会いに来た祖父
あれは大学1年のとき
子供の頃から私をかわいがってくれていた祖父はがんに侵され、もう長くないと言われた最中、私は進学とともに一人暮らしのために他県へ引っ越した。
片付けを終えても、部屋にはまだ空き段ボール箱が残っていた。
ズボラな私はその段ボールの上に洗濯かごをおいて脱いだ衣服を入れて使っていた。
その日の夜はつかれて眠り込んでいたが、ふと物音が聞こえて目が覚めた。
ギシッ・・・
ギシッ・・・・
断片的に鳴るその物音は、足音とも異なる聞いたことがない音だ。
これはなんの音?と、私は目を凝らし耳を澄ませてあたりを見回した。
どうやら、音は洗濯かごの下においていた空の段ボールから聞こえてくる。
なにか圧力がかかり、少しずつ押しつぶされていく音のようだ。
でも、なんで?
洗濯かごには何も入っていない。
圧力がかかるようなものは何もない。
ギシッ・・・
ギシッ・・・
音はゆっくり、定期的なリズムのように鳴り続けた。
不思議に感じながらも眠気に負けた私は、そのまままた眠りについた。
翌朝、早朝から実家からの電話が。
「おじいちゃん、今しがた亡くなったよ。
急変で連絡が間に合わなかったよ」
泣き声の交じる母だった。
あぁ、あれはおじいちゃんだったのか。
最期に私に会いに来てくれたんだ。
私は不思議と落ち着いた気持ちですんなりとそう感じた。
どうりで、まったく恐怖感を感じなかったわけだ。
可愛がってくれた私に、一目会いたかったのかな。
おじいちゃん、死に目に会えなくて、ごめんね。
会いに来てくれてありがとう。
これはわたしの恐怖体験ならぬ、おじいちゃんとの最後の思い出とも言えるお話です。
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