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専門家としての人生に影響を与えてくれた場所・人

(6,701文字/個人差はありますが、約10分~11分程で読めると思います)

こんにちは。よこはま発達グループの佐々木です。
週末から社会福祉法人風の道(宮崎)にコンサルテーションで来ています。ちょうど今は飛行機で横浜に戻っているところです。
   
風の道さんとは月1回オンライン、年1回訪問でのコンサルテーションでご一緒させて頂いており、お付き合いは今年で4年目になります。
  
2年前に訪問させていただいた際にも、「支援者・プロとしての生き方」というテーマでコラムを書きました。今回も風の道に訪問して感じたことを書いていきたいと思います。支援に直結するような話ではないかもしれませんが、僕としては重要なテーマだと思って書くつもりですので、どうぞお付き合いください。


どこまでのことをできるのか

これは2年前に、風の道の田中理事長から教えて頂いた言葉です。
最近よく話すことに「専門性には2つある」というのがあります。コラムでも以前書きました。
  
ざっくりいうと「人としての倫理観×専門的知識・技術=支援力」みたいな感じですが、こうしたことを明確に意識して、言語化して表現するようになったのは、2年前に風の道を訪問したくらいのタイミングからだと思います。
  
それまでの僕は、いかに専門知識を増やし、いかにその知識を使い専門的な技術を高めていくかということに重きを置いていたと思います。もちろん、専門職という立場でもありますから、自分が現役である間はそうした歩みを止めてはいけないと思います。
  
でも、それだけでは不十分で、専門的な知識・技術をより活かし、よりよい支援をしていくためには、「倫理観」が必要なんです。

倫理観って抽象的じゃない?

だけど、「倫理観」ってなんなんでしょうか。抽象的なものだし、それが何を意味するのか、人によってイメージはさまざまでしょう。

僕も、こうした話を聞くと「そりゃ大事だよな」って思います。でも、どこまで実感を伴って、解像度高く、具体的に理解できていたかというと、どうなんだろうと疑問もあったりするわけです。
  
そうした漠然としたことを、より具体的に教えてくれたのが田中理事長であり、風の道の皆さんです。
   
僕らが日々の生活の中で「これは福祉制度の範囲なの?制度として明文化されていないことなら、誰の役割なの?親御さん?親御さんがおられない場合はどうするの?」という状況に遭遇することは珍しいことではありません。

制度的な線引きもあるし、職域を超えたことはできないこともあると思います。だけど、制度にない、イレギュラーだけれども必要なこともあります。
  
ただ、公平性という視点で考えると「必要なことはわかる。でも、これを全員にできるかというと厳しい」ということもあります。また、当たり前ですが、誰かが稼働するということは、誰かの人件費がかかるわけです。「自分はボランティアでやるから大丈夫じゃない?」と思われる方もいるかもしれません。「結局お金なのね」と思われる方もいるかもしれません。
       
でも、これは多くの人が知っておく必要があると思うのですが、実働時間だけが必要な時間ではありませんし、それ以外のやり取り、あらゆることを含めての相手の時間です。それぞれに生活もあります。家族がいれば、家族との時間や生活もあります。特に、組織のトップとしてはそうしたことも含めて、そこで働いている方々を守る必要があります。
       
「支援が今この瞬間だけ限定でOK」ならいいかもしれませんが、そんなことはないですよね。それぞれの方にとってどのくらい必要なのかに違いはあれども、継続的なサポートがある方が、安定した暮らしには繋がりやすくなります。そう考えると「継続する」ということの優先度はものすごく高くなります。ですから、人件費のこと、そこにかける時間のこと、経営のこと、働く方々の暮らしのことやメンタルヘルスのこと、多くのことを考えなければなりません。
   
自閉症スペクトラムという概念を提唱した英国の精神科医であるローナ・ウイング先生は、かつて著書「自閉症スペクトルー親と専門家のためのガイドブック」の中で、こんな言葉を綴っておられます。

親たちの多くにとっては、自分の子どもが家庭から離れて見知らぬ人に世話をされることをあれこれ考えるのは辛いことです。気持ちの上でどんなに苦痛であるにしても、親は自分がわが子をずっとケアしていくわけにはいかないという事実を直視する必要があります

自閉症スペクトルー親と専門家のためのガイドブック

ウイング先生は専門家であり、当事者家族という立場でもあります。双方の立場、気持ちをご理解してくださっているからこそ、この言葉には重みがあるように感じます。
  
こうした前提があった上で、その時で今何が必要なのか、今どこまでのことができるのだろうかを考えながら日々の支援を考えていく必要があるのだと、風の道の田中理事長と話をしていると考えさせられます。僕の支援者としての姿勢や考え方、生き方に対して、影響を与えてくださった方であることは間違いありません。
  
そして、いつも謙虚な風の道の皆さん、本当に大好きな場所です。

どこまで支援の質を高めていけるのかは、組織のトップによる

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