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『薄明鬼語 西村賢太対談集』

対談というコンテンツが
なぜ人々に楽しまれるのか。

世の中が
「これってこういうことだっぺ?」
と決めつけていたテーマに
新たな解釈が加わる。
「この人ってこういう人だっぺ?」
という思い込みの人物像に、
対談相手が新しい色を塗り足す。

上記のひとつも達成できていない対談は、
単に複数の人に同時にインタビューしただけだ。
というか、そもそもそんな企画通らないだろう。

主に後者の魅力を孕んでいるのが、
西村賢太『薄明鬼語』である。
『苦役列車』で芥川賞を受賞した
翌年頃の対談を収録。
氏と同業の田中慎弥との対談、
タレントのマツコ・デラックスとの対談には、
特に引き込まれた。

田中慎弥とは互いに、
書き手としての魅力を引き出し合っている。
さすが同業だけあって、
質問がディテールに及び具体的。
ふたりの作家としての生活や執筆の作業が
イメージできて面白い。
芥川賞受賞会見でのコメントが
ぶっ飛んでいたことこのふたり。
互いのアウトローな部分が
かち合ってイイ味出てる対談。

マツコとの対談は話題が多岐にわたり
若干のとりとめのなさもありつつ、
マツコがちょいちょい挟んでくる
個人的なエピソードがいちいち面白い。
ペットとしての犬に対する
洞察というか問題提起には唸らされた。
さらにこの人は、
自身のことも俯瞰で見ているのがわかる。

開けっぴろげなマツコ、
私小説書きの西村。
そりゃ面白い対談になる。
性への希求からテレビの仕事に対する態度まで、
マツコの意外な内面がわかって新鮮。
西村がマツコの面白さを引き出した対談
……と言えなくもないか。

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