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私と新宿のゲイバー

終電をとっくに逃した深夜3時の新宿。
眠らない街のネオンは、明るく
ほろ酔いの足取りは、軽い。

「始発までコイツをよろしく」と、次の日も朝早くから仕事なのに付き合って飲んでくれた人が紹介してくれたお店は、ゲイバーだった。

実は、そのお店には、7年ぶりにお邪魔した。
7年前も、とても印象に残る時間だったので
地元のバーで働いてる時にそのお店での時間の事をよく話していた。
そのお店が
コロナ禍を乗り越えてあった事が嬉しく
ジェムソンのソーダ割りを飲みながら
店内をキョロキョロと眺める。
あー、こんな感じだった。と
酔っ払ってる頭が覚えている懐かしさにまた嬉しくなる。
気づけばグラスを開けるスピードが、早くなり、いつの間にか店内には、自分とママさんだけが残っていた。

「あんたさ、本当は、視えてるんでしょ?」

サワーを飲みながらママさんがそう言う。
正直、酔いも進んでいたので
何故、そんなスピリチュアル的な話になったのか覚えていないけれど
二人で異様にそんな話で盛り上がった。

「視えてますね!!」

その問いに対して意気揚々と私は、答え、人の瞳が映すものについての話や人が持つ使命についての話を延々としていた。

人の瞳は、何を見てきたか、それによって今何を視ているのかを映すと思う。
ママさんの瞳は、奥の方にピュアさがあって
今を俯瞰して見ながらその純粋さの中でモノを見てると思う。
それは、色んな人と出逢って超えてきたけれど元々の純粋さを忘れてない瞳だと思う。
そんな事を言いながら
勢いよく傾けたグラスの氷がカラランと音を立てる。

自分は、音楽というツールを通して
世の中の視方を教えてもらいながら
それを通して得てきた事を
表現で伝えていく事が自分においての使命だと思う。
そんな事を話した。

「あんたが、そう思うなら一回表舞台に出な!」

自分だけが信じているような使命感を
ママさんは、そう言って後押しをしてくれる。
日常生活の中で、話し出したら
何を言ってるんだ?この人は?となるような会話を、何の躊躇もなく話せるこの場所は、まるで生まれる前の世界みたい。
性別や年齢などなく
その人は、その人の魂としてここに居るような
そんな気がする。
地下にひっそりとあるゲイバーが、こっそりと天国に変わる朝方の新宿。

気づけば
始発を1時間以上も超えていた。

「またいつでもおいで」
そう言って送り出された新宿の朝は、夜の残香を、あからさまに照らす。

一気に押し寄せてくる現実を踏みしめながら歌舞伎町を横切る。
そんな街の地下は、ひっそりと天国を隠している。

人が人として話せる時間に癒されながら
また遊びに行ける日を楽しみにしている。

夜の時間は、そんな風に人に特別な時間を残していく。
新宿にあるとあるゲイバーで過ごした時間の話。

*あくまで個人の感想です。




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