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ナオとマリアの物語…


彌生です…


今回は私のドイツ在住の息子のナオについて書いて行きたいと思います…


息子はナオといいますが、ナオは不思議な事に高校時代から彼女は全員「外人」か「ハーフ」でした、日本女性に全く興味が無く、アイドルに夢中になった事も無い、親の私からしたら「変わったヤツだなぁ〜〜」だったんですが…


中学からはギターにハマりそれもアコースティック系では無くて「ヘビメタ」ですヘビメタ野郎でした、毎日毎日、お小遣いで買った古いエレキギターをギュインギュインと大音量で弾いていて何度…


五月蝿い💢💢💢💢💢と叫んだ事か…


大学を出てからは一人暮らしを川口でしていて、国連の「UNHCR」で働き、ますます「海外志向」が強くなって行ったと思います…


中学の時から英語だけは素晴らしい成績で、てかそれしか優秀ではなくて笑、思えば外人の女性を口説く為に頑張っていたのかもしれないですね…


ある日、トルコ人のベッキーと付き合いだし、彼女は中学の英語の教師で3歳年上で、かなりなお嬢様らしく、トルコ人には珍しく「イスラム教徒」では無くて「無宗教」の一家でベッキーは中学からイギリスの学校の寮で育ち、そのままイギリスの大学を出ているので言語も英語という、トルコ人には珍しい女性でした…


かなりハッキリ言う女性で「いい?ナオ、外国の女性とちゃんと付き合いたいなら、先ず政治経済に興味を持ちなさい!後は読書しなさい!本はあなたに違う世界を教えてくれるのよ」という素晴らしい大人の女性で、彼女のおかげで息子は「読書」が趣味になります、凄いですよね、母親がいくら「本を読め」と小学校から口を酸っぱくして言ってもスルーなのに、彼女の一言で変わるとは、男は本当に彼女によって変わる、また逆もあります、子供にとって「親のアドバイス」なんか大した効力は無いのがわかりますね….




ベッキーとはタイの島に行ったり息子は本気でしたが、彼女は大人だし、若い息子を見限ったのでしょうね、彼女の方から別れを告げられます…





息子は友人も外国人ばかり、この頃は毎晩遊んでいましたね、まぁ同居していた訳ではないから詳しくは分かりません…


「なんでそんなに外人が好きなの?」と質問すると「日本人みたいに何を考えているかわからない人間と違って、あっちの人間て心の中を曝け出して話すから分かりやすい、日本の侘び寂びは俺には向いていない」と言っていましたね、だから「ぶりっ子」の日本女性の何が良いのかわからないと…なるほどでしたね…



さて、ある日の事、夫が中野でナオに会ってお茶しているとナオの携帯が鳴りナオが英語で話していると、暫くしてかなりガタイの良い金髪の女の子がやって来て「渋谷から来た」と言っていたそうで、夫は「わざわざ渋谷から来るなんてよっぽど好きなんだな」と思ったそうです…



暫くして私はナオと電話で話していたら「そういえば、中野までわざわざ来たとかいう女の子と付き合っているの?」と聞いたら…


 
いや?彼女はアイリッシュバーで知り合った子で、彼女は子供の時に「小児がん」になって15歳まで丸坊主だった子なんだよ、なんだか付き合うと、悲しい事になりそうだから、付き合わないよ」😳と言いました…


「小児がん?それは大変だったね、今は大丈夫なの?」「今は元気だけどまだ19歳だし、真剣に付き合う気は無いね」と言っていたので、ホッとしました😮‍💨



冷たい人間かもしれないですが、やはりいつ「再発」するか分からない女性と付き合って、またまた病気では、かなりな「重荷」になると思ったのです、然もまだ19歳じゃあナオなんかよりもっと良い男いるでしょうと私は思いました…



しかし、やはりナオは彼女の推しに負けて付き合い出してしまい、川口のマンションで同棲を始めます…



全くアホ息子💢と思いましたが、会ってみると、とても優しくて良い子でおまけに美人で身長は177センチとモデル並のスタイルで「なんでナオなんかを好きなんだろう?」と不思議でしたね…名前はマリアと言いました…



