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JT、ヤマハモーターエンジニアリングの実践!「個の力」を引き出すコミュニケーション改革|『LISTEN』発売記念セミナー(前編)

2021年12月14日、エール主催のセミナー「個の力を引き出す組織作りと1on1」が開催されました。

第一部では、「日本たばこ産業株式会社」と「ヤマハモーターエンジニアリング株式会社」の2社の管理職の方々をお迎えして、組織変革の推進における取り組み、失敗や悩み、それから1on1活用の実態についてお聞きします。モデレーターは、エール取締役 篠田真貴子さん。組織変革の原動力となる「個の力」を引き出す仕組みのヒントがつまった本セミナーを前編・後編に分けてレポートします。 【編集部 奥澤】

個の力を引き出す組織づくりと「1on1」~変革を推し進める企業現場に迫る
2021年12月14日(火) 13:00~14:00
第一部  実践企業に聴く、個の力を引き出す組織づくりと「1on1」
     日本たばこ産業株式会社 古川 将寛さん
     ヤマハモーターエンジニアリング株式会社 村松浩義さん
     モデレーター:エール株式会社 取締役 篠田真貴子さん

第二部 今、求められる組織の1on1とは
    エール株式会社 代表取締役 櫻井 将さん

登壇者プロフィール(ご登壇順)

村松 浩義さん
ヤマハモーターエンジニアリング株式会社 商品開発部エンジン設計Gr  グループリーダー
モーターサイクル、船外機、産業用無人ヘリコプターなどのエンジン開発プロジェクトを担当。現在はグループリーダーとして、組織開発・人材育成に注力。「やりがいNO.1職場」を目指す。

古川 将寛さん
JT(日本たばこ産業)株式会社 パブリックリレーション部(出向中) 課長代理
2011年入社。たばこ営業や商品開発などを経験した後、たばこ事業全体の人事チームにて組織開発やリーダー育成のプログラム開発を担当。本業のかたわら、JT社員の挑戦を応援する社内有志団体「O2」を立ち上げる。

なんとかしないと…。現場で感じていた組織への危機感

ヤマハモーターエンジニアリング株式会社 村松浩義さん

篠田さん:日本たばこ産業の古川さん、ヤマハモーターエンジニアリングの村松さんのお二人は、組織改革を進めるべく、現場にかなり近いところでさまざまな取り組みを実施されてきたとお聞きしています。

その一つとして、エールの「社外人材による1on1」サービスもご利用いただいたのですが、今回はエールのサービスに限定せず、組織全体が抱えていた課題感からお話いただきたいと思います。まずは、村松さんから教えてください。

村松さん:私が所属する商品開発部エンジン設計は、45人ぐらいのグループになります。現在は、このグループのリーダーとして、組織開発にあたっています。

少しずつ現場が上手くいかなくなってきたと感じたのは、10年ほど前でしょうか。働き方改革が打ち出され、時短、労働生産性の向上…といった動きが強くなってきた頃です。現場がギスギスしてきて、メンタル不調を訴える社員が増えてきたんですよ。

今思うと、それぞれが抱える事情に耳を傾けることなく、「働き方改革」の枠にはめて変えていこうとした結果、起きたことだったと感じています。そこから、このままじゃいけないと強い課題感を覚え、「一人ひとりの意志を尊重し、個々がやりがいを感じられる組織づくり」を目指し、あらゆる取り組みを行なっていきました。

古川さん:村松さんのお話をお聞きして、最終的に「個」に行きつく点は、本当にその通りだと思います。

日本たばこ産業では、これまでも組織改革を目指し、研修はじめ多くの取り組みを行なっていました。けれども現場に十分に届いておらず、社員皆が元気という訳ではないんですよね。自らの仕事の魅力ややりがいを説明できずにいましたし、自分が何をやりたいかも語れない…。大げさではなく目の輝きを失った状態でした。

どうにかしなければ…と危機感を覚え、2016年には社員のさまざまな挑戦を応援する有志団体を立ち上げました。その後、人事チームに異動してからは組織開発・リーダー育成のプログラム開発に注力。「個々の意志」を後押しする取り組みを、さまざまな角度からトライ&エラーを繰り返してきました。

大事にしたのは、「個々の尊重」「それぞれの炎を燃やす」

JT(日本たばこ産業株式会社)古川将寛さん

篠田さん:個人的には、双方の企業とも「人を大事にする経営」をされている印象を持っていましたが、現場ではこれはまずい…と感じられる場面が多かったわけなんですね。では、それら課題に対する取り組みについて教えてください。

村松さん:ある企業の研修サービスを活用し「個々を尊重する取り組み」を実施していきました。その中で、出会ったのがアンコンシャス・バイアスという言葉です。無意識で偏った物の見方、無意識の偏見、思い込み、という意味でも使われていますよね。

改めて自分のグループを見てみると、それぞれがそれぞれの事情を抱えていることが分かりました。夫婦関係、子どもの問題、両親のことなど、公には言えない個人の事情があったんです。そういった事情を知るための対話をせず、相手の価値観や能力を決めつけたり、解釈や理想を押し付けたりしてはいけない。お互いが聴きあい、自己開示することで、初めて助け合ったり、フォローできる。その積み重ねこそが、「個々がイキイキと働ける組織」につながっていくと学び、そこにフォーカスした研修を展開していきました。

古川さん:アンコンシャス・バイアスの浸透は、本当に難しいですよね。組織の慣性も働きますし、日本人特有の同調圧力も働きますし…。対話なしには、認知されないし、広がらない。なので、私はアンコンシャス・バイアスに流されないよう、「複数人で群れる」をメッセージとして発信していきました。

