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「ドライブアウェイ・ドールズ」:イーサン・コーエン監督の新作はお得意のギャング劇。レズの世界を描くところは現代的だが、、

<あらすじ>
ガールフレンドと破局した自由奔放なジェイミー(マーガレット・クアリー)と、堅物で自分の殻を破れずにいる友人のマリアン(ジェラルディン・ヴィスワナサン)。そんなふたりは日々の生活に行き詰まりを感じ、気分転換に車の配送(=ドライブアウェイ)をしながらドライブ旅行へ出発する。だが、運転中のアクシデントがきっかけで車のトランクから謎のスーツケースを発見。一方、そのスーツケースを取り戻したいギャングたちは、ふたりを追って車を走らせるのだった。ジェイミーとマリアンは、危険が迫る状況を感知せず、このドライブ旅行をエンジョイしようと、目的地のフロリダ州タラハシーへと向かうのだが……。

KINENOTEより

評価:★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「ファーゴ」(1996年)、「ノーカントリー」(2007年)などの作品で、兄のジョエルとともにコーエン兄弟監督として活躍した弟のイーサン・コーエン監督による単独劇場監督作品。主に兄のジョエルが監督を務め、弟のイーサンは脚本を手掛けることが多く、アカデミー賞でも結構常連(監督だけじゃなくて、脚本家としても)だったが、ここ数年は結構行方不明状態だったかなと思います。兄のジョエル・コーエンもまだ70歳手前(2024年段階)なので、まだまだベテラン監督としては老け込む年ではないと思うので、それこそウディ・アレン監督のように毎年作品を生み出すような力強さを見せて欲しいなと思います。

という、イーサン・コーエン久しぶりの脚本・監督作品は、「ファーゴ」的な世界観にも通じるお得意なギャング映画。正確に言うと、明確な主人公というのはギャング以外に別にいるのだが、ある事件をきっかけにギャングなり、警察なりに追われながらのブラック・コメディにしていくのがコーエン兄弟のお得意の作風。本作でも、冒頭からバイオレンスなシーンから始まり、あるギャングがレンタカーに置き忘れてしまった謎のスーツケースを巡り、様々な人物がスーツケースを取り戻そうとするコメディ群像劇になっています。そこにコーエン監督作ではおなじみの情けないキャラクターであったり、堅物で言うことを聞かない人物や、頭のネジがぶっ飛んだ暴走人間だったりが出てきて、様々なドラマを生んでいく。そこには世間を皮肉るギャグやちょっと卑猥なエロスだったり、平気でブラックな笑いが込められていたりして、やっぱりコーエン作品はこうでなきゃというファンには眉唾な作品に仕上がっていると思います。

ただ、女性が主人公という新しい視点(おまけにレズビアンという異色キャラ)が設定されているものの、従来のコーエン監督の作風を逸脱しないのが面白いかと言われると微妙なところ。従来だったらスティーブン・ブシェミやジョン・タトゥーロであったり、コーエン作品では馴染みな重鎮たちが出てきたものの、今回はあまり著名な人物が出てこない(異彩を放つマッド・デイモンくらいか笑)ので、重厚感という意味でも少し希薄になっているのは気になりました。本作のターゲットとしては、昔のコーエン作品を懐かしむオールドファンくらいかな、、と思ったりしちゃいました。

<鑑賞劇場>京都シネマにて


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