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2023/3/2: まいにち だれかの ひとことを こころに。

私はそのころ太陽というものに生命を感じていた。

私はふりそそぐ陽射しの中に無数の光かがやく泡、

エーテルの波を見ることができたものだ。

私は青空と光を眺めるだけで、もう幸福であった。

麦畑を渡る風と光の香気の中で、私は至高の歓喜を感じていた。


雨の日は雨の一粒々々の中にも、

嵐の日は狂い叫ぶその音の中にも

私はなつかしい命を見つめることができた。

樹々の葉にも、鳥にも、虫にも、そしてあの流れる雲にも、

私は常に私の心と語り合う親しい命を感じつづけていた。

酒を飲まねばならぬ何の理由もなかったので、

私は酒を好まなかった。

ー坂口安吾「風と光と二十の私と」よりー


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