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サッカー日本代表の得点力不足って実際どうなのか調べてみた。

こんにちは、ライターをしているうすいと申します。

今回はサッカーに関する記事をnoteで書いてみようと思います。そして、主題にして書いていくのは、日本代表の得点力についてです。

僕はこれまで、日本代表の試合を欠かさず見てきたサッカーファンですが、敗戦したり引き分けに終わると、しきりに得点力不足という言葉を使って報道されていく印象を持っています。

もちろん試合結果だけを見れば、相手より得点が少ないから負けているわけなので、その試合における得点力不足は否めないのかもしれません。

ただ、ひとくくりに得点力不足という言葉でまとめてしまうのは、スポーツの成長を後押しする部分から見て、ちょっと乱暴なのかなと思っています。

なので、しっかりとしたデータから、日本代表の得点力不足って実際どうなのか?具体的に何を解決していけばいいのか。

長年疑問に思っていた問題についてまとめてみようと思います。

■使用するデータと検証方法

今回は、世界と日本の得点力を公平に比較していきたいので、対戦相手とのレベル差がある程度等しく、自国の得点力が測りやすい、ワールドカップでの数値を基に考えてみようと思います。

対象とするデータは古すぎても良くないので、2000年以降に行われた、2002年日韓大会・2006年ドイツ大会・2010年南アフリカ大会・2014年ブラジル大会・2018年ロシア大会の、直近5大会分のデータを基に考えていきます。

方法としては、以下の流れで検証していきます。

①直近5大会で得点をした全選手をリストアップ
②大会ごとに各国の得点数と試合数をフィルタリング
③各国の1試合あたりの得点力を算出して検証

直近5大会で、日本代表はどのくらい得点を奪っているのか。日本代表の決定率は向上しているのか。一試合あたりの得点力は世界と比べてどうなのか。

などなど、検証していけたらと思います。

それでは、キックオフ⚽!!

■直近5大会で得点した全ての選手をリストアップ

まず、直近5大会で得点した選手とその得点を全てリストアップすると、計533人766得点が記録されていることがわかりました。

※データは以下のサイトからまとめました。

直近5大会で、総得点順で並び替えると以下の通りになりました。
1位:ドイツ(63得点)
2位:ブラジル(56得点)
3位:スペイン(37得点)
4位:アルゼンチン(35得点)
5位:フランス(30得点)
オランダ、イングランド、ポルトガル、ベルギー、ウルグアイ、イタリア、韓国、クロアチア、メキシコ…と続き、日本は15位(19得点)となっています。

日本や韓国はアジアで予選を行っているため、ワールドカップに出場しやすいメリットはありそうですが、直近5大会に出場した57ヶ国中、日本は15番目に得点を挙げていることがわかりました。

ワールドカップの得点数に限って言えば、日本代表が得点力不足だと認識するのは、少し正当性に欠けるのかもしれません。

むしろ、FIFAランキングと比較して考えると、世界的な評価以上に得点を挙げている。大舞台やプレッシャーに強いとも言えるかもしれません。

ただ、このデータの注意事項として、総得点で上位に入る国は、準決勝・決勝まで駒を進める回数が多く他国よりも試合数が多くなっています。

そのため、このデータだけで上位の国の得点力がすごい!と判断したり、日本と世界の得点力を単純比較することは適切と言えません。

なので、出場国の総得点と試合数から、各国1試合あたりの得点力を抽出して比較していきます。

■1試合あたりの得点力で日本と世界を比較する

やってみました。

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少し細かい数字になってしまったので、わかりやすくインフォグラフィックを用意しました。友人のデザイナーさんに感謝!!

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集計したデータを見てみると、直近5大会で1試合あたりの得点力が最も高かった国は、ドイツ、ブラジル、コロンビア、オランダ、ベルギーの順になりました。

また、1試合あたりの得点力で見ると、日本は30位まで後退していることがわかりました。

なので、直近5大会のワールドカップで1試合あたりの得点力を見ると、日本は得点力不足だと言えそうです。

■日本の得点力の現在地

ただ、単純に日本の得点力が過剰に低いと認識すべきではないかもしれません。

直近5大会でグループリーグを突破した国の平均得点力を算出すると、「1.46」になりました。

そして、日本の直近5大会での平均得点力を計算すると「1.1」になりました。

ぱっと見では、日本はグループリーグを突破できる得点力を有していないように思えますが、そうではありません。

直近5大会でグループリーグを突破した国の得点力の最高値は3.0。最低値は0.5。(※最高値は2002年ブラジル、最低値は2018年デンマークが記録)

