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指先に咲く星の花


「もしもね、叶うなら、枯れない花が欲しい。」

そう彼女が呟いたのは
無数の星々が煌めいていた冬の夜空の中だった。

街の喧騒から少し離れた公園のブランコに揺られながら子供みたいに星空を見上げていた。


「枯れない花?」

突然どうしたんだろ。
そんな事を思いながら彼女の顔を見た。

彼女は、じっと空を見つめたまま、小さく頷いた。

「うん。言葉って、いつか枯れてしまうでしょ?いくら心を込めて伝えても、時間が経てばその意味が薄れてしまう。だから、言葉に頼らなくてもずっと咲き続ける花があったらいいなって。」

白い息を吐きながら呟く彼女の瞳には、星々が映り込んでいた。
その光は、まるで彼女の心の奥底にある願いを照らし出しているように見えた。

どうしてだろ。
夜空は、人をロマンチストに変える。
いや本当は、みんなロマンチストなのかもしれない。
夜空は、きっとそれを正直にさせる。

そんな風に正直で居られる人と一緒に居られる事に幸福を感じていた。

白い息が解けていく。


「じゃあ、僕たちでその花を描こうよ。」

名案が思いついたとばかりに僕は、口にする。

「星と星を繋いで、枯れない花を空に描こう。そしたら、それがいつも僕たちの間に咲いている花になる。」

彼女はその言葉に驚いた目をして、それから微笑んで頷いた。


それから星々の間に無数の線を思い描き、心の中で大きな花を描き始めた。

その花の色や花弁が彼女には、どんな風に見えるだろう。

きっと今同じものを見ていると強く思った。
そういう事をきっと”信じる”とかって言うのかもしれない。

“もしもさ、叶うのならば。
思いだして。
指先に咲いている花がある事を”

心の中でそんな事を呟きながら

そのまま静かに星空を見上げた。

言葉では表せないけれど、確かに感じることができるものがそこには、あった。

それを言の葉にするのなら
いつか枯れて落ち葉になってやがて土に還ってしまう。

そんな想像をした。

きっと分け合えてるものは、言葉にしなくていいんだ。
それを大切なものって言うのかもしれない。

夜風が優しく吹き抜けブランコを揺らす。

この指先にずっと咲き続けている花がある。



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