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【上場経理社員向け】選択こそがキャリアの可能性を開く

先日、こんな光景を見ました。「インボイスって経理をやっている人にとっては当たり前だけど、世間の個人事業主は知らないですよ」と、ある営業のスペシャリストが話していたのです。

経理のあたりまえは、世間の非常識。こんなことがよくあります。
ところが、経理ムラに染まってしまうと、それに気が付くことができない。

私が金融機関の経理部門にいたときの話です。

営業力が強いことで有名はその会社では、よく営業社員から案件の相談があったんですよ、経理部門に。

「こういう提案をしたいんだけど、会計的にセーフなのか?」
「この提案はお客様の会社でこういう会計処理でいけるのか?」

会計基準のキワキワを攻めていって、資産計上せずに済ませるソリューションを提案したいんですよね、営業社員は。

ところが。
ほとんどの経理社員は、それに対して、こういう回答をしがちです。

「ルールでは、●●です。」
「それは、セーフかもしれないしアウトかもしれません」
「それは認められない可能性があります」

そりゃそうですよね。
会計基準や税法は、すべてを明確に割り切れるほど万能ではなく、必ず解釈の余地が出てくるのです。

解釈の余地について、白黒つけるのは難しいです。

でもね、私は思うんですよ。
会社は経理のためにあるのではなく、営業社員が売上を上げるから、経理社員の給料が会社から出るのです。

だったら、営業社員に、自分の専門性を使って貢献できないかなって。

「ルールはこうなんですけど、どうしても解釈の余地が残ってしまいますよね。だから、相手に解釈の材料を提供してみてはどうでしょう?」

こんな風に切り出してみると、相談してきた営業社員が身を乗り出します。

なんでかっていうと、
こんな話し方をする経理社員に会ったことがないからです。

相談しなきゃならないけど、どうせ歯切れの悪い答えしかもらえないんだろうな・・・って、実は営業社員は思ってるんです。期待値ゼロですよ。

そこに、経理社員が提案をしてくるんだから、え?ってなるんですよね。
さらに提案を続けます。

「今回提案する会社さんは上場企業ですか?中小企業ですか?それによって解釈を判断する人も、判断根拠も変わってきます。

上場企業ですか・・・、最後は向こうの会計士がどう判断するかですね。

例えばなんですけど、ウチの会社に出入りしている会計士に、どんな視点でどう判断するかを聞いてみましょうか?そこで論点を洗い出したうえで、どんな提案ストーリーにするか、もう一度打ち合わせしませんか?」

こちらから、次のステップに進むための「選択肢」を提示するのです。

それはダメかもしれません、というのと、こんなやり方がありますよ、というのでは、受け手の印象が180度変わります。

目の前の相手が何を望んでいて、それを実現するために、自分に何ができるのか?私は、仕事ってそういうことなんじゃないかって思うんですよ。

ところが、経理にいると、山盛りのルーチンワーク、がんじがらめのルール、複雑な会計基準・・・。それらをこなすことで日々が過ぎてしまいます。

気が付くと、それが仕事のすべてになってしまう。会社の業績が良くても悪くても、目の前には同じように仕事があり、それをこなすだけである程度評価される。もしくは、これらをやることが全てになり、他部署との連携がうっとおしくなる・・・。

すると、仕事の本質を忘れてしまうんです。

世の中では、経理の専門性がとても求められています。ところが、経理ムラ、税務ムラの人たちと、ちょっと話が通じない。これが一般的な構図なのです。

経理の専門性が必要だけど、自分たちは詳しくない。そんな人たちに、手を差し出して、一歩ずつゴールに向かえるように「選択肢」を示してあげる。

それが、うまくいってもいかなくても、あなたの価値は爆上がりです。自分のために一生懸命に何かをしてくれる人、嫌いになる理由ありますか?

人は、他との「違い」に感動し、紹介したくなり、それがあなたの人生にチャンスをもたらすのではないかと思います。

ちなみに私の話ですが、こういうことを積み重ねていくうち、「話せる経理」というブランドが生まれ、気が付いたら他部署に私の席が用意され、ついに経理から海外M&A部門への異動が実現しました。社内で一番人気だった部署です。

専門性を使って、相手のゴールを実現するための選択肢を示す。最初はできないかもしれませんが、これを強く意識すると、今までとは同じ景色が変わって見えるようになりますよ。

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