故郷はイオン

転勤族で、太い実家というものが無かった。
子供の時から家族でお出かけするとなると、ジャスコだった。週末なにかあるとジャスコに行くことが多かった。
子供の時に住んでいたアパートは老朽化で取り壊されて残っていない。次に引越したところも同じく取り壊されていて、子供の時のふるさととしての居場所がないことが悲しいなぁと思っていた。

土地に馴染むことは、家だけではないな、と最近になって思えるようになった。
引っ越すことが多かったが、どのタイミングでもイオンが生活の暮らしの中で存在していたことに気がついた。それから、遊びに行くことがすごく多かった。妹が生まれてから、子供向けの無料イベントがあれば、兄弟で見に行った。
試食もあるし、フードコートに水がある。転勤してから、ジャスコの名前が変わり、イオンになった。
ど田舎に引っ越しをしたので、近所にあったイオンがなくなった。代わりに牛舎や豚舎、あとは畑だらけになった。
街に出るのに、車と、フェリーになって2時間くらいかけて行かないと映画館もなかった。イオンはなくて、アミュプラザになった。
イオンが近くになくなって、隣県のイオンに時々行くことに変化して、7年が経った。
大学で隣県に引っ越して、アルバイトの本屋は大型イオンの中にある本屋だった。原付でイオンに行けるようになって、自分の足で映画館にアクセスできるようになったことが嬉しかった。
上京して、イオンがなくなった。マックスバリューもなくなって、ちいさなまいばすけっとに変化した。
まいばすけっとを初めて見た時、親の姿がいつのまにか小さくなっていたような、そんな感覚を覚えた。都心のまいばすけっとは、田舎のイオンが姿を適応させたものだと思っていたので、すごく小さくて悲しくなった。
旅行でイオンがあると、つい嬉しくて大きくて、広くて、なんでも揃うのでテンションが上がる。それから、イオンの食料品売り場でご当地のものを探していた。イオン巡りは楽しい。
実家に帰る回数と同じくらいイオンにわざわざ行っていると気づいたので、もはやイオンに行けば実家のような安心感を感じているのだと、そう記憶させていることを自覚した。
全国展開のありがたみを、こうやって感じるとは思ってもみなかった。ありがとうイオン。それから、これからもどうぞよろしく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?