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インテンション・エコノミーとMyData(2/2)

前回に引き続き、インテンション・エコノミーとMyDataをお送りいたします。
前回はこちら(インテンション・エコノミーとMyData(1/2)|Keisuke Tanabe (note.com)

■個人中心の世界を実現するために

インテンション・エコノミーやMyDataのビジョンを実現するためには、生成AIのような先進技術が重要な役割を果たします。誰もが排除されることなく同じようにデータの恩恵を受けるべきですが、そのためには法規制、ルール・環境整備、消費者が使いやすいデザイン、パーソナライズされたサービス、ユーザ・インタフェース等々が必要であり、非常に複雑であり誰もが正しい選択を出来るとは限りません。そこで個人とそれら必要な要素との間に、信頼のおける仲介者の存在が必要になってきます。
生成AIは、そのインタフェースに自然言語を使うことにより、デジタルデバイドを解消したり、人がコンピュータ技術や複雑な問題に直接向き合わなくてよいようにしたり、人に優しい社会を実現するポテンシャルを持っています。
MyDataでは、Understanding MyData Operators(※1)というホワイトペーパーの中で、信頼のおける仲介者のことをMyDataオペレーターと呼び、その条件等をリファレンスモデルとして定めています。
例えば、価格ドットコムのようなサイトは、消費者視点で各企業が出している価格を第三者的にまとめているサービスで、消費者のことを考えたサービスの一つです。最近あまり聞かれなくなりましたが、日本の情報銀行も先駆的なオペレーターとして、Understanding MyData Operatorsに紹介されています。

本ペーパーにおいて私たちは、MyDataの原則を起点とし、パーソナルデータエコシステム、または関連するツール、サービス、技術を提供するというオペレーターの単一もしくは複数の手法を組み合わせて役割を担う活動や組織の先行事例を取り上げました。こうした先駆的なオペレーター(プロトオペレーター)は、「トラステッド・インターミディアリー」(trusted intermdiaries:信頼される仲介者)と考えられます。これらの仲介役を表す記述や取り組みは実に多岐にわたります。例を挙げると、インフォミディアリー(infomediaries, Hagelおよび Singer, 1999年)、ベンダー・リレーションシップ・マネジメント・ツール(vendor relationship management tools:Project VRM, 2008年)、ライフ・マネジメント・プラットフォーム(life management platforms:Kuppinger, 2012年)、パーソナル・データ・ストア(personal data stores:World Economic Forum, 2013年表)、PIMSすなわちパーソナル・インフォーメーション・マネジメント・サービス(personal information management services:Ctrl-Shift, 2014年)、パーソナル・インフォメーション・マネジメント・システム(personal information management systems:Abiteboul 他, 2015年)、インフォーメーション・フィデューシャリー(information fiduciaries:Balkin, 2016年)、MIDすなわちミディエイター・オブ・インディビジュアル・データ(mediators of individual data:LanierとWeyl, 2018年)、情報銀行(information banks:総務省, 2018年)、データ・トラスト(data trusts:ODI, 2018年)、パーソナル・データ・コーポレイティブ(personal data co-operatives:Hafen, 2019年)、プロバイダー・オブ・パーソナル・データ・スペース(providers of personal data spaces;欧州委員会, 2020年)があります。

Understanding MyData Operators日本語訳版より

例えば消費者が健康に関する情報を求めている場合、偽情報や誤情報、過度に効果があることを謳った宣伝に踊らされることなく、AI(PAI)が情報の取捨選択をし、その人の健康状態やライフスタイルに合わせた食事や運動の提案を、まるで自分のことを良く知る専属のトレーナーに相談するように行うことができるのは理想的だと考えています。みんな同じコモディティ化されたサービスは価格が安く、個人にカスタマイズされたサービスは価格が高いという今までのビジネスの常識が、AIによる自動化によって徐々に崩れてきつつあります。
人が直接企業からの情報を見るのではなく、執事が自分にとって最適な情報を予め選別したうえで提供してくれる。少しずつではあると思いますが、そういった価値観の社会に今後向かって行くと考えていますし、実現するための技術発展、サービス展開に少しでも貢献していきたいと考えています。

図1 信頼のおける仲介者の例

ここまで読んでいただきありがとうございます。インテンション・エコノミーとMyDataについてご理解いただけましたでしょうか。実は年に一回のMyData Japanカンファレンス2024が7月17日(水)に開催されます!
MyDataの考え方に共感いただいた方はぜひ、会場に足をお運びください!

MyData Japan Conference 2024 – MyData by Design

図2 MyData Japan Conference 2024 – MyData by Design

MyData Japan 2024 ~ MyData by Design ~ | MyDataJapan

日時:2024年07月17日(水) 10:00~18:45(9:40開場)
会場:一橋講堂(詳細) 〒101-8439 東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター内(GoogleMap)
定員 (予定):通常チケット(お弁当なし):500名 通常チケット(お弁当あり):100名

概要:
MyData Japanカンファレンスは、個人を起点としたデータ活用の在り方を探求するための国内最大級のイベントです。今年のテーマは「MyData by Design」。私たちは、個人がデータ主権を持ち、自身のデータを安全かつ自由にコントロールできる社会の実現を目指します。 今年のカンファレンスでは、MyDataの原則を実践するために必要な要素を「設計(Design)」するための議論を行います。技術的な設計だけでなく、法律、ビジネス、社会制度など、多面的な観点からアプローチします。個人起点のデータ活用によるイノベーションの可能性、データプライバシーとセキュリティの最前線、MyDataエコシステムの構築、データ主権の未来像など、様々なテーマについて議論を深めます。 BLTS(ビジネス、法律、技術、社会)の各分野から第一線で活躍する専門家を招き、基調講演やパネルディスカッション、ワークショップ等を通じて、参加者の皆様と一緒に「MyData by Design」の実現に向けた方策を探ります。また、国内外のMyData関連プロジェクトの事例紹介や、参加者同士のネットワーキングの機会も提供します。 個人を中心に据えたデータ活用の在り方に関心を持つ企業、行政機関、非営利団体、研究者、学生など、様々なバックグラウンドを持つ参加者の皆様のご来場をお待ちしております。ぜひ、MyDataの未来を一緒に「設計」しましょう。

プログラムタイトル抜粋:
 - デジタルアイデンティティはどこに向かうのか
 - デジタルアイデンティティウォレットの活用事例
 - 希望者による5分間ピッチ×5人
 - 〈倫理(エシックス)〉を乗りこなす:データ時代の倫理を実装する
 - 自動車・テレビから得られるIoT・世帯データの保護と活用
 - 安心安全なAI社会に向けた富士通の取り組み
 - 検証可能な資格情報と分散型IDで実現する、安全で信頼性の高いデジタル社会
 - ポストクッキー時代の技術と消費者プライバシーのあり方
 - 個人情報保護・プライバシーとAI ~求められる企業の取組~
 - プライバシーセンターにまつわる10の問い
 - プライバシーガバナンスや関連の取組
 - George's Bar ~個人情報保護法3年ごと見直しに向けて~

MyDataJapan

※表紙絵
Copilot Designer
A world centered around individuals, AI protecting consumers from harmful internet content in the clouds, MyData, featuring a young girl
Generated with AI ∙ July 12, 2024

※1 Understanding MyData Operators: Understanding MyData Operators
和訳版:Understanding MyData Operators 日本語版 | MyDataJapan


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Linkedin: tanabekeisuke
本noteについて|Keisuke Tanabe

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