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希求の行き先

有給休暇で、善光寺詣りをした。
「牛に牽かれて善光寺詣り」の、あの善光寺だ。

信州自体は両親が気に入っているのでしばしば蓼科や松本を訪れていたが、長野市は県庁所在地でありながら意外と意外と行った記憶がない。高速道路で通り過ぎてしまうだけだった。
8月中に有給休暇をいくらか消費してしまいたくて、どこか涼しいところに行きたいと思い立ち飛行機を予約した。大阪から、夏の間だけ松本行きの便が運航している。
実際に到着してみると期待したような涼しさはなく、大阪の刺すような暑さがほんのり柔らかい程度だった。最高気温は37℃で、大阪と変わらない。海に近い大阪と違って湿度がやや低く木陰は若干涼しく感じるものの、午前中から歩き回って、汗をかいては乾いてまた汗をかくことを繰り返した。

善光寺は有名なメガ寺院であるものの、そのいわれやそもそも宗派もよく知らなかった。今回宝物殿の「善光寺縁起」の絵巻を見て初めてその開創を知ったのだが、曰く、インドに端を発する一光三尊如来阿弥陀如来が百済を経て日本に伝来し、難波に辿り着いたがアンチ仏教派の物部氏によって堀江に打ち捨てられ、その後救い出された如来像を信濃国司の従者であった本田善光がお告げに従い信濃に連れ帰り、祀ったのが起源だという。このため、日本に伝来した最古の仏像ともいわれ、秘仏として今も大切に守られ、7年に一度だけご開帳される。直近のご開帳は、2022年だった。宗派は単立で、ただし天台宗と深く関わる。

善光寺山門。扁額には鳩文字が使われている。
本堂。参拝すると否応なしに地下の戒壇巡りをさせられた。
大賀蓮。盛りを過ぎている。

修学旅行生のグループや老若男女の観光客の間を縫うようにして境内を巡り仲見世を通り、参拝を終えた。
ちょうど昼時だったので、由緒ありげな蕎麦屋に入った。信州の蕎麦は、大阪よりもずいぶん盛りが多い気がする。

日本酒でいう大吟醸みたいに蕎麦を磨いた蕎麦粉で打つ更科そば。

向かいには、七味唐辛子で有名な八幡屋礒五郎 本店がある。せっかくなので入ってみると、土産物屋では見かけないような種類の商品があり、「カスタムブレンド」のコーナーでは自分好みの七味を作ってくれるという。せっかくなので、作ってもらうことにした。10分ほど並んで、順番が来た。

パレットのようなスパイスの数々。
柚子や陳皮などの柑橘をベースに、香りの良い山椒を加えてもらった。

ブレンドしているときから、爽やかないい香りがする。これまで、あと少し物足りないと思っていた七味が、自分好みに仕上がった。また、このレシピはお店で保存され、レシピNo.で再オーダーもできるとか。面白い体験だった。

長野駅前から善光寺行きはバスに乗ったが、帰りはぷらぷら歩くことにした。行きは上り坂だが、帰りは下り坂だ。通りかかったテラスでビールを飲んだり、カフェでクリームソーダに見惚れたりしながら長野駅に戻り、昨日目をつけていたBarコーナーで日本酒利酒セットを楽しんだ。

信州の地酒三種と、チーズも追加。
さらに信州の白樺GINのソーダ割りも追加。木の香りが爽やか。

観光地に行くとついあれもこれも見なければと躍起になってしまうが、こんなふうに不真面目な観光もたまには良い。「何もしない贅沢」みたいなものを、最近学びつつある。
このところ忙し過ぎて体調を崩したりしていたが、良いリフレッシュになった。

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