なので日本は、グループリーグ突破を狙えるだけの得点力を有していると見ることができます。

■前回大会の得点力から見える光明

加えて前回大会、日本代表は4試合で6得点を奪い、「1.5」という得点力を記録しました。

前回大会の日本代表の得点力について、深く報道された印象は無いのですが、実は、得点力の大きな前進を感じられる数値になっていました。

先程、直近5大会でグループリーグを突破した国の平均得点力は「1.46」と紹介しましたが、ワールドカップの記録上、日本は初めてグループリーグ突破に必要な平均得点力を上回ったことになります。

それだけではありません。

直近5大会でベスト4に進出した国の平均得点力を計算すると、「1.95」という数値になりました。

直近5大会でベスト4に進出した国の得点力の最高値は3.0。最低値は1.2でしたので、日本代表はベスト4進出できるだけの得点力を記録できたと見ることができます。(※最高値は2002年のブラジル、最低値は2014年のアルゼンチンが記録)

ですから、2年後のワールドカップで日本がベスト4に進出するためには、前回大会と同等以上の得点力を安定的に出すことが必要条件だと感じました。

そこでここからは、直近5大会でベスト4に進出した国にフォーカスを当てて、日本の得点力を向上させる鍵になりえる要素を考えてみようと思います。

■W杯ベスト4進出目安となる得点力「1.95」を実現する為に

直近5大会でベスト4に進出した国の得点データを分析してみた結果、ヒントになりそうなポイントが2つ見えてきましたので、書いていきます。

1.センターフォアードとウイングの世界との圧倒的な差

これは、みなさんお察しかもしれませんが、日本と直近5大会でベスト4に進んだ国を比較してみると、センターフォアードとウイングを担当する選手の圧倒的な得点力の差が見えてきます。

ベスト4に進んだ国の得点を見てみると、全得点の約5〜8割はストライカーとエースの2人だけで挙げていることがわかりました。

直近5大会でベスト4に進んだ国のストライカーとエースを紹介していきます。日本と強豪国にどれだけの得点力の開きがあるのか。知っておくことが第一歩になるのかもしれません。

2018年ロシア大会(※上から順位順)
フランス 全12点(得点力2.5):グリーズマン,ムバッペ(共に4点)
クロアチア 全12点(得点力2.2):マンジュキッチ,ペリシッチ(共に3点)
イングランド 全13点(得点力2.0):ケイン(6点),リンガード(1点)
ベルギー 全15点(得点力2.0):ルカク(4得点)アザール(3得点)
日本 全6点(得点力1.5):大迫(1得点),乾(2得点)
2014年ブラジル大会
ドイツ 全18点(得点力3.0):ミュラー(5点),シュールレ(3点)
オランダ 全15点(得点力2.5):ファン・ペルシ(4点),ロッペン(3点)
ブラジル  全11点(得点力1.8):ネイマール(4点),オスカル(2点)
アルゼンチン 全7点(得点力1.2):メッシ(4点),イグアイン(1点)
日本 全2点(得点力0.7):本田(1点),岡崎(1点)
2010年南アフリカ大会
スペイン 全8点(得点力1.3):ビジャ(5点),イニエスタ(2点)
オランダ  全11点(得点力1.8):ファンペルシ(1点),スナイデル(5点)
ドイツ 全16点(得点力2.7):クローゼ(4点),ミュラー(5点)
ウルグアイ 全11点(得点力1.8):フォルラン(5点),スアレス(3点)
日本 全4点(得点力1.0):岡崎(1点),本田(2点)
2006年ドイツ大会
イタリア 全12点(得点力2.0):トー二(2点),デル・ピエロ(1点)
フランス  全9点(得点力1.5):アンリ(3点),ジダン(3点)
ドイツ 全13点(得点力2.2):クローゼ(5点),ポドルスキ(3点)
ポルトガル 全7点(得点力1.2):リベイロ(2点)C.ロナウド(1点)
日本 全2点(得点力0.7):玉田(1点),中村(1点)
2002年日韓大会
ブラジル 全18点(得点力3.0):ロナウド(8点),リバウド(5点)
ドイツ  全14点(得点力2.3):クローゼ(5点),バラック(3点)
トルコ 全10点(得点力1.7):マンシズ(3点),ダバラ(2点)
韓国 全7点(得点力1.2):アンジョンファン(2点)パクチソン(1点)
日本 全5点(得点力1.2):鈴木(1点),中田英(1点)

