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専門性とは何か?第2話

(5,360文字/個人差はありますが、約9分~13分程で読めると思います)

こんばんは。よこはま発達グループの佐々木です。

週末はTEACCHプログラム研究会の研修やイベントで仙台に行っており、コラムを書けずにお幅に更新が遅れてしまいました。すみません。

先週のコラムでは「専門性とは何か?」ということについて書きました。今回はその続きです。

というのも、ちょうど昨日は仙台で「自閉症支援の未来会議」というテーマでパネルディスカッションを行い、そこでも「これからの専門性」についてお話をさせていただきました。とはいえ、あくまで僕の考えですが。   

前半後半で少し分けようと思うのですが、前半は「狭い意味での専門性」について。ちなみに、先週書いたコラムもこれに近いです。後半は、「広い意味での専門性」でと思います。どうぞお付き合いください。


裏技はない 

僕は幼児期~成人期の方々まで、自分が直接関わらせていただくことがあります。それに加えて、支援現場の方々からの相談に乗らせていただく立場でもあります。

その時に大事なことは、昨日も会場でお話をしたのですが、「理屈はつまらないと思う。でも、その理屈がその先の支援を変える」ということです。

理屈というのは、地味で派手さがありません。一方「具体的な実践」は魅力的で華があります。特に、困っているときほど、「どうしよう。何かこの現状を打開できる一手はないか」を考えがちです。そんな時には「もう一度自閉症の特性を勉強しよう」となるのではなく、具体的な実践を知りたくなり、そしてそれを試したくなることがあります。
  

もちろん、それが悪いわけではありません。


でも、ちゃんと理屈を理解できているかどうかの方が、ずっとずっと大事なんです。  

“自閉症だから"スケジュールを使うわけではありません。

自閉症であり、その中でも、耳から聞くよりも目で見る方が得意で、先行きがわからないと不安になりやすいけれども、先行きがわければ魅力を発揮しやすいからスケジュールを使うわけです。とはいえ、ただ視覚的に提示すればいいかと言われれば、そうではありません。  

その方にとって、これを見れば何を意味しているのかがわかるものを活用することや、やってみたい活動、知りたいことが知れるような中身であることが大切です。つまり、「ニーズに合わせる」ということです。

こうしたことを丁寧に取り組んでいくためには、自閉症特性(社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーション、感覚の偏り)、認知特性(学習スタイルと同じ意味)、その方の実際のスキルなどを把握しておく必要があります。

…..なんだか難しそうですよね。

でも、これが基本なんです。

「考えることが多すぎる」と思われるかもしれません。

でも、皆さんがスマートフォンやタブレットを購入しようとして、「どれがあなたのニーズにあうかわかりませんが、ぼくの一押しはこれです!」とだけ言われたらどうでしょう?  

そして、「どうしてそれが一押しなんですか?」と質問した時に、そのスマートフォンの性能等はよく説明されないどころか「これが話題なので」とか「みんなが使っているので」というだけの理由だったらどうでしょうか?

違和感を持つ人が多いと思うのですが、その違和感の背景には、

「スマートフォンを販売している人が、スマートフォンのことを知らないのはおかしい」「しかも、何が自分に合うのか自分のニーズも把握しないで、みんなが使っているからという理由で自分の考えだけを押し付けてくるなんて」
というのがあるんじゃないでしょうか。
     

でも、ちょっと待ってください。


自閉症の基本をよく知らないし、ニーズにも合わせることをしないというのは、これと同じじゃないでしょうか。   

裏技はありません。

どこまでいっても、どんな時代でも、基本をおさえること。その土台の上にプラスαがあるのです。

プロスポーツ選手だって同じです。基礎、基本が誰よりも上手いからプロなのです。基本を多くの方よりも高い水準でできるからプロなのです。これが、これから求められる狭い意味での専門性の一つです。

広い意味での専門性ってどういうこと?

前回のコラムと、ここまで書いたことが狭い意味での専門性だとするなら、広い意味での専門性とはなんでしょうか。

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