マリアはワーキングホリディで日本にやって来ていたのですが私はそのまま日本に住み着くと思っていましたが、そうでは無くて「いずれはドイツに帰る」と言っていたので、その時は2人のお別れの時なんだと勝手に思っていましたが、海外志向の強い息子は「一緒にドイツに行く」と言い出しました…



はぁ?アンタ、何甘っちょろい事を言ってるの?ドイツに行く?ドイツ語も出来ないくせに、それに、もしマリアが再発したらどうする訳?と私は反対しました。夫は昔、自分もアフリカだ中近東だヨーロッパだに行っているので「好きにすれば良い」のスタンスでしたが、私は息子の海外志向は受け入れられなくて
私も昔ヨーロッパに行って「日本くらい良い国は無い」と思っているのでそれもわからない息子に腹が立ちました…



それにウォシュレットも無い国じゃない?などとアホみたいな事を言ったのを覚えています。ウォシュレットの無い国なんて我慢出来ません



しかし、息子の意志は固く、もう何を言っても無駄なんだなとわかりました…




マリアは私の家に来てドイツ料理を2人で作ってもてなし




マリアの両親も日本に遊びに来て、外堀から埋める作戦の様でしたね、マリアは4人兄妹の末っ子で、ママはかなりな肝っ玉母さんで、夫は2度目の人で、マリアとは血は繋がっていません…


マリアの母は髪は黒いし瞳も黒くマリアに全く似ていません、マリアは父親にそっくりで、写真を見せて貰ったら、金髪、青い目でスラッとしていて素敵なイケオジでしたねアウトドアのビジネスをしていて大成功しているみたいでした、とりあえず息子はドイツへ行ったらマリアの家に住み仕事を探してから他の街に住む計画の様でした…


私が不思議だなぁ〜〜と思ったのは…


 


神田の「鬼金棒」という有名なラーメン屋に皆んなで行った時、息子はただラーメンを啜っているだけなんですよ、私も普通に啜っていて、ふと、マリアを観ると、頬杖ついて息子をウットリと眺めているんです…私から観ると「あぁ息子がラーメンを食べてるな」程度の気持ちだったんですが、マリアの青いビー玉みたいな瞳には私とは違う息子が見えていたのでしょう「愛って凄いなぁ」と思いました私は生まれてから一回もそんな事をした事はないし「お国柄」なのかなぁ〜とかも思いましたね…




アメリカ人のカメラマンの友人が撮ってくれた「別れの写真」息子は「いいか、外国へ行ったら誰も信用するな!」と忠告を受けた様です、彼も外人なのにおかしな忠告ですが、真実だと思います…





そして、息子は5年前にドイツへ✈️飛び立ちました…



娘に「オカンもっと泣くかと思った」と言われましたが、泣いたって仕方ないし、息子の人生は息子が生きて行く訳だし、私は息子の人生の「脇役」です、そんな事は分かりきっています。息子も大人なのだから一人で何とかやるのが男でしょと思っていました…



やがて息子はドイツの「ウーダ」という街に住みつきます、日本では「ウーダ」なんて街は誰も知らないでしょうね、私も初耳です、やがてビザが切れるので息子はマリアの実父の会社で働きます、実父のおかげでビザも取れて、然も実父は息子を気に入り、かなり可愛がってくれました。息子は「あんな働き者の凄い人に初めて会った、オトンとはまるで違う、オカンの気持ちが少し分かったよ」そう言いました、私が主人公の人生は夫との別れが近づいていました…




ドイツの雪景色、素晴らしいですね、美しいと思います…




ドイツのクリスマスマーケット、日本とは全く違う、本物のクリスマス、一度は訪れたいと思っています…




かわいい絵皿とゴンドラの上から観た雪混じりのクリスマスマーケット、日本のクリスマスなんてオモチャですよね
ドイツに帰りたかったマリアの気持ちも分かります…




マリアはテリアの「ティナ」という名前の犬を飼っていて、ティナは息子に物凄く懐いて息子は犬を飼うのは初めてで「犬ってこんなにかわいいんだな」と言っていました、私は昔、物凄く可愛がっていたやはりテリアのペットが死んでしまった時に「もう悲しい思いはしたくない」と決意して、子供たちにはペットは買い与えなかったんです、少し後悔しています。



