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「権利」をどう考えるか

(6,545文字/個人差はありますが、約11分~16分程で読めると思います)

こんにちは。よこはま発達グループの佐々木です。
毎週末に配信しているコラムですが、最初は2,000文字~3,000文字と言っていたのに、だんだんと5,000文字~6,000文字とか、分量が倍になっているような気がしていて、勝手にハードルを上げて、勝手にプレッシャーを感じています。
  
さて、今回は「権利」について考えてみたいと思います。
どうぞお付き合いください。


それぞれに権利がある。

色々な現場に出入りさせて頂いていると、「何かを気にし始めると対応が難しい。そういう時には視覚支援をしても効果がない。そういう時にはどうやって活動に戻ってもらうといいのか?」というご質問をよくお受けします。
  
確かに、現場の方からするとそうです。僕だって、そういう時に悩みます。
だけど、こうした時に考えることの一つに「活動をしない権利だってある」ということです。
  
療育現場であれ、成人の現場であれ、多くの活動は支援者が決めていることがあります。なので、中には「興味が持てない」とか「やりたくない」という活動も含まれたりします。
   
そうした時に「どうやって活動をさせるのか」を僕らは考えがちで、そして「活動をさせられる支援者はすごい」と言わんばかりに、そうしたことが支援者としての力量の評価に繋がることさえあります。
      
確かに、自閉症の方に対して、不安が少なく、安心して活動できるように関わることで、結果として取り組めると考えれば、そうした側面もあるかもしれません。
  
「安心できること」は最優先したい事柄でもありますが、ただ優しく接すれば安心できるわけではありません。安心のためには当事者の方のことを知らなければなりません。自閉症の方であれば、自閉症の方の特性を知らなければなりません。
  
ですので、そうした知識があるかどうかというのはとても重要なポイントです。
   
一方で、「すべての活動に取り組めるようにすることがいいのか」については、また別の話です。前述したように「活動しない権利」も当然あるからです。その権利を認めずに、「どうやったら活動できるか」だけを考えるのは違うかもしれません。
  
例えば、僕らは有給休暇があります。
言い換えれば、「仕事をしない(休む)権利」です。
  
でも、そうした権利が認められずに、「どうやったら働きやすくなるか」だけを考えられたとしても「いや、働きやすさは大事だけれども、そもそも休む権利を認めてください」となるのではないでしょうか。
  
これは、誰にだって認められる権利なのです。
 
でも、「じゃあ、ご本人がやらないと言えば、なんでも許容する方がいいのか」と問われることがあります。皆さんはどう考えますか?

特性があるから周囲が我慢?

これは、僕は違うだろうと思います。
権利という視点で考えるならば、「他の人の活動を妨げる権利はない」からです。
    
少し具体例を出しながら考えてみましょう。

例えば、自分にとって嫌な活動があり、その結果混乱し、他害行為のある方がいたとします。ご本人は、嫌な活動を断る権利があります。その結果、混乱することもあるでしょう。でも、「ご本人の混乱が鎮まるまで、みんなが耐える」は違います。「他害はしょうがない」ともなりません。
  
この時に考えていくのは、以下のようなことです。

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