実際に並べてみると、ワールドカップでベスト4に入るためには、エースとストライカーが覚醒する必要性が明確になったかと思います。

具体的な数値として、エースとストライカーの2人で5得点以上を挙げることがベスト4に入るために満たしたい基準になってきそうです。

選手選考はまだですし、2年後のワールドカップがどうなるのか不透明ですが、大迫選手、中島選手、南野選手、堂安選手、久保選手の得点力は大きな鍵になりそうです。

2.過去5大会でベスト4に入ったチームの約9割でDFが得点を挙げている。

得点力不足と言うと、FWや攻撃的な選手に注目が集まりがちなのかもしれません。

しかし、直近5大会でベスト4に進出した国の得点者を見てみると、なんと約9割の国でDFが得点を挙げていることがわかりました。

直近5大会でDFが得点を挙げずにベスト4に進出することができた国は、2002年の韓国、2006年のフランス、ポルトガルの3チームのみ

過去5大会でベスト4に入ったチームは20あるわけですが、17の国でDFが得点を挙げているわけです。

ここで、過去5大会18試合を戦ってきた日本の得点者を見てみましょう。

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日本の歴代得点者をまとめてみると、FWとMFの選手のみであることがわかります。

これまで日本はワールドカップで18試合を戦ってきましたが、DFの選手が得点を挙げたことは1度もないのです。

もちろんDFが得点を挙げなくてもベスト4に入ることは不可能ではありません。ただ、データ的にその確率を見ると、1割ちょっとであることがわかりました。

日本は世界的に決して弱い国ではありませんから、コーナーキックやセットプレーの機会を多く得ることができるはずです。

客観的にみて、過去5大会18試合を戦って、DFの選手にゴールが無いという事実は、セットプレーの質が世界的に劣っていることを示していると言えるでしょう。

厳しい意見になってしまうかもしれませんが、ワールドカップ出場国中で最低レベルである。その事実は直視すべきなのかもしれません。

ちなみに、直近5大会でベスト4に進出した国の得点データから言えば、大会通じてDF陣で1点獲ることができれば、十分合格ラインと言えます。

たった1点で変わるのか…?そんな意見もあると思います。もしかしたら、DFのセットプレーの練習に時間を割かないほうが良い成績を残せる可能性だってあるでしょう。

ただ、日本代表のベスト4進出はかなり現実的になっていることは間違いありません。

得点数のデータから見ると、ベスト4に進出する目標を達成するためには、必要な要素の1つになっています。

もう、日本がベスト4に進出するためには、DF陣に守備力だけを求めていては不十分なのかもしれません。

DF陣の得点力にも注目していくことで、ワールドカップベスト4という夢の実現を後押しできるのかもしれません。

■まとめ

ワールドカップ直近5大会の得点データから、日本の得点力不足について分析してみました。

今回は「得点」にフォーカスして分析してみましたが、前提として、スポーツは様々な要因が絡まり合って勝敗が決するものです。

なので、得点の視点だけで正しい結論が導けるわけではありません。

他にも「対戦相手との相性」や「失点数」や「育成年代の違い」など、様々な要素が存在しているはずです。

代表チームにはアナリストさんがいて、多角的な分析を基に、最適な手段を模索しながら試行錯誤が行われているはずです。

なので、1つの視点から見える正しさを押し付ける事に、全く価値を感じていません

ただ、スポーツを愛するファンが、さまざまな視点から質の高い仮説を表現していくことで、さらにレベルの高いファンになれるのかもしれません。

そして、質の高い仮説が増えていけば、SNS等を通じて現役選手や関係者、子供たちの元に届いていくと思っています。

その仮説が選手や競技の糧となり、スポーツを強くしていけば、本当に素晴らしいことなのかもしれません。

また、プロアスリートの方々は、私達が超えられなかったいくつもの壁を乗り越え続けている人間であることを忘れるべきではありません。

国やスポーツを代表して戦う選手にリスペクトを持った上で、さまざまな視点から質の高い意見を表現していく。その姿勢を忘れずに応援していけたなら、スポーツはさらに強くなっていけるのかもしれません。

さて、執筆からちょうど90分が経ちました。

今回はここで試合終了とさせていただこうと思います。拙い部分もあったかと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

(本当は、データ収集と分析と執筆に2週間ほどかかりました…!事前に意見をくれたり、相談に乗ってくれた友人、デザイナーさん、本当にありがとうございました。)

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