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組織がスケールする際の3つの壁と乗り越え方とは?

本コラムは2021年8月27日に株式会社フルスピード、代表取締役会長友松功一氏をゲストにお迎えし「上場やスケールを阻む3つの組織の壁と乗り越えるポイント」というテーマの対談セミナーをレポートにまとめています。

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企業がスケールする時に感じた3つの壁

矢間:まず本日のテーマに即した質問から。上場企業がさらなる成長をしていく為には「大概このあたりが壁になりやすい」という事を3つ程挙げながらお話を頂きたいと思っておりますがいかがですか?

友松:一つ目は上場前からいらっしゃる従業員の方を含めた創業メンバーや創業に近しい方は「上場に向けてずっと走ってきている」という環境ですね。上場前後でもあると思いますが、ガバナンスであったり「今までOKだったのに何故NGになるの?」など既存社員の方の不平不満や環境の変化など。

二つ目は「人材の層が変わってしまう」というところ。上場会社が採用するとなると、良くも悪くも「上場会社に入社した」と思っている方もいますので、この辺りはカラーの違いや目的意識の違いが壁になったりするのではと思います。

三つ目は事業にかかわるところで、フルスピードもそうですが「上場するまでは経営戦略的にも割と尖った事業を一つ作って伸ばして、1本目の事業で上場する」というケースはIT企業では多いのかなと思います。上場した後は、経営的に言うと多角化に進んでいったりエリア展開を強めていくとなると「一本の事業で必要だった人材」と「多角化していく時に必要な人材」が変わってくるケースがあります。そうなると「創業メンバーで一番の主力事業をやっている部分」と「新規事業で全く稼げていないけど、これからの未来を作っていく為に投資をしなきゃいけない部分」が出てきて、「お給料のバランスをどうする」だとか「何故自分のほうが貢献しているのにお給料が低いのか」などが出てきます。フルスピードは多分全部経験していて、実際にそういう壁は大きくあったのかなと思っています。

3つの壁のフルスピード流の乗り越え方

矢間:非常に具体的なお話をありがとうございます。では、それぞれ今お話し頂いた壁について「フルスピードではこのように解決をしてきた」など、ぜひ教えて頂けたらと思います。

友松:フルスピードは2001年にできた会社で、2007年にマザーズ上場しています。実際には、2010年に今の親会社であるフリービットという会社が上場した後等にリーマンショックや組織崩壊もあったりして、伸び悩みキャッシュもなくなって結構厳しい状況がありました。なので、結果的に言うと私も含めて今の役員・事業部長に創業メンバーが1人もいない状態で会社が引き継がれています。これはネットベンチャーだとかなり珍しくて、創業オーナーが居ない中で成長させていくというところはある意味「会社が倒れそうになって、腹を括って次のフェーズを作っていかなきゃいけない」っていうところが腹決め出来たので、上場前後からすると再成長軌道に乗せられている要因かなと思います。
「創業オーナーが右と言えば右」という会社さんがほとんどだと思いますし、文化も色濃く出来てくるかなと思います。フルスピードは、そういう意味では創業オーナーは2010年の買収後は株式を売られて今シンガポールにいらっしゃいますので、「創業オーナーがいなくなった後でどうやって会社の舵を切っていくか」というところでミッション・ビジョン・バリューを作り直して、「もう1回新しいフルスピードを作っていこう」と舵を切りました。これが結果的にすごく良かったです。

矢間:ありがとうございます。友松さんの仰る通り、ITスタートアップから上場まで成長してきた会社で創業オーナーが既に居なくなっているという珍しいパターンかと思います。その時に創業オーナーの創業への熱い想いのようなものは当然弱まる事もあると思いますが、友松さんのお話では現経営陣が「それでも成長させていく」とコミットして今があるというお話がありました。その際に当時のメンバーの中で友松さんがリーダーシップをとって「フルスピードにコミットして成長していこう」という旗振り役がいて現経営陣が残ってやっていったのか、3~4人が「フルスピードにしっかりコミットしてやっていこう」と皆を巻き込んでいったのか、どのような形だったのでしょうか?

友松:当時、私は旗振り役の1人ではあったと思いますが、会社で言うとかなり権限委譲されている状態でありました。M&Aされた時はまだみんな課長クラスあたりだった人間が殆ど今の主力の経営メンバーだったりします。かなり権限移譲があったり自由にやらせてもらえている環境っていうのがあって、そういう意味では「自分たちの会社感」が当時はあったかなと思います。

矢間:これも話せる範囲で、ですが当時の課長クラス=現経営陣の中で創業オーナーの方がお辞めになる際に「それならもうフルスピードはいいか」となったのかそんな事はなかったか、はいかがでしょうか?

友松:創業オーナーが辞めた当時の離職率が年率40%くらいありまして、100人居たら40人減るといった状況だったんです。後はアフィリエイトのトップの人間が同世代というか、中途入社して部長になるかならないかぐらいで今も残っていまして、創業オーナー離職前後3年程かけて私たちの先輩はほぼ全員辞めて居ないという状況でした。

矢間:当時、権限委譲をしっかりされていて多分30代前半や20代後半位の方たちがフルスピードという会社にコミットして、上場後の成長も作って来られて今があるという事ですね

友松:そういうことですね。そのあたりは中々珍しいと言えますね。結構空中分解などしそうな印象を持ちますが、皆さんがフルスピードという会社にコミットするという事に対して外部から「その求心力を保ち続けているのはすごい事ですね」と手前味噌ですが、言われます(笑)。

ミッション・ビジョン・バリューなどを   「社員全員」に浸透させた異例の施策

矢間:ちょっと切り口を変えまして、「創業者の方が抜けた後で、若手がフルスピードを育ててきた」というお話の中で、「新しくミッション・ビジョン・バリューを作って会社に浸透させていった」というお話がありました。