やがて2人は「ベルリン」に引っ越します…





引っ越しする車の窓から外を見るティナ、良い写真ですね、2人はドイツのいろいろな都市をみて周り「ベルリン」が一番気に入り、ベルリンで暮らす事に決めた様でした。


しかし、ドイツは「ドイツ語」を話さないといけない国です、息子は「ジャパニーズレストラン」の厨房で働きながら「ドイツ語」の学校に行き、マリアもバイトしながら彼女の父親の影響なのか「ビジネス」を学びに大学に行き出しました、ドイツの素晴らしい所は「学費」「医療費」みんな無料な所ですね、確かに税金は高いですが、日本とは違い「手厚い」見返りがある、そして日本の交通機関の様に一区間何円ではなくて、毎月お給料から一定のお金が引かれて、何処へ行くのも「無料」なんですね


余談ですが、息子は「ドイツの歯医者は優秀だ」と言っていました、「少しも痛くないし、銀歯も全部白いセラミックに替えてくれた」と言っていました、私がかかりつけの歯科医にその話しをしたら、そもそも「銀歯」って世界で日本だけなんだそうですね、外人に銀歯はいないそうです
良いですね、無料で真っ白な歯にしてくれるなんて


日本は同じ「敗戦国」なのに、全く真逆で「増税増税」ばかりで、そのくせ国民に「見返り」は無いという、ドイツから観たら「酷い」国ですよね、少しは見習って欲しいですし、国会議員の女性たちがパリのエッフェル塔でポーズするなら「ベルリンの壁を観てこい」ですよね…


息子の働いていた「ジャパニーズレストラン」はオーナーがタイ人で日本料理を全くわかっていなくて、仕事はかなりキツかった様です、息子はせっせと訳のわからない「海苔巻き」を作り、実に週6働きながらドイツ語を学んでいました…



今ではドイツ語の本も読める位のレベルになりました、しかしベルリンは国際都市なので、殆どの人が「英語」を喋れるそうです…



2人はロックコンサートで「ローリングストーンズ」を生で聴くという贅沢を味わい、ロンドンやニューヨークにも
遊びに行きました、本当に若い人生を謳歌しているみたいでしたね




どんどん綺麗になって行くマリア…


息子はよくマリアを「You,r  very very lucky girl」と言っていました。


私は最初、写真で観た時「この子、唇ヒアルロン酸入れてない?」とか思いましたが本当に誤解で「天然」の唇でした…笑



 
有名なメルケル元首相の演説…


遂にパンデミックがヨーロッパを襲います、2人はたまたまパリにいて「急がないとドイツの空港」が閉鎖される!!!!と騒いでいるので大急ぎで空港へ行き、最後の飛行機に間に合いました…



やがて翌年、息子はドイツから帰国しました、しかしマリアはいません「?あれ?マリアは?」「あぁ、学校が忙しいんだよ」と言っていましたが、あれだけウットリと息子を眺めていて2人でひとつみたいなカップルが変なの、とは思いました、そして母はもうかなり認知症が進み、八王子のホームに入っていたのですが「わかるかな?」と思い連れていったら、以外や「ナオ〜〜」と飛びついて来ました、やはりわかるんですね、母はとにかく息子が可愛くて娘を連れて行っても「?」なのですが、息子は分かるんです…





固く息子の手を握ったら母、本当にかわいいから忘れないんですね、時々、私の事も忘れるのに….



母は「ナオ!ナオ!マリアはどうしたの?」「忙しいから来れないんだよ」「孫は孫はまだなのかい?」「マリアはまだ若いから子供はいらないってさ」「そうなのかい」母はガッカリしていました、私は2人のやり取りを観ていて、息子の表情が曇ったのを見逃しませんでした…

 

何か変だ…そう思いました…



やがて息子はドイツに帰って行きました…



私と息子はだいたい朝方の4時にLINE電話をするんですがある時に息子が…



「オカン、マリアが子宮ガンになってしまった「と言いました…「えぇ!!!!」「あの時、おばあちゃんに子供の事を言われて辛かったよ」「そりゃそうだけど、手術するの?」「いや、抗がん剤で治療している」と言われて…



怖れていた事が遂に起きてしまった…



それからは明け方に頻繁に電話をする様になりました…



私の認識では「抗がん剤」って髪が抜け落ちるイメージだったんですが、マリアの髪はフサフサのままで「いろいろな抗がん剤があるんだなぁ」と思っていました、そして以外やマリアの実家も皆さん明るく振る舞っていた様です、もう慣れたんでしょうか?



