インテンション・エコノミーとMyData(1/2)
■インテンション・エコノミーとアテンション・エコノミー
図1にアテンション・エコノミーとインテンション・エコノミーの違いをまとめました。
時代と共にアテンション・エコノミーからインテンション・エコノミーに移りつつあるもののなかなか変わらないのが現状だと思います。ではいつ変わるのか?理化学研究所の橋田氏は、そのカギがパーソナルAI(PAI)にあると言っており、生成AI等の発達により個人のあらゆる活動をPAIが仲介することで、アテンション・エコノミーが終焉を迎えると述べています(※2)。
人がたくさんある情報を識別しようとすると、どうしても関心や注意を惹くコンテンツに注目してしまいます。そして自分の人生を豊かにする、本来ほしい情報ではなく、単に注意を惹く、気になる対象をクリックしてしまい、結果アテンション・エコノミーを拡大させてしまいます。ですが、AIが最初にフィルタリングし余計な情報に踊らされないようになれば、そういったこともなくなります。もちろん現在においてもフィルターバブル(※3)等の問題があることは指摘されており、強力なガバナンスによって情報の透明性の確保や意図しない情報への先導などネガティブな側面を回避する必要があることも合わせて述べられています。最近ファクトチェックという言葉を耳にすることがあります。2024/7/2のファクトチェックセンターの記事(※4)では「ネットのクソ化」と言っており、ここでもアテンション・エコノミーの弊害やフィルターバブル等のネガティブな側面に触れられています。
■MyData
MyData Japanのホームページから、団体の概要やビジョンを示しました。
MyDataJapanのミッション:
MyDataJapanのビジョン:
MyData Globalのビジョンは以下です。
読んでいただくと分かると思いますが、MyDataとインテンション・エコノミーは非常に似た考えを持っています。
概念的なところをさらに付け足すと、MyDataにはMyData Declaration(MyDataへの宣言)というものがあり、その冒頭で以下のように述べています。
VRMが出てきますね。私もこの宣言に署名し活動に参加しています。
MyDataの理念とインテンション・エコノミーは、共に個人のデータ主権を重視する点で一致しています。MyDataのアプローチは、個人が自分自身のデータをコントロールし、活用して活き活きと生きていく環境を作ることを目指しています。インテンション・エコノミーもまた、消費者の意図を中心に据え、彼らのニーズに応じたサービスを提供することで、より個人の意思を優先させた経済を実現しようとしています。
MyDataの目指す世界、或いはインテンション・エコノミーが実現された世界では、消費者は自分のデータを使って自分の意図に合ったサービスを選択し、企業はデータを基に消費者のニーズに応じた価値を提供します。このような関係は、相互信頼と透明性に基づいた持続可能なビジネスモデルを生み出し、結果として消費者と企業の双方に利益をもたらします。
※1 「インテンション・エコノミー - 顧客が支配する経済 - 」ドク・サールズ
2006年ごろからVRM: Vender Relationship Management(企業関係管理)―――企業が顧客を管理するCRM: Customer Relationship Management(顧客関係管理)と対比して、顧客が企業を管理するという概念―――のツールとサービスの開発作業と並行して執筆された。和訳版は2013年3月に第1版発行。
※2 データの分散管理によるこころの自由と価値の共創
目標9 橋田 浩一PM プロジェクト紹介|ムーンショット型研究開発事業 (jst.go.jp)
上リンク、理化学研究所のプロジェクトでは直接的にアテンション・エコノミーの終焉とは書かれていないが、2024.3.29に行われた橋田先生の東京大学での最終講義では、個人が直接広告などに触れることなく、PAIがすべて個人の仲介をするようになることによって、アテンション・エコノミーの終焉がもたらされると述べている。
※3 フィルターバブル:フィルターバブルとは、インターネット上で個人の好みや行動履歴に基づいて情報が選別され、ユーザーが自分の興味に合った情報のみに囲まれる現象です。検索エンジンやSNSのアルゴリズムによって引き起こされ、多様な意見に触れる機会を減少させ、個人の視野を狭める可能性があります。これは情報技術が社会に与える影響を考える上で重要な概念です。(Perplexity AIより)
※4 日本ファクトチェックセンター
AIの嘘に対抗できるのはAIだけ 「ネットのクソ化」と戦う世界のファクトチェッカーの秘策は (factcheckcenter.jp)
※5 MyDataJapanホームページ
MyDataJapan | MyDataJapanへようこそ
お気軽にお声がけください。
X: @keisuketanabe
Linkedin: tanabekeisuke
本noteについて|Keisuke Tanabe
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?