支援を考える際には知識は必要だけれども、知識だけあっても支援は変わらない
(4,707文字/個人差はありますが、約8分~11分程で読めると思います)
こんばんは。よこはま発達相談室の佐々木です。今週は現場の方々とやり取りをさせて頂くことが多かったので、その中で感じたことをと思います。
知識や勉強するは増えたけど・・・
一昔前と比べると、勉強する機会や知識を得る方法は格段に増えてきました。特に、オンライン化が進んだことでより一層そうした状況は加速したと感じています。
現場でも、各自が勉強をするだけではなくて、事業所として研修の機会を設けたり、「研修委員会」という部署を設けて年間の研修プログラムを作成しておられるところも増えているように思います。
一方、そうした機会は増えているものの、そのことが現場の実践に直結しているかといえばそうではないという声もよく見聞きします。例えば、強度行動障害について。これは国として「強度行動障害支援者養成研修」を実施しており、これまで10万人以上の方が受講しておられるとされています。でも、日本自閉症協会からは、「2021年度障害福祉・障害者雇用対策関係予算等に関する要望」の中で、下記が表明されています。
これは、「研修の機会は増えたけれども現場の支援の質はそこまで変わっていないのでは?」という指摘かもしれません。
皆さんの実感としてはどうでしょうか?
知識を活用するためには一工夫が必要
少し古いデータになりますが、平成25年度に「国立重度知的障害者総合施設のぞみの園」が公表したものでは、日本には強度行動障害の状態になっておられる方が約8,000人と推定されています。これまでに専門的な研修を受けた方は約10万人です。でも、上述のような指摘もあるわけです。こうした点については、のぞみの園が公表した「強度行動障害支援者養成研修の効果的なカリキュラム及び運営マニュアルの作成に関する研究」では、「(現在の強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践研修)とは別に)コンサルテーションやスーパーバイズを含めたフォローアップ研修の必要性がある」とされています。
つまり、「支援を考える際には知識は必要だけれども、知識だけあっても支援が変わるわけではない」ということで、知識を活用するためには、もう一工夫必要ということなのかもしれません。
実際に、現場の方々とやり取りをしていても、「コミュニケーションへの支援が大事」「見通しを伝える」というのは知識として知っていたとしても、そのために具体的に何をすれば良いのか、何が必要なのかなどのイメージがつかないということをよく感じたりします。
一方で、イメージはつくけれども、「スケジュールは絶対に変更してはいけない」「衝立を使わなければならない」など、ちょっと固すぎると感じることがあり、そこをどうすれば良いかとご相談をお受けすることもしばしばです。
もちろんそれは伝える側の問題もあるかもしれません。コミュニケーション支援でも、「絵カードを使えばいい」ということだけが伝えられ、「こちらが言わせたいことではなく、本人にとって言えたら便利な表現であること」という視点が抜けてしまうと、「絵カードを使って挨拶を教えたいのにうまくいきません」みたいなことが生じたりします。
どんな知識を、どのように伝えてもらうのか、そして知識をどのように活用していけばいいのか、そうした点にはまだまだ課題がありそうです。
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