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「ゴールド・ボーイ」:ひょんなことから殺人事件を目撃した少年たちの脅迫劇。昭和なサスペンス感が満ち満ちてるのが素晴らしい。

<あらすじ>
事業家の婿養子、東昇(岡田将生)は、富と地位を手に入れるため、義父母を崖から突き落とす。それは、完全犯罪のはずだった。ところが偶然、その姿を13歳の少年、安室朝陽(羽村仁成)たちのカメラが捉えていた。複雑な家庭環境からくる貧困や家族の問題を抱えた朝陽や上間夏月(星乃あんな)と上間浩(前出燿志)の兄妹は、“僕達の問題さ、みんなお金さえあれば解決しない?”と、東を脅迫して大金を手に入れようと画策するが……。

KINENOTEより

評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

中国のベストセラー作家ズー・ジンチェンの同名小説を、平成ガメラシリーズや「デス・ノート」(2006年)で知られる金子修介監督が映画化した作品。僕は金子監督&宮部みゆき原作の「クロスファイア」(2000年)が結構好きで、本作にも「クロスファイア」に似た負の空気感に満ち満ちていることが(作品は正直全体的に暗いのですが)結構興奮しました。それに殺人が起こるところも、昭和サスペンスにはお馴染みの断崖絶壁というところもあるし、舞台が沖縄というところもあり、明るい観光都市に陰る沖縄の苦しい日常生活みたいなところも反映されていて、逆にそこにハマっていくサスペンス劇(犯罪劇)が見事に決まっていくのが心地よさすら感じるところもあります。

お話としては基本は殺人事件を目撃してしまった少年たちが、容疑者とした東昇を脅迫していくという形で進みます。東があっさりと殺人を認めてしまうので、殺人事件自体にサスペンス的な色合いはなく、事件をもみ消したい東が少年たちをうまくコントロールしたい、逆に、少年たちは東の思惑にハマらないように、自分たちが東をコントロールしようとしていく駆け引きで全体的な緊張感を保った作品が進んでいくのはなかなか良いです。しかし、終盤ではその駆け引きをド返しするような、ある仕掛けが存在します。これには度肝は抜かれるのですが、キーとなる要素は物語のあちらこちらに存在しますが、映画好きなら90年代に公開された有名なアノ作品のままだなと思ったりするので、結構予想はできたりします。僕はどんでん返しよりも、そこに持っていく映画全体をピリッと締めている緊張感は絶妙だなと思ったりしています。

難しい主演の少年・安室朝陽役を演じた羽村仁成くんは凄いの一言。ジャニーズJr出身でテレビでの出演キャリアは結構長いらしいのですが、ジャニーズ色少なく、ちょっと拙い少年像を演じているのは好感が持てます。彼と対峙する東役を演じた岡田将生は上手いのはもちろん、ちょっとネタバレにも通じるのですが、安室とタッグを組む上間兄妹を演じた星乃あんな、前出燿志の2人が実は凄くいいのです。不良っぽい、この兄妹は実は誰よりも従順というのがラストのネタバレの儚さを実に盛り上げるのです。

<鑑賞劇場>Tジョイ京都


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