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構造化という支援でもっとも大切だと思うこと

 皆さん、こんにちは。よこはま発達相談室の佐々木です。以前、SPELLについて書かせていただいた際に、「Structure」についてご説明させていただきました。このStructureは、自閉症支援で先進的な取り組みを続けておられるノースカロライナ大学のTEACCH Autism Programにおいても、自閉症の方への非常に大切な支援として位置づけられています。相談室でのセミナーでは私がStructure(構造化)についてご説明をさせていただくことが多く、2020年5月29日(金)〜5月31日(日)に開催する春のセミナーでもまた詳しくと思いますが、今回その中でも、私がもっとも大切だと思うことについて共有したいと思います。

構造化=決まった手法か?

 最近は、どこでお話をさせていただく際にも、「構造化」という言葉については聞いたことがあるという方が増えてきたように思います。それは、自閉症の方々への支援として大切なことが認知されてきたという意味では大変喜ばしいことです。そうした時に構造化について伺うと、「視覚支援として絵カードを使っています」「スケジュールを使っています」「それぞれの活動と場所を物理的にわけています」「衝立を使っています」など、個々の現場で実践されている具体的な取り組みについて教えていただくことがほとんとです。そうした時に、「なるほど」と思うと同時に、私がいつも質問をさせていただくのが、「どうしてそれをやっているんですか?」「どういう意味でやっているのでしょうか?」ということです。なぜなら、どのような支援も根拠(評価)に基づくべきだと思っていますし、支援する側がその意味を理解していない支援というのは、あまりに無責任だろうと思うからです。そうした支援は、例えば、「頭痛で病院を受診した際に、診察はしないけれど痛み止めを出す」というようなことと同じような気がします(これは実際には有り得ませんが、もしこうした対応をされたら、私だったら不安と不信が増えてしまいます)。したがって、上述したような質問をした際に、「前任者がやっていたので」「自閉症の方にはやった方が良いと聞いたので」「実はよくわかっていないんです」などのお返事があった場合には、支援のあり方について見直しをしていただくようにしています。

非構造化のプロセス

構造化でもっとも大切なのは手法ではなく、”考え方”です

 色々なご意見、お考えがあると思いますが、私は、構造化についてもっとも大切だと思うことは、具体的な手法やルールではなく”考え方”だと思っています。こうした考え方を私たちが把握していないと、「担当者によって対応が全然違う」「構造化=知的に遅れのある方だけに有効なもの」「うまくいかなくなった構造化をずっと続けている」といったことが生じてしまいます。

構造化の考え方

構造化の考えを理解する→評価をする→具体的なアイディア

 構造化をしていく場合にも、その考え方は自閉症の方々の支援の原則と同じです。「自閉症だから」ではなく、その方のことを理解し、どの方がどのような点で困っておられるか、またどのようなニーズがあるのかを把握していくことがスタートです。その上で、それぞれの方にとってお役に立てそうなところから取り組んでいくことが必要です。ですので、「自閉症だからスケジュール」ではなく、「見通しがないことでの不安があるようだから、見通しが立って安心できるようにスケジュールを使おう」「日々の予定はあまり気にしていないけれど、余暇の予定は知りたがってるから(=余暇の見通しは持ちが立っている)、まずは余暇活動の予定をきちんと伝えよう」という考え方が大切ではないでしょうか。

構造化のプロセス

構造化は有効だけど万能ではない

 最後にもう一つ大切だと考えていることをお伝えさせていただくと、「構造化は有効だけれど万能ではない」ということです。自閉症の方々の支援は、構造化をすればいいというわけではありません。例えば、よく現場で経験するのは、構造化をしたけれど、その使い方や意味を教えないということです。私たちが自閉症の方々の支援をする際には、「教える、伝える」という発想は大切なものだと思います(もちろん、「教え方」「関わり方」のコツもあるのですが、その辺りはまた別の機会にと思いおます)。

構造化は万能ではない

 さて、ここまで「構造化」について共有させていただきました。これらのより詳しいご説明はセミナーなどでさせていただいておりますし、セミナーではこれまでお伝えさせていただいた考え方を前提とした、具体的なアイディアについても時間の許す限り紹介しております。参考までに、webセミナーの一部を公開しておりますので、ご関心のある方はご覧ください。

知的な遅れのある方の構造化→https://www.kokuchpro.com/event/ad1119a6b0c731034536c15273fd37f4/

知的な遅れのある方からそうでない方までの様々な構造化→https://www.kokuchpro.com/event/71ece9fc9b2be8cb66e4e52e22f94bee/

よこはま発達相談室 佐々木康栄

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