しかし、やはり手術する事になり…ドクターは子宮は全摘しないで悪い部分だけ切除しましょうという事になり、手術しました…



この頃からマリアは息子がハグしようとすると、息子の腕をスルッと抜けて自分の部屋に籠る様になり、おまけにコロナだから、2人共に仕事は休みで、アパートの部屋で2人っきりの生活になり、ラブラブどころか、無言で生活する息苦しさが襲いました…



ドイツは仕事が休みでも、給料は70%は出るのでそこら辺も日本とは大違いですね…



マリアはこの頃から「もう別れましょう」と言い出しました、「私がナオをドイツへ自己愛❤️だけで連れて来てしてまった」と後悔したのでしょうか?息子は戸惑いました…日本へ帰るなんて擦りもしない程考えてもいなかったのです…



子宮癌は摘出しましたが、マリアの体調は良くなかった様です、ベッドに伏せる日が続き、外はコロナです、ヨーロッパの人々は基本マスクはしないのですが、皆んなマスクをして、私たち日本人より、マスクの生活は「変な不自由」を感じた様ですね…



そんな中での2人の部屋に籠った生活は2人の心にポッカリと穴が空く様になって行きました…



ある日、遂にマリアは「白血病」になってしまいました…



しかし、息子は心は離れているくせに、不思議な「意地」みたいな感情が湧いて来ていて…



病気の彼女を捨てた男にはなりたくない!!!!そんな意地が息子を支配していました…



マリアは今度も抗がん剤治療の為に、週末の土日に入院して治療を受ける日常になりました…


しかし、私はなんとなく「違和感」を感じました、なんというかドラマの「世界の中心で愛を叫ぶ」を観ると、ヒロインは白血病になり「無菌室」みたいな部屋に入院してますよね?「無菌室に入院しないで大丈夫なの?」と質問したら「いや?今は週末だけ入院だけの治療だけど?」と息子は言うので「ドラマや小説と現実は違うのかな?」と思っていました…





私は映画よりはこのドラマの方が好きで、物凄く丁寧に「初恋」を描いていましたよね…




綾瀬はるか演じるヒロインは「白血病」になり「無菌室」に入院…




髪も抜け落ちてしまい…




この無菌室のビニール越しのキスシーンは話題になりましたよね…





やがて空港で倒れて主人公は「誰か誰か助けてください!!!!」と叫ぶ、私の中の「白血病」ってこんなイメージで、マリアみたいに土日入院て何か「違う」と思っていました…



この頃は本当に頻繁に明け方に息子とLINE電話していました「親離れ子離れしていない」と言われるかもしれませんが、息子もドイツに心を許せる友達もいなく、母親の私には「愚痴」を言いやすかったのでしょう…



ある日、2人が飼っていたティナがいきなり亡くなります




「子は鎹」と言いますが、正に鎹だったティナの死は2人の気持ちをますます離して行ってしまいました…息子にしても初めて愛したペットとはいえない「家族」です、かなりショックでした。ティナはウーダーのマリアの実家の庭に埋葬しました。



ある日、いきなり電話があり「大変だ!!!病院のマリアから電話があって、発作が急に起こりいきなりぶっ倒れて顎が外れてしまったと言うから、じゃあ、着替えを持っていくからと言ったら急に電話を切られた!!!」「ハァ?」「だから入院している病院へ電話したら、そんな女性は入院していませんと言われた」「ハァ?」「だからベルリンに同じ系列の病院が3件あるから、全部電話したら、やっぱり、いませんなんだ」「それは個人情報だからじゃないの?」「いや、違うと思うよ…」



