かります。何歳になっても、おじいちゃん・おばあちゃんになっても、大人になりきれないだらしない人って結構いますが、逆にそういう人ほどキュートであったりするし、そんな人が一芸に秀でていると、すごくカッコよく見えるものです。だからこそ、そういう人は愛されるし、バースタインも生涯自分のできゆる範囲で、その愛を返そうとしていたことが作品を鑑賞し終わった読後感としてよいものとして残ります。惜しむなければ、これがネットフリックスの独占公開になっていて、日本では一部劇場でしか公開されていないところ。バーンスタインの若き頃の活き活きとしている冒頭は白黒トーンで、カメラが自由に縦横動いていたり、もちろんオーケストラのシーンだったりと、スクリーン映えするところがあったりするので、是非スマフォではなく大きな画面・音響で見て欲しいなと思います。

<鑑賞劇場>京都シネマにて


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