先ほどお伝えした有志団体がその前身ではありますが、個人のwillを明らかにし、コミュニティで仲間と対話することで、willの炎がさらに大きなものになるよう組織としてサポートしていったんです。コミュニティ化して行動が連鎖する。そのような行動様式をもった社員の絶対値が増加していくことによって、チャレンジャーが生まれ続ける風土が定着すると考えていました。

篠田さん:お二人ともに共通しているのは「対話が大事。だから、対話をしなさい」と言ったわけではない点です。村松さんは、多様性を認め合う組織づくりに必要な考え方、知識をインストールするところから。一方、古川さんは、個人の自律性や内発的動機を明確にし、有志を集めて組織改革を実践していかれました。

「良質な聴かれた体験」が、明日への活力につながる

篠田さん:多くの取り組みをされる中で、エールの社外人材による1on1サービスを導入された理由についてもお聞かせください。

村松さん:社員同士の対話をテーマにしたとき、1on1を取り入れたいと考えたのですが、同時に1on1スキルを磨かないといけないと感じました。なぜなら、私を含めて管理職世代を見た時に、残念ながら良い1on1を受けた経験がなかったからなんです。キャリアとして経験を積む、それはイコール、上司の背中を見て学ぶだったんですよね。

もちろん新たな知識として「聴く」大切さを学び、ロープレも行なうのですが、聴かれた体験そのものを持っていないのは致命的とも言える。であれば、上司自身が「良質な聴かれる体験」をすべきだと考え、エールのサービスを利用させてもらうことになりました。

古川さん:JTの場合は「継続性」を課題に感じ、エールにお声がけさせてもらいました。

組織開発に取り組んでいる中で、重要だと感じていたのは「個人のwillを点ではなく、線で描く」こと。たとえば、すごく良い研修を受けて「学びがあった」となっても、日々の業務に戻ったときにはすっかり忘れてしまうというのは、よくある話なんです。

個々の情熱や意志を「点」ではなく「線」で描けるようにするには、誰かに話を聞いてもらったり、相談をしたりすることがとても有効です。新たなチャレンジですから、上手くいかず、諦めてしまうケースも少なくない。そんなとき、自分の想いを他者に聴いてもらえれば、明日への前向きな活力になるわけです。

もちろん人事がその役割を担うこともできますが、ずっとフォローし続けるわけにはいきませんから、そこはエールのサービスを利用して、社員の「内発的な自律」を生み出していきました。

少しずつ、でも確実に。現場が変わり始めた。

篠田さん:では、最後に現場での変化についてお聞かせください。

村松さん:大きな変化は、「日報への反応」です。社員は毎日5分~10分ほどかけて業務日報を作成するのですが、それに対する上司・同僚からのレスが明らかに増えました。特に、エールの1on1を受けた社員からの返信が増えていたんですよね。意識して増やしているのか、自然に増えているのか…そこまでは把握できていませんが、メンバーに対するコミュニケーションが変わっていると確信しました。

もちろん、エールの1on1で「メンバーの声に耳を傾けましょう」というアドバイスがされたわけではありません。あくまでも、自分の話を聴いてもらう体験をしただけなのにです。話すテーマについても、仕事に限定せず、家庭や人間関係など本人に任せていましたが、こうしてハッキリとした変化が見えたのは、とても興味深いことでしたね。

古川さん:私が感じた変化は、現場のメンバーが「挑戦したいこと」を見つけ、情熱を持って動き出した事例が増えたことです。

たとえば、あるコミュニティでは、スタートアップ企業と連携して行政と包括協定を締結するようなプロジェクトが出てきたり、会社の部門を超えたつながりが生まれて、リソースを勝ち取ってガンガン動いている案件があったり…。ここまで変わってくるのかと驚くような変化が増えていますね。

また、数年に渡ってエールの1on1を導入する中で、「エールで教わった1on1が社内で数珠繋がりに展開されてきている」と感じています。聴かれる体験をしたメンバーが、自分のメンバーとしっかり対話する。次に、そのメンバーがリーダーになったときにも、メンバーの話を深く聴くことができる。「聴きあう」が連鎖することで、スピード感を持って個の力が引き出されている感覚がありますね。

篠田さん:ここまでお二人の話をお聴きして、社内でのコミュニケーションの変化は、当事者だけの話ではないのだと感じました。周りから聞こえてくること、間接的に感じることも含めて「社内でのコミュニケーション」であり、その変化は他の人にも伝播していくものなのだと思います。

その結果、社員の意識が改革され、自律した社員を生み出す「組織風土」へと変わっていく。ここに至るまでには、エールの社外人材による1on1サービスだけでなく、本当にさまざまな取り組みを実践されていたからこそだとは思いますが、変革を実現する組織カルチャーづくりに少しでも貢献できたことを嬉しく感じています。

セミナーに参加して

私が一番印象に残ったのは、「エールから教わった1on1が、他のメンバーでも展開されていく」(古川さん)「エールの1on1を受けた社員からの日報への返信が増えていた」(村松さん)という、具体的な変化です。良質な聴かれた体験は、自身が自律的に仕事に向き合えるようになるだけでなく、マネジメント力向上にもつながっていると思ったからです。「聴きあう組織」が広がることで、社員が持つそれぞれの力が最大限引き出されている事例を聴くことができ、勇気をもらいました。

後半では「今、求められる組織の1on1とは」についてエール株式会社 代表取締役 櫻井 将さんにお話いただきます。1on1の質の向上や定着に関するヒントをご紹介していますので、どうぞお楽しみに。


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