見出し画像

こぎつねくんとめうさぎさん

朝、こぎつねくんが目を覚ますと、空には太陽が昇っていました。じりじりとした陽射しがこぎつねくんの目に届きます。

「今日も晴れか。また暑いんだろうなあ」

こぎつねくんはうんざり顔で寝床から這い出しました。

川を目指して歩いていると、道端にきれいな花が揺れています。

「のん気に花なんか咲かせやがって。こっちは腹が減ってるんだぞ」

こぎつねくんは花を睨んでため息をつくと、重い足取りで川に向かいました。

川は寝床から歩いて数分のところですが、こぎつねくんは何時間も歩いたかのように疲れていました。

川を覗くと魚たちが泳いでいます。空腹だからと魚をとろうとすると、すいすい逃げられてしまいました。

「すばしっこい魚どもめ!」

こぎつねくんは悪態をついて、魚とりを諦めました。

  *

同じ日の朝、めうさぎさんが目を覚ますと、空にはやはり太陽が昇っていました。さんさんと輝く日差しがめうさぎさんの目に届きます。

「まぁ、今日もいい天気! ぽかぽか暖かくなりそうだわ!」

めうさぎさんはウキウキしながら寝床から飛び降りました。

朝ごはんのハコベを食べようと道を歩いていると、道端にきれいな花が揺れています。

「いつ見てもきれいなお花! 明日も咲いていてちょうだいね!」

めうさぎさんは花に微笑み、スキップをしながら歩いていきました。

ハコベの匂いにつられて行くと、川辺に出ました。

「あら、いつの間に川まで来たのかしら! さっき家を出たばかりなのに!」

めうさぎさんが興味深そうに川を覗くと、魚たちが元気そうに泳いでいました。めうさぎさんは魚に触ってみたくなって水に手を入れましたが、魚はすいすい逃げていき、全然触れられません。

「元気なお魚さんたちだわ! これなら誰にもとられずに生きていけるわね!」

嬉しくなっためうさぎさんは、川辺にハコベを見つけて食べ始めました。それがあんまり美味しいので、めうさぎさんは浮かれて歌い始めました。

  *

こぎつねくんがお腹を空かせて川辺に寝転んでいると、どこかから歌声が聞こえます。

「おれの気も知らないで歌なんか歌いやがって!」

腹を立てたこぎつねくんは、歌声の元へ歩いていきました。

そこにはご機嫌なめうさぎさんがいました。

「おい」

こぎつねくんが不機嫌そうに声をかけると、めうさぎさんはきょとんとして歌うのをやめました。

「あら、ごめんなさい。うるさかったかしら」

「なんだってんだ、こんな暑苦しい晴れの日に!」

こぎつねくんが怒鳴ると、めうさぎさんは目をぱちくりさせます。

「ぽかぽかの晴れの日に、歌っちゃいけないのかしら」

「おれは腹が減ってイライラしてるんだぞ!」

「あら、そうなの? わたしはお腹いっぱいで幸せだったわ」

二人の言うことは正反対。怒ってばかりのこぎつねくんに対し、めうさぎさんはニコニコしています。

そんなめうさぎさんを見ていて、こぎつねくんは頭にきて仕方がありませんでした。

「お前なんか、食べられて死んじゃえ!」

こぎつねくんが吐き捨てると、めうさぎさんは目を丸くしました。

「あらあら、そんなこと言っちゃだめよ。あなたがいい一日を過ごせますように!」

立ち去ろうとしているこぎつねくんに、めうさぎさんは優しく微笑みました。

  *

その夜、こぎつねくんは沈みきった表情で寝床に潜り込みました。

「今日も最悪な一日だった。明日が来なければいいのに」

同じ頃、めうさぎさんは幸せそうに寝床に入り、空を見上げて微笑みました。

「今日も一日楽しかった。明日もいい日になるわ!」

----------

画像:写真AC「雨の渓谷」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?