オカン、マリアは浮気をしているんだ…



ハァ〜〜〜?????なんじゃそりゃ😳



なんでも、息子がふと、マリアの携帯を見てしまったら、ナント!!!!❤️❤️❤️❤️❤️マークだらけのメールを違う男としていて「これはなんだ?」と問い詰めたら「ただの職場の友達なのよ、それより何故私のメール見たの?」と大喧嘩になったそうで…



「じゃあマリアはその男と一緒なのかな?でも病院で倒れて顎が外れたのはなんなんだ?本当に病院に入院しているんだろうか?」「わからない、謎が多すぎるよ」と息子も困惑していましたが、私も困惑しましたね、あんなに息子をウットリ見つめていたマリアはもういない訳ですね…



やがて数日してマリアは無言で帰って来て、息子も無言で応えて、またまた外出出来ないコロナの中、2人は口もきかなくなり、沈黙の日々になり、マリアは自分の部屋の鍵をかけて出て来なくなりました….



息子は息子で、もうマリアを見切り浮気を始めて、それがマリアの怒り💢に火を着けました…

 

マリアは私にLINEして来て…


「彌生さん、私はナオの為に全てを犠牲にして生きて来たのに、ナオには他にオンナがいる、私は我慢できません」と書いてありました…私もまさか2人がこんな展開になるとは思っていなかったから、なんて答えれば良いのかわかりませんでした…



息子はもう絶対に別れる気持ちになり、私の母はマリアは息子の嫁になると思い込み凄いルビーの指輪をプレゼントしたのですが「あれはおばあちゃんの物だし返して欲しい」と言ったらマリアは「あれはプレゼントだから絶対に返さない」と大喧嘩になり、あれ程愛し合った2人が底辺の諍いをしています…



マリアが友達の家に遊びに行った時、マリアの部屋の鍵が偶然掛かっていなくて、息子はソッと入ってみたら、息子のお気に入りのサングラスがメチャクチャに壊されてゴミ箱に捨てられていて、息子は「そんなに俺が憎いのか」と思ったそうです、そしてマリアのジャケットのポケットを探ると約30万くらいの現金が入っていて「そうか、指輪は売ったんだな」と分かったそうです、マリアは「あれは実家に置いてある」と言っていたけど、全部嘘だったんだなとかなり怒り💢心頭になり…最後の大喧嘩になり…


マリアは「とにかく出てって!!!!顔も見たくない!!!!」と叫んだそうです…「お前が出て行け」「いやアンタが出て行け」となり、息子が出て行く事になりました…

 

しかし、ドイツはドイツ語の世界なので、息子はかなりドイツ語は流暢にはなりましたが、いざアパートを探してみると、大家と話すと「あなたのドイツ語はパーフェクトじゃないから貸せない」と何処も断られてしまい、息子は途方に暮れて…



「オカン、下手したら俺はホームレスになるかもしれない」と超弱気な発言をするから「もう日本に戻って来たら?」「いや、絶対に日本には帰らない」とキッパリと言い切り、そんなにドイツが良いのか?と私は不思議でした… 


息子も「意地」もあったのでしょう、あれだけの決意をして日本から出たのです、日本に帰ったら「負け」だと思ったのかもしれないし、なによりドイツは住みやすい国だったのが大きいです、日本にはあまりドイツの情報は入って来ませんが、本当に医療や学費無償化、子育て支援、物価の安さ、全てが手厚くて、然も人間関係も「干渉」は少なく、日本みたいなベタベタした付き合いが苦手な息子には合っていた様です。


それから息子は必死に家探しを始めましたがどこもかしこも断られ、あちらは日本みたいに不動産屋が仲介は無くて、殆どはネットで決まるんですが「ここにしよう」と申し込んでも、ドイツ人にサッと取られてしまうの繰り返しで
いよいよホームレスまっしぐらの危機に陥ります。


その頃はマリアのいる家にも帰りたくないので、公園のベンチで寝ていたりして、本当のホームレスになりつつありました。


マリアはマリアでマリファナを吸う様な友達が増えて行ってますます息子をウンザリさせました。その頃もマリアは
「白血病」で抗がん剤治療をしている筈なのに髪はフサフサで息子は「このオンナ本当に白血病なのか?」と思ったそうです…


