「Q&A:穏やかだとなめられる?/トイレへのこだわり/人付き合いを広げたい?」
(5,448文字/個人差はありますが、約9分~14分程で読めると思います)
こんにちは。よこはま発達グループの佐々木です。
今回もご参加頂いている皆さんからお寄せ頂いたご質問にお返事をしていく「Q&A回」です。どうぞお付き合いください。
Q:「穏やかに」が伝わらない
以前、佐々木先生のお話で、「何か一つだけ、現場でできることを」と言われたら「穏やかに」ということをお伝えしているとありました。本当にそれは大事なことだと思うのですが、「それだとなめられるでは?」とか「メリハリが大事だ」と言われ、あまりうまく伝わらないことがあり、悩んでいます….。
A:自分の知識や技術不足を正当化しない
ご質問ありがとうございます。これはよく言われることでもあり、現場で本当にご苦労しておられることの一つかもしれませんね。
まずは、「穏やかに」ということがどのようなことなのかのおさらいをと思います。これは、僕らよこはま発達グループの理念の一つでもありますが、その元は英国自閉症協会のSPELLという考え方の一つです。
穏やかさの基本
ASDの人への対応や介入の基本として、声のトーン、表情、態度などを穏やかにするということです。大声で圧迫するような態度をとったり、厳しく指導したりするとその場では、指示に従うことや、問題が解決したように見えることもあるかもしれませんが、何も本質的な解決にはなっていません。
それは力対力の関係であり、「恐い」という恐怖心から応じているのみで、力で押さえつける対応が続くと、「相手を従えたい時には力を使えばいい」ということを教えることにもつながります。その結果、自分よりも力が弱いと思っている相手からの働きかけには応じなくなってしまうリスクもあります。厳しい人の指示はきく一方で、そうでない人の指示はきかないというのは、社会適応とは程遠い状況でではないでしょうか。
原則的には、ASDの人に共感し、顕在化している問題の背景にある原因を探り、ご本人が苦労しない、苦痛が少なくなるように環境設定の配慮することで、穏やかに過ごせることを目指すことが重要です。また、ASDの人は音や光、臭いなどの感覚刺激に過敏なことが多いことが知られています。どのような刺激が苦痛かは人によって異なりますが、その人の苦痛になるような刺激は最小限にすることが基本です。ただし、これは無刺激にすることとは意味が違います。一律に刺激を減らすということではなく、あくまで、ご本人にとって混乱をきたすような刺激を減らすことがポイントです。
こうしたことが「穏やかに」の基本です。
自分の至らなさを正当化しない
その上で「それは甘い」とか「なめられる」と言われることもあります。
ちょっと厳しい言い方をすると(なので、不快に感じる人もいるかもしれません)、それは「自分には力を行使する以外の、知識も技術も持ち合わせていませんし、それらを学つもりもありません」と表明しているようなものではないでしょうか。
つまり、「仕事にはしますが、それに関することを学ぶつもりも、自分のやり方を変えるつもりもありません」ということにも繋がりかねません。
これって、どんなに信念があったとしてもおかしなことだと、僕は思います。そして、どんな支援でも、それは信頼関係に基づくものだと思います。
これを読んでいるみなさんは、何らかの形で発達障害支援に携わっている方々であり、熱心に勉強している方々です。
そんなみなさんの前に、次のような二人がいたらみなさんはどちらに相談しますか?
・発達障害のことに関して勉強し、一緒にアップデートしたいと思っているAさん
・発達障害のことは勉強するつもりもないし、しなくてもいい、むしろ気合いと元気が重要だと思っているBさん
多くの場合、Bさんに相談しようとは思いませんし、発達障害に関する支援者として信頼をすることもないかもしれません。
自分の知識や技術不足に対して、理由をつけて正当化するのは違うのではないでしょうか。
Q:トイレのこだわりで困っています
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