性自認のせいで着たい服が着られなくなってしまった話(FtM)
私の肉体の性別は女性、性自認は男性です。障害としてはまだ診断されておらず、ホルモン治療も手術もしていません。
現在、日常生活で一番不都合を感じて苦痛でいるのは、服装の問題です。
というのも、私の着たい服はレディースもの。体が女で服装も女、でも性自認は男というわかりづらい存在なのです。
女性扱いが苦痛でレディースものが着られなくなった
自分に似合うレディースファッションを心がけ始めてから、知人に「女の子はいいわね」「女になったね」と声をかけられるようになりました。
それが嬉しくもなんともありません。それどころか苦痛なのです。
女性の体でレディース服を着ると見た目上「普通の女性」になってしまい、女性扱いを受けます。
「いや、私は女じゃないんだけど」
言いたくても言えないまま、苦痛だけが大きくなり、ついには女性らしい服装を控えてパンツスタイル中心になりました。(それでもレディースものなんですが)
誰にも何も言われないならスカートが履きたい
「女だ」と言われないなら、女扱いを受けないなら、スカートが履きたいし女性らしいパンプスも履きたいです。メイクをしてもいいかもしれない。
できるだけボーイッシュな服装をと思ってスカートを履かなくなりましたが、本当はスカートが履きたい!
バスの中でスカート姿の女性や、その他フェミニンな服装の女性を見ると、「いいなぁ〜、私もああいう格好したいよ〜」と羨ましくてたまらなくなります。
そしてそのたびに、そういう服装を着たときの女扱いの苦痛を思い出すのです。
誰にも何も言われないならレディースファッションを楽しみたい。でも、「普通の女」と扱われるのが耐えられない。
私の性自認は男性なのです。
「男」として女装をしたい
「違和感のない女になってしまうのがイヤ」だなんて、MtFの人たちからしたら贅沢な悩みなのかもしれませんね。
でも、私は「女」と見られたくない。「女装している男性」と扱われたいのです。
男性ホルモンを打って何年かしてからのほうが、自分は女装を楽しめるのではないかという気がします。
似合わないかもしれないし、受け入れがたい外見になるのかもしれない。でも、「女」として違和感のない見た目になってしまうより、そちらのほうが正しい気がします。
「女装男子」になりたい。そう、「男」になりたい。服装が何であっても「男」でいたい。
昔から女装に抵抗がなかった
FtMの定番エピソード「スカートが嫌いだった」「女子の制服が苦痛だった」「成人式の振袖がイヤだった」は、どれも私には共感できません。
スカートがイヤだった時期はありますが、そこまで苦痛でもありませんでした。私服や式典で自分から進んでスカートを着たことも何度かあります。
成人式に至っては「絶対に振袖!」と決めていました。事前に写真も撮りましたし、本番も振袖で行って、念願が叶ってとても幸せでした。自毛をアップにして飾りたくて髪を伸ばしていたほどです。
男装をしたいと思ったこともあり、大学の入学式や卒業式はパンツスーツにネクタイを締めました。就職活動でもパンツスーツでしたし、制服のある会社でもパンツスーツを選んでいました。
ですが会社員時代に女装に目覚めてからは、女装のほうが楽しくて女装中心でした。
女装の魅力は、何と言っても多彩なシルエット。男性の服はシルエットがワンパターンで面白みが足りなすぎます。それに対して女性は「職場の華」と言われるほど多様なデザインが使われています。
(「職場の華」には「男ばかりの職場の中に女性がいる」という意味合いもあるのでしょうが、私は服装のシルエットが多彩なことも華を添える一因だと思っています)
セクシャルマイノリティをカミングアウトするからこそ女装で行けない
最近になって、セクシャルマイノリティをカミングアウトできる場が増えました。「性自認は男です」と言えるようになってきて、とても嬉しいです。
ですが、そんな場所に行くからこそ、気合の入った女装ができなくなってしまいました。
自分の本当に着たい服はもっと女性らしい服装なのに、「性自認は男」を信じてもらいたいがために女性らしさを控えてしまいます。
私の着たい服はレディースもので、メンズファッションを頑張りたくはないのに、それでは「普通の女」になってしまい、「性自認は男」を理解してもらいづらいのです。
私は自分らしい生き方がしたいですし、おしゃれをするなら女性らしさの強いレディースファッションを着たいのです。でも、そのために女性扱いは受けたくないのです。
自分らしくいられる場を探したい
女装をしながら男と認めてもらえる場を探したいです。女性にしか見えない肉体のままでは無理なのかもしれません。
いえ、ホルモン治療と性別適合手術を受けたとしても無理なのかも。だって「本物の男」にはなれませんからね……。
自分が素の自分で過ごせる場を、いつか見つけたいです。
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