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マイケル・ジャクソン、 オレ様を黙らせる

マイケルにハマったムスメ 

ムスメには小さい時から、その時々で夢中になるものがありました。一点集中型というかそれ以外何も目に入らなくなるのは心配でしたが、好きなものを見つけられるのは強みだと思っていました。

小さい頃からディズニーのプリンセスと恐竜が好きという変わったムスメが、マイケル・ジャクソンにハマったのは小六の時でした。マイケルはとっくに亡くなっていましたが、ターゲットが等身大の人間になったことは成長に思えました。

きっかけは、私が見せたマイケルのミュージックビデオでした。私が洋楽好きだったので今でも人気のマイケルは知っておいた方が人の話についていけるだろうくらいの気持ちで見せたのですが、まさかこんなにハマるとは思ってもみませんでした。

あっという間に、うちにはマイケルのCDやDVDが集まり、マイケルの歌が朝から晩まで流れるようになりました。一番驚いたのは、外で超シャイなムスメが、なんと学校でマイケルのダンスを披露するまでになっていたことでした。小道具の帽子まで用意して、人は好きなものでこんなに変われるのかと本当に驚きました。休み時間は一人読書で自分の席から離れなかったムスメが、いきなり賑やかな女子グループの仲間に入ったのも驚きでした。

そんなマイケル好きになったムスメと車好きのモトオとの間で、ある日事件が起きました。

運転中にマイケルのDVD

前回の記事「オレ様の車」を読んでいただいた方はお分かりだと思いますが、オレ様モトオの車中は、オレ様ワールドなので、普段はDVDを見るなんて許されません。彼は話しかけられても運転に集中できなくなる人でしたし、DVDは併用するカーナビが常に見れなくなるので嫌っていました。

ですが、やはりムスメが生まれてからはCDやDVDを使わなければならなくなり、オレ様ルールもムスメにはだいぶ緩くなっていました。

ある日、彼がムスメを習い事に連れて行った時のことです。あまりにも育児に関わらないモトオに子供と仲良くなってもらうため一緒に出かけてもらいました。
私がそういう機会を敢えて作っていたので、近所の人達はモトオが育児をよくする優しい父親と思い込んでいました。

けれど、ムスメは既に父と二人だけのドライブを嫌っていたので、移動中はマイケルのDVDに没頭するようにしていたそうです。そして事件は「ブラック・オア・ホワイト」の曲で起きたのです。

このビデオはマイケルあるあるの長編のミュージックビデオですが、他の曲と違って4部作で構成されています。世間では、カットされた歌の部分だけのショートバージョンが有名ですが、オリジナルのロングバージョンは無類の、まさにキングオブザポップのビデオと言えるでしょう。

第1部は、子供と父親との世代間ギャップが音楽を通して表現され、映画「ホームアローン」で有名なマコーレー・カルキンの「Eat this!(これでもくらえ)」で、父親がソファごと地球の裏側に吹っ飛ばされ、第2部でマイケルが満面の笑みでかっこよく歌って踊ってるけど、歌詞では「差別は難しい問題だ」と繰り返し、第3部では差別への「怒り」を破壊することで表現、第4部ではアメリカのブラックユーモアで有名なアニメのザ・シンプソンズの父親ホーマーが息子バートが見ているTVをブチ消して終わるという構成になっていました。

ありがとう、マイケル!

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その事件はこのビデオの第3部分で起きました。マイケルがダンスと共に怒りを爆発させるシーンです。

CGでブラック・パンサー(過去に存在した黒人の政治団体名にかけている)がマイケルに変貌し、路上に何気なく止めてある車が映像に映し出されると、黙っていたモトオが珍しく口を開けたのでした。

モトオはうんちく好きですが、それも滅多に無いことなので、この時はよほど機嫌が良かったか、よほどの車だったのかのどちらかだろうと想像がつきます。

けれど、ムスメはこの時一人青ざめていました。

なぜなら、父親がご機嫌で自慢するその車が、マイケルの手によって、これからメチャクチャに壊されることを知っていたからです。

そんな事とは知らないモトオが気分良く「この車は、パパがなんちゃらかんちゃらで…」と話していると、突然マイケルが鉄の棒で、その車の窓ガラスを片っ端から割りまくり「あああー!」と叫んで、車の上に乗っかると、今度は股間に手を当て腰を振るダンス?を連発したのです。静けさの中、マイケルの吐息だけが響く、このマウント感半端ないシーンはかなり長いのでした。

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車の中は水を打ったように静まり返り、マイケルに好きな車を破壊されたモトオはその後一切、一言も喋らず運転していたそうです。

可哀想なムスメはその時1ミリも笑えなかったそうですが、その話を聞かされた私はもうおかしくておかしくて久しぶりにお腹を抱えて笑いました。私が大笑いするとムスメも笑い、なんだかとてもスッキリしました。

普段からマイケルはビデオの中でよく物を壊すので、教育上どうかと思っていましたが、この時ばかりは、マイケルが家族を大切にしないモトオを懲らしめてくれたように思えました。

うちの人たちはすぐに白黒つけたがる白黒思考で、Black or White な人たちでしたから、まさにぴったりハマっていたのでした。

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