会社を上場させ成長させるには、ミッション・ビジョン・バリューはすごく重要で、それをどれだけ経営陣から最前線の社員にまで浸透させていけるかが分かれ道になりますが、フルスピードさんの中ではどのようにミッション・ビジョン・バリューを作り直して、どんな風に社員に浸透させてきたのかをお教え頂きたいです。

友松:ミッション・ビジョン・バリュー自体は、強引にわざわざ作るべきものでもないというふうに個人的には思ってました。ただ、弊社と同じようなネット広告代理店は世の中に何千社・個人事業主の方を含めたら1万社以上あるんです。その中で「なんでこの会社じゃないといけないのか」と、お客様もそうですが従業員の方も「なぜこの会社で働くのか」という理由が必要だなと思いました。それがないとフルスピードという会社自体の存在意義みたいなのがなくなってしまうので、そういうタイミングでミッション・ビジョン・バリューをフルスピードとして作り直しました。
弊社の場合は作り方が特殊で、経営陣が作って落とし込むというよりは合宿を何回もやって一般従業員にも、当時で言うと250人ぐらいが一つの会議室に集まって丸一日かけてディスカッションをするとか、結構巻き込み型といった形ですね。

矢間:相当な巻き込み型ですね(笑)

友松:そうですね、費用も結構かかります。さすがに全員ではなく、経営陣や部長クラスが泊まりでそれ以外の社員は朝から夕方まで、といった形で。従業員の方が普段思っていることだったり、ちょっと恥ずかしい感じですが夢とか希望を話すという場作りを結構やっていって、その中で共通する要素をピックアップしてアップしていって、最終的にミッション・ビジョン・バリューに落とし込むという作業を、若手でプロジェクトチームを作ってやっていったので特殊といえば特殊ですね。その当時いた社員からすると「自分が語ったことがミッション・ビジョン・バリューの中入り込んでいる」ということで、割と自分事として捉えやすいように作り込んだという部分があります。

矢間:なるほど。我々も様々なクライアント様からお話を伺いますが、200人規模でディスカッションをするという事はあまり聞かないです。

友松:200人を10人程度に分けて、10人と10人の中でまた5人ずつ混ぜて、とやっていきます。私も当時資格を取りましたのでファシリテーションは出来るのですが、日産や野村証券、リクルートなどの人事コンサルをやっている会社さんがありまして、そこに企画をお願いしてプロの講師にファシリテーションを最初にお願いしていました。
情熱さんでもそうだと思いますが外部の方がずっとやってしまうと、その会社に定着していかないという部分もあるので、途中で抜けて頂くというスタンスです。社内講師が育ったら抜けて頂くという形で、今は社内講師だけでやっています。

矢間:おっしゃる通り、自分たちの発言がミッション・ビジョン・バリューの言葉の節々に反映されているという事を感じるか・当事者意識を持てるか持てないかに大きく影響していきますね。経営陣が決めて、共有されるのとは大分違う形になっていくことでしょうね。

友松:そうですね。ただ、結局人の入れ替えがありますので、当時作ったメンバーが退職してまた新しいメンバーが入って、となると誰かが作ったものを入社時に知るという事になります。そこは一般的かもしれませんが評価制度の中に組み込んだり、研修の中にビジョン・ビジョン・バリューの落とし込みのところを組み込んだりしています。

矢間:ミッション・ビジョン・バリューが評価制度にも入っているとの事ですが、その部分は評価の何割を占めていますでしょうか?

友松:事業や基礎的な行動にミッション・ビジョン・バリューが紐づいてるので一概に何%というのは難しいんですが、単純にそのバリューに紐づいた定性評価という部分で言うと、社員のジョブグレードが低いランクの人ほど比率が高くて20%程度、ランクが高い人は10%程度ですね。

人事トップから経営者へ。今考える組織開発のあるべき姿

矢間:正直申し上げますと、友松さんように人事のトップをやってきた人が社長になる事は珍しいと思いますが、友松さんが今経営者として、人事のトップの人に常に求めているものは何ですか?

友松:そうですね、基本的には事業開発と組織開発っていうのは両輪だと思っています。ちょっと批判になってしまうのですが、どうしても人事のキャリアで途中で止まってしまう人というのは、「組織開発はすごく興味があるけど、事業開発には興味ありません。私の仕事ではありません」という話になるケースが多いです。この両輪は結構結びつきが強いので、やはり事業開発を自分でやるとなると中々コーポレート側では難しいんですが「事業開発がある」というところと「事業開発と組織開発が連動している」という部分を、例えば人事制度や評価制度を作るに当たっても重要になってきますので、そこは結構意識し、人事に求めますね。

矢間:「事業を作っていく」事と「事業側と組織側、両方大事」という事は考えてみれば当たり前な部分になるとは思うのですが、そこの繋がりをしっかりお伝えしていくという事ですね

友松:そうですね。人事をやっていると、やはり事業開発側の視点を忘れがちになってしまいます。何のための制度なのかというと、やはり会社とは事業があっての組織ですし組織があっての事業というところがあります。私はフルスピードもそうですが他のグループ会社の経営にも携わらせてもらっていますけど、やはり事業内容が違うと組織文化も全然違うので密接に関りがあります。「この事業を作っていくにはこういう組織文化がいい」や「この組織文化があるからこの事業の強みになる」みたいな部分は、意識する必要があるかなと思っています。

まとめ
いかがでしたか?
組織文化の浸透がスケールを加速させる要素になるのは間違いなさそうですね!組織文化の浸透には管理職やリーダ陣の輩出も重要になります。
組織を変えるリーダーの育成のヒントを動画にまとめていますのでぜひ!

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