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オンライン授業をがんばりすぎないように

はじめに結論を3点にまとめます。

・オンライン授業はあくまで代替手段であって,対面授業と同じ質を保とうとすべきではない
・動画の使用は受講人数や内容と相談の上,慎重に決めるべき
・動画を使わなくてもオンライン授業を成立させる方法はある。

新型コロナによる授業開始時期の延期によってオンライン授業(遠隔授業)を用意する必要が出た先生も多いようで,Twitterなどを見てもその話題が結構出ています。オンライン授業の知見が日本語ではそもそも足りていない状況で「LMS*?なにそれ?」みたいな先生がよく分からず「とりあえず動画を取るの?」とかなると先生も学生も不幸なことになるので,サバイバル的にどうこの状況を乗り切れるか,いくつかのサイトなどを見た上でのアイデアを書いておきます。

* LMS = Learning Management System。授業支援のためのオンラインのシステムで,Moodle,Sakai,Blackboardあたりがたぶん有名。教材を置く,授業のサマリーを書く,レポートを出せる,動画を見せる,議論させるなどいろんなことができる。

前提=オンライン授業はあくまで代替手段

これは以下の記事によるところが大きいです。

今回の状況にあたって,ぜひ心に常に持って置いてほしいのは以下の3点。

・学生(特に新入生)はPCに限らず,オンラインで何かをするのがそれほど得意じゃない。タイピングだって早いわけじゃない。
・みんなが自宅に安定したwifi環境を持っているわけじゃない。
・いきなり「1人でネットを使って勉強しろ」と言われてできる人は,ごく少数に限られる。

職業病なのか分かりませんが,新しい授業方法をやろうとすると,どうしても高い水準のものを用意して,学生にも高い水準のものを要求してしまいがちです。というか水準の高さを見誤ります。特に今回は緊急避難的状況なんですから,ほどほどのものを用意する,ぐらいの割り切りが必要なんじゃないかと思います。

動画の使いどころの判断基準

授業での動画の使用は大きく2つの方法があります。1つはリアルタイム配信で,これはzoomやyoutube liveなどを使って決まった時間にリアルタイムで動画を配信する方法です。もちろん録画してLMSに置くこともできます。ただこれは学生がその時間帯にうまく繋がる保証がないので,特にリアルタイムに学生とやりとりするなら20人以下じゃないと現実的とは言えなさそうです(チャットやslidoのような掲示板的システムを併用するのも考えられるけど)。

もう1つはオンデマンド視聴で,これはあらかじめ撮影した動画をLMSなどに置いて,決まった期間に学生に視聴してもらう方法です。これなら学生も好きな時間に見られるので繋がるかの心配は不要ですし,人数が多くても対応できるでしょう。しかし,次の点によく気をつけてください。

・リアルタイム配信でも撮影でも,教室と同じように声を出し続け,カメラを見続けるのは正直しんどい。
・学生も動画に集中し続けるのはしんどい(1本10分が限界)。

そもそも授業1回で90分近くの動画を用意するのは現実的でもないですし,学生からの質問をうけたりインタラクションを取る時間を考えてないので,文科省的にもダメです。次に解説しますが,動画を用意する場合でもいくつかの展開方法に工夫は必要です。

動画に頼らない方法も考えておくべき

わりと皆さん動画を使うことが前提のように見受けられるんですが,今回のような代替手段的な場合なら特に,動画を使わないでも授業は進められるでしょう。その1つは上のように解説をペーパーにしておくという方法です。また,この他に例えば次のような方法はどうでしょう?

音声だけ使う
LMSにはpodcastのように音声を置く機能がついていることも多いです。動画に比べて通信量もかかりません(学生的には「ギガを使わない」)。学生に発表させる場合でも動画に比べて用意が比較的楽なんじゃないでしょうか。

クイズ(小テスト)を中心にする
教科書や自作教材(テキスト)を読むことを中心に据えることも考えられます。例えば次のような展開はどうでしょう?特に概論など「知識伝授」の側面が強い場合は[1]と[2]を授業1回につき3つ入れるなどしてみてもいいかもしれません。

[1] トピックの解説
テキスト(教科書のページ指定や自作プリントなど)を読む
[2] LMSのクイズ機能でトピックに関する小テストを実施
・選択問題を20問ぐらい用意し,そのうち3−5問をランダムに出せるのがベスト(答えを教え合うタイプのカンニング防止)
・一発勝負にするとやはりカンニングを助長するので,2回ぐらい受けられるようにする
[3] その回のトピックについての議論
・LMSに掲示板を用意してトピックに関する議論をさせる
・人数が20人を超えると掲示板の管理が大変なので,グループに分けるなどの工夫が必要

ちなみに私自身,担当科目(初年次対象の日本語表現)では漢字や語彙に関する問題を200−300問(設問ごとに解説も付いてる)用意してあり,各学期にそれらを解いたうえで,最後にランダムに出題するテストで満点となってはじめて(その回に)合格するというようなことをやっています。

メールを活用する
この他に次のような方法も海外ではあるみたいです。

おそらく授業のオンライン化というのは多くのところは1か月程度だと思います(前期まるまるそうなるところもありますが)。今回得られた知見をブログでも紀要でもいいので形にしておいてもらえると今後のためになるんじゃないかなあと思います。

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にふぇーでーびる!(ウチナーグチ)
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日本語の方言を対象にした音声の研究をすることが多いです/近著『長崎方言からみた語音調の構造』