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これがやわるしすの奥義かもしれない

こんな症状とこんな症状があってツライ。というお悩みをどうにかしたい、ということで医学などを使って方法を探るわけですが、中医学ではこの段階を「弁証」と言います。
体がどのようにバランスを崩しているか、言語化する段階で、その崩し方に名前を付けるとそれを証と言います。「弁」という字は、弁別、弁解などに使われるように、情報を整理整頓して論理的につなぎ合わせたり分けたりすることを意味します。なので、弁証とは、その人の症状そのものやそこから推察できる情報から、どのようにバランスを崩してしまっているのかを論理的に弁別し、名前を付ける作業と言えるかと思います。
例えば、冷える、元気がない、などからこの人は気が足りないなと考え、気虚と名付けるのが弁証です。
証が決まれば、それに対する治法(治し方のようなもの)はある程度はさっと決まります。例えば気虚ならば、気が足りないので補気すればいいという事になります。
弁証のしかた、論理の展開の仕方と言うのでしょうか。いくつかパターンがあります。
気血弁証、八綱弁証、臓腑弁証、六経弁証などです。実際にはこれらを組み合わせて行います。そして、ここで紹介するのはやわるしすのやり方ですが、気血、八綱、臓腑を組み合わせて行います。
気血津液の状態は、虚しているか滞っているか、滞りがあるならばどの辺りでなのかを考えます。
八綱弁証では、4項×2の八つのマトリクスで考えます。

虚 寒 裏 陰
実 熱 表 陽

その人が今虚しているのか実しているのか、状態は寒か熱か、邪があるとしたらそれは表にあるのか裏にあるのか。そして全体の状態としては陰なのか陽なのか。
これは分かりづらいので、「ゾクゾクするタイプのカゼ」を例にしてみてみましょう。
カゼをひく時、中医学では基本的に外から邪がやってきて起きます。なので、「実」の状態になります。そして、ゾクゾクタイプの時は「寒」がやってきています。ゾクゾクしているタイミングはまだ寒邪が肌の表面辺りにいる時なので、「表」という事になります。全体としては冷えたりするので「陰」です。
このように分解して考えて、「ゾクゾクタイプのカゼ」は「実証で表寒証。陰に傾きがち」という事になり、表寒を追い出す陽性の薬や食べ物を使うことになります。
これが、入って来た邪が熱だったり(喉イガイガのカゼになります)、邪が突然裏に入ってきたり(いわゆる胃腸カゼです)、すれば、それぞれ表熱を掃い追い出す薬になりますし、裏寒を出す為にお腹を調える薬を使ったりします。

このように証をしっかり見ることはとても大事です。

そして、薬膳をする上で一番肝腎なのは、臓腑弁証の部分です。これは、食材に帰経があるからです。証を決め、治法を実践する際に食材を選ぶわけですが、その時に、食材の効能を効率よく利用するためにはどの帰経が重要になります。
例えば、熱っぽい感じだから陰虚の可能性があるな、となっても、肝の陰虚なのか腎の陰虚なのかなどがあるわけです。肝陰虚に対して蜂蜜を使ってみても、蜂蜜は肺脾大腸にしか帰経していません。相生の関係で肺陰から肝陰になってくれるかもしれませんが、ちょっと時間がかかりそうですし、効率も悪そうです。折角滋陰の食材を使うなら、ピンポイントで的確に使いたいですよね。

その方の状態を気血弁証、八綱弁証で考えた上で、更に、その状態が起きる原因を臓腑の方に探してみるということです。
例えば、気が足りない事が分かった場合、気をつくる脾が弱いのか、気を溜める腎が弱いのか、はたまた肺が弱くて行きわたっていないだけなのか、と考えるのです。この論理展開に必要な情報は、ここまでに書いてあります。
あとは、ロジカルシンキングの各種フレームワークを使ったりしながら、その状態になっている原因を探っていきましょう。

そして、そのお悩みを起こしている「原因」は1つとは限りません。1つ見つかったからと、まず何か対策を実行し始めるのはいいのですが、やってみてどう変化するかを観察することも忘れないでください。弁証と治法が分かって、手を打ってみれば、どのように変化するはずだ、という仮説が立ちます。その仮説から大きく外れていたら、弁証が当たっていなかった可能性が高いですし、もし仮説の通りに変化したら、それはそれで次の一手を考える方が得策ですから、どちらにしろ弁証をやり直すことになります。
一度弁証をして、これこれを使うと決めて、それを2か月も半年も使い続けるのはナンセンスです。もし、飲み続けなくてはいけないような薬を使っているのであれば、それは対症療法しかしていない可能性が高いです。折角、中医学の手を使っているのですから、対症療法で延々とやるのではなく、根治を目指したいですね。
そして、効果を少しずつでも実感して、楽しい薬膳・中医学を実践しましょう。陰陽五行・太極を感じ、天地の気の巡りに乗って素敵ないきかたを!

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