やがて息子はやっと部屋が決まりました、ルームシェアの部屋が空いていて、パートナーの男性はとても感じの良い人で時々遊びに来る彼女も感じの良い人で「ここなら大丈夫だろう」と思い、息子は荷物🧳を全部持ってマリアと完全に別れました…



やがて息子はドイツ語の試験にも受かり、同時通訳出来るくらいドイツ語も上達して、ジャパニーズレストランを辞めて、ベルリンの一流のデパートのあるブランドに職場を移しました、ギャラもかなり上がったようです。



息子は「俺にとってマリアはさげまんだったんだな」と染み染み言いました…



しかし、私はマリアには感謝もしています、彼女の言う様に「ナオに全て捧げた」は本当だし、確かにマリアは浮気した、でも息子も同じですし、それは責められないと思います。そして申し訳ないのですが、そんな重病の女性と暮らしたら、必ず悲しい思いをするに違いないと思っていたので、マリアとキッパリ別れてくれてホッとしました。



最近はグリーンカードも所得しました、これはドイツだけの永住権ではなくて、ヨーロッパ全体の永住権になるそうなので、ヨーロッパのどの国にも住めます、なかなか頑張った5年間だったんですね。



2024年3月、つまり今年の3月に私の母は遂に心不全で倒れました、息子は直ぐにドイツから駆けつけて母に会いに来ました、母はドクターが言うには肺にも水が溜まり、プールで溺れている状態だそうで呼吸器のマスクをして苦しそうでした、私はドクターから「どうしますか?延命治療をご希望ですか?」と聞かれ「いいえ、母はずっと昔から、私に万が一の事があっても延命治療をして管だらけにはしないでくれと言ってました」ドクターは暫く考え「これは70代〜80代の患者さんには言わないのですが、お母様はもう92歳です、例えば心肺停止になったら心臓マッサージをしますが、あれは肋骨が折れてしまうんです、また電気ショックでは胸に大火傷をしていまうんです、わかりました、なるべく眠る様に導いて行きます」と仰いました
私はホッとしました…


面会は2人しか出来ないので、息子と娘が面会にICUに入りましたが、娘は直ぐに出て来て「どうしたの?」と聞くと「だっておばあちゃん、ナオしか分からないから私は必要ないよ」そう言うので、代わりに私が入ったら、母はやはり息子がわかるらしく手を握って目を見開いていました私の事もわかった様です



その後、症状が少し安定したので息子はドイツに帰りましたが、22日にいきなり症状は悪化して私は一晩中母の手を握り「ナオが来るまで頑張って」と言い、LINE電話で息子に母の姿を見せて、息子も「頑張れ」と声かけしましたが明け方の4時過ぎに息を引き取りました…

 

一部始終観ていた息子はまたまた帰国すると主張しました


私は息子に旅費も大変だし、もう一回帰国しているし、来なくていいと言いましたが、飛んで来ました…


母の遺骨を拾い空を皆んなで眺めていたら…


俺、この前、街でマリアにバッタリ会ったよ、何の気持ちも湧かなかった、そして髪は抜けてスカーフを被っていたから白血病は本当だったんだな、でも病気は治ったそうだよ、めでたしめでたしさ…


あと、オカン、マリアのインスタやLINEは全部消してくれ、もう俺は一生マリアと関わる事は無いと思うから…


そう言いました、もはや息子にとってマリアは完全に過去形になったのでしょう…


永遠の愛なんて無いんだな、染み染みわかったよ、そう言うので私は「そうだね」と言いながらマリアのインスタを削除して、LINEもブロックしました…


本当に永遠の愛なんて幻、だが人間は一人では生きて行けない、息子はひとつ成長して未来に向かって歩きだし、私は自分の残りの人生は悔いなく生きようと思った…


息子とマリアの話しはとりあえず終わります…
2人は青春を5年間共に過ごし、少し成長した、2人は別れたけれど、また新しい物語りを作って行くのでしょう…


続きます…


#創作大賞2024 #エッセイ部門


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