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インテンション・エコノミーとMyData(1/2)

■インテンション・エコノミーとアテンション・エコノミー

インテンション・エコノミー(※1)は、消費者の意図やニーズを中心に据えた経済モデルです。企業は消費者の情報を尊重し、彼らの意図に沿ったサービスを提供します。透明性と誠実性が重視され、消費者が自らの情報をコントロールし、企業との関係を主体的に管理することが特徴です。
一方、アテンション・エコノミーは、消費者の注意を惹くことを価値とする経済モデルです。SNSの発達などにより、注目を集めることが経済的利益に直結し、企業は広告等を通じて消費者の注意を獲得しようとします。
両者の主な違いは、アテンション・エコノミーが企業主導で情報を一方的に発信する傾向があるのに対し、インテンション・エコノミーは消費者主導で双方向のコミュニケーションを重視する点にあります。インテンション・エコノミーは、より持続可能で顧客中心のビジネスモデルを目指していますが、現在はアテンション・エコノミーが主流であり、完全な移行には時間がかかるとされています。

※Perplexityの回答をChat GPTで編集後、筆者編集


図1 アテンション・エコノミーとインテンション・エコノミー
(筆者プロンプト → Claude 3.5 Sonnet → 筆者微修正・図に成形

図1にアテンション・エコノミーとインテンション・エコノミーの違いをまとめました。
時代と共にアテンション・エコノミーからインテンション・エコノミーに移りつつあるもののなかなか変わらないのが現状だと思います。ではいつ変わるのか?理化学研究所の橋田氏は、そのカギがパーソナルAI(PAI)にあると言っており、生成AI等の発達により個人のあらゆる活動をPAIが仲介することで、アテンション・エコノミーが終焉を迎えると述べています(※2)。
人がたくさんある情報を識別しようとすると、どうしても関心や注意を惹くコンテンツに注目してしまいます。そして自分の人生を豊かにする、本来ほしい情報ではなく、単に注意を惹く、気になる対象をクリックしてしまい、結果アテンション・エコノミーを拡大させてしまいます。ですが、AIが最初にフィルタリングし余計な情報に踊らされないようになれば、そういったこともなくなります。もちろん現在においてもフィルターバブル(※3)等の問題があることは指摘されており、強力なガバナンスによって情報の透明性の確保や意図しない情報への先導などネガティブな側面を回避する必要があることも合わせて述べられています。最近ファクトチェックという言葉を耳にすることがあります。2024/7/2のファクトチェックセンターの記事(※4)では「ネットのクソ化」と言っており、ここでもアテンション・エコノミーの弊害やフィルターバブル等のネガティブな側面に触れられています。

図2 パーソナルAI

■MyData

図3 MyDataJapanホームページ(※5)

私たちはパーソナルデータに対する個人中心のアプローチに向けた取り組みを推進しています。 個人が自身のデータについて十分に理解し、主体性と主導権を持って、自らのためにパーソナルデータを活用できる世界を目指しています。

※MyDataJapanホームページより
図4 MyData Japan Vision 2022 Ver1.0 概要
(MyDataJapanホームページ(※5))

MyData Japanのホームページから、団体の概要やビジョンを示しました。

MyDataJapanのミッション:

人間中心の視点と価値観を持つ多様な領域の専門家や組織から構成されるシビル・ソサイエティとして、ビジネス(B)、法律・行政(L)、技術(T)、個人・社会(S)の各領域に関わり、それらの領域をつなぎ、行動することで、行政・企業・市民を含む多様なステークホルダーによる公正で倫理的なパーソナルデータの活用を促し、社会課題の解決とイノベーションの実現を図る

※MyDataJapanホームページより

MyDataJapanのビジョン:

パーソナルデータに対する人間中心で倫理的なアプローチにより、公正で、持続可能で、多様なウェルビーイングを実現できるデジタル社会

※MyDataJapanホームページより

MyData Globalのビジョンは以下です。

中核となるアイデアは、個人が自分自身のデータの主導権を握るべきであるということです。
MyDataのアプローチは、相互信頼の上に築かれる革新的なパーソナルデータに基づくサービスを企業が開発するための新たな機会を切り開きながら、デジタルヒューマンライツを強化することを目指します。

※MyData Vision(MyData Global)(和訳)より

読んでいただくと分かると思いますが、MyDataとインテンション・エコノミーは非常に似た考えを持っています。
概念的なところをさらに付け足すと、MyDataにはMyData Declaration(MyDataへの宣言)というものがあり、その冒頭で以下のように述べています。

私たちは起業家、活動家、学者、上場企業、公的機関、そして開発者です。私たちは何年にもわたってMyData、Self Data、VRM(Vendor Relationship Management:ベンダー関係管理)、Internet of Me、PIMS(Personal Information Management Services:個人情報管理サービス)など様々な言葉を使うことにより、個人が自身のパーソナルデータによって強化され、彼らや彼らのコミュニティが知識の深化、情報に基づく意思決定、企業などの組織との意識的かつ効率的な対話を支援する、という共通のゴールを共有してきました。

※MyData Declaration和訳より冒頭部分抜粋

VRMが出てきますね。私もこの宣言に署名し活動に参加しています。

MyDataの理念とインテンション・エコノミーは、共に個人のデータ主権を重視する点で一致しています。MyDataのアプローチは、個人が自分自身のデータをコントロールし、活用して活き活きと生きていく環境を作ることを目指しています。インテンション・エコノミーもまた、消費者の意図を中心に据え、彼らのニーズに応じたサービスを提供することで、より個人の意思を優先させた経済を実現しようとしています。

MyDataの目指す世界、或いはインテンション・エコノミーが実現された世界では、消費者は自分のデータを使って自分の意図に合ったサービスを選択し、企業はデータを基に消費者のニーズに応じた価値を提供します。このような関係は、相互信頼と透明性に基づいた持続可能なビジネスモデルを生み出し、結果として消費者と企業の双方に利益をもたらします。


※1 「インテンション・エコノミー - 顧客が支配する経済 - 」ドク・サールズ
2006年ごろからVRM: Vender Relationship Management(企業関係管理)―――企業が顧客を管理するCRM: Customer Relationship Management(顧客関係管理)と対比して、顧客が企業を管理するという概念―――のツールとサービスの開発作業と並行して執筆された。和訳版は2013年3月に第1版発行。

※2 データの分散管理によるこころの自由と価値の共創
目標9 橋田 浩一PM プロジェクト紹介|ムーンショット型研究開発事業 (jst.go.jp)
上リンク、理化学研究所のプロジェクトでは直接的にアテンション・エコノミーの終焉とは書かれていないが、2024.3.29に行われた橋田先生の東京大学での最終講義では、個人が直接広告などに触れることなく、PAIがすべて個人の仲介をするようになることによって、アテンション・エコノミーの終焉がもたらされると述べている。

※3 フィルターバブル:フィルターバブルとは、インターネット上で個人の好みや行動履歴に基づいて情報が選別され、ユーザーが自分の興味に合った情報のみに囲まれる現象です。検索エンジンやSNSのアルゴリズムによって引き起こされ、多様な意見に触れる機会を減少させ、個人の視野を狭める可能性があります。これは情報技術が社会に与える影響を考える上で重要な概念です。(Perplexity AIより)

※4 日本ファクトチェックセンター
AIの嘘に対抗できるのはAIだけ 「ネットのクソ化」と戦う世界のファクトチェッカーの秘策は (factcheckcenter.jp)

※5 MyDataJapanホームページ
MyDataJapan | MyDataJapanへようこそ


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本noteについて|Keisuke Tanabe

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