隠れ陰キャの悲哀~あゝハイブリッド陰キャ~
陰キャ。
それは「陰気なキャラクター」の略であり、いわゆるクラスの底辺カーストにいるような、暗く、みじめで、寂しい人々のことである。往々にしてコミュニケーションに多大な問題を抱えており、極度のあがり症だったり、人見知りで、他人とコミュニケーションを取ろうとすると、相手を戸惑わせたり、暗い気持ちにさせてしまう悲しい結果をもたらす。
陰キャは社会人になってからも続く。特にITエンジニア界隈では、「人とコミュニケーションを取らなくていい」からエンジニアを志望したという人までいるが、結局チーム作業なのでコミュニケーション能力は必須であり、夢と現実に愕然とする人たちも多い。
結果として曲者・キワモノが多いのがエンジニア界隈かもしれない。ぼーっとしているように見え、何を考えているか定かでない人は割とステレオタイプだ。
などと言ってみるが、私自身も陰キャを自認している。決して不特定多数とのコミュニケーションが好きではなく、明るくハキハキ喋るのも好きではなく、空気を読むのだって、特に好きではない。
叶うなら、デュフフと笑いながら、自分の推しについて聞き取れないほどの高速でまくし立て、相手の反応に関わらずにじり寄って威圧したい。空気を読まず「尊いでござるぅ!」などと奇声を発し、モーセのごとく人垣を割ってスキップしながら通りを闊歩したい。
(それは陰キャではなくただの極まったオタクではないのか?)
とにかく、生来内向的で、興味や関心が内に内に向かっており、他人に対するアンテナも低い私だった。
だが、なんか、がんばれば陽キャのように(外交的に)振舞えてしまうのである。
がんばれば初対面の人とも明るく話せるし、がんばればたくさんの人の前でも物おじせず喋れるし、がんばれば、空気や人の顔色を読んで発言を調整できる。
ただ、それは虫メガネで一匹のアリを一生懸命追っている状態から、無理やり意識を引きはがし、身を引いて、周囲を見渡す感覚に似ている。心地よい集中は終わり、気にしたくもない周りの砂場やらママ友のお喋りやらを意識の中にとらえる。すごく煩わしくて、イライラする。
「なんで貴重なアリの観察から離れて、どうでもいい周りなんか見なきゃいけないんだ?」という理不尽さに地団太を踏みたくなるのだ。
でも、そうやって周囲に対応すると周りに人は大体笑顔だし、何事も円滑にまわる。アリ集中状態で他人と接すると、せいぜい「不思議ちゃん」呼ばわりである(実際に学生時代は不思議ちゃんと呼ばれていた)。社会で暮らす中でなんとなくアリ以外を見る技術を身に着けて、適応したに過ぎない。
すごいストレス。
だから私は人から見ると「陰キャ」ではない。むしろ社交が得意なタイプだと見られる。でもたまに大声で叫びたくなるのである。
私は陰キャだ! 無理して頑張ってるんだ!! 私に期待しないでくれ!!!
そう、私はステルス陰キャ……隠れ陰キャなのだ。調べたら、そういう陰キャのことを陽キャと陰キャのハイブリッド、「ハイブリッド陰キャ」と言うらしい。
ただ、どれだけ経験を積んでもハイブリッドになれない陰キャの方々がたくさんいるのを知っている。無理すれば適応できるのは、ともすれば利点なのかもしれない。
けれども、けれども。
私はナチュラル陰キャの人たちが羨ましいのだ。だって社交が出来ないなら、できないで諦めがつくではないか。自分も他人も何も期待しない。
そこを行くとハイブリッド陰キャは、例え陽キャに振舞うのが精神的・肉体的にしんどくても、常に陽キャを期待され、演じなければならない。それが日によって本当に辛い。
仕事ができる自分、優秀な自分、いつも明るく、面倒見が良く、優しい自分。
全て、全て偽りだ! 努力の結晶だ!!
だから、ナチュラル陰キャに「YeKuさんはいいよね、明るくて気さくで人ともうまく付き合って……」なんて言われたくない。
犠牲を払ってるんだ!! 血の涙を流しているんだ!!!
ナチュラル陽キャが10の努力でそれをやってるところ、私は80~90くらい無理して取り繕っている。でも人は気づかない。だって陽キャであればあるほど他人のことなんか深く気にしない。相手が真の陽キャかどうかなんてどうでもいい。そこで「あの人は本当は陰キャなんじゃないか」と察する人はちょっとヘンタイじみているか私に惚れている。
だから悲しいハイブリッド陰キャは、陽キャには雑に扱われ、陰キャにはひがまれるのだ。これが悲劇でなくて、何が悲劇だろう。
私らしく内向的でいられる場所が欲しい。たった一人で何かに没入したい。そう思ったら、noteは確かにその場なのだ。私は自分の興味が向くまま、気まぐれなコンテンツをまき散らしている。
(いつも読んでくださる方、本当に本当にありがとうございます🙏)
有料コンテンツの「それでもきっとだいじょうぶ」マガジンは、メンタルケアやライフハックを主題にしているのでその点は一貫しているが、日によって「セルフ・コンパッション」「自尊心・自己肯定感」「ポジティブ心理学」「認知行動療法」「仏教訓」「脳科学から見るメンタルケア」など多岐に渡っている。
「いったい、内容をどう決めているんですか?」と聞かれると、自分の興味のあることしか書けないので、みなさんの役に立ちそうなことの中から、たいていは今悩んでいることだったり、時勢的にふさわしいと思われることだったり、メンバーさんのお悩みを記事で確認して、その関連記事を(サイレントに)書いたりしていることもある。
読者の方で、「これ、今の私にぴったり!」と思うことがあれば、本当にその方のために書いているかもしれない。
ちょっと話が逸れたが、とにかくハイブリッド陰キャとは陰キャにして陰キャにあらず、陽キャにして陽キャにあらず。いわばハーフ的などっちつかずになりがちの存在であり、悲哀の深生き物なのだ。
(陽キャは基本的に自分が陽キャであることを悩まないので、陰キャやハイブリッド陰キャはそれだけで悲哀の多い人生を送っている気がする)
ああ、陰キャがマジョリティになれば、私たちも無理して陽キャのフリをしなくて済むに違いない。陰キャが覇権を握る日が来ることを夢見て、本記事を締めくくろうと思う。
陰キャ万歳!!!!
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