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一級建築士製図試験の感想に思うこと

川崎、横浜をメインに活動する消防設備会社、長沢防災の吉川です。
私は消防設備会社を経営していますが、前職のサラリーマン時代に一級建築士を取得しました。
(その時の話の一部を「一級建築士、学校か独学かの話」に書いています、もしよろしければ読んでいただけると嬉しいです。)

資格取得するまでの間は、ブログやTwitterなどの情報を色々参考にさせていただきました。
この資格は不思議なもので、取るまでに相当な努力を必要とするからか、取得後は受験生を応援したくなるんです。

かと言って適切なアドバイスが出来るほどの知識がある訳でも無いのですが、最近Twitterを見ていて、「あれ、その考え方大丈夫?」と気になる点があったので、誰かの目に止まればと思いこのnoteを書きました。

標準回答例は絶対?
よく見かけたのは「標準回答例にこれこれこういう表記があったから次回からは使う」みたいなご意見。これはたぶん標準回答例の意味をはき違えているんじゃないかと思うんです。
標準回答例って、『その年の合格者の程度を表すもの』で、絶対的なものではなく相対的なものです。

だから例えば「トイレが1階にしか無い標準回答例」が出てきたとすると、それは「トイレはそんなに多く設けなくてもいい」のではなく「トイレが他階に入らない合格図面が多かった」というだけの話です。

例えば「要項にゴミ置き場と書いてあったけれど、描き忘れてても合格できた」人がいたとしても、それは「ゴミ置き場は無くてもセーフ」なのではなく、「ゴミ置き場忘れより悪い欠格やミスが不合格の受験生にはあった」というだけのことです。
(ちなみに、ゴミ置き場忘れをしたのは私です)

トレース、作図の速さは必要?
他にも見かけるのは「まずは標準回答例、合格図面をトレースします」「作図をたくさんして作図スピードを上げます」というご意見。
これは個人的な見解ですが、トレースはかかる時間に対して得るものが少ない作業だと思います。勉強ではなく作業です。
作業をすれば当然習熟していくのでスピードは上がりますが、根本的なカイゼンがなければ頭打ちになります。
トレース、作図は必要でのではなく、あくまで『した方がいい』だけのことだと思います。

私は合格する年でさえ、作図に3時間弱かかる受験生でした。初年度でも3時間を切る人はざらにいるので、おっそい方です。
そんな奴が偉そうに言うのも如何なものですが、勉強の比重は圧倒的にエスキスに重きを置いていました。
トレースなんて初年度に2回して以来やった覚えがありません。それはなぜでしょうか?

エスキスの方が圧倒的に重要だからです

作図で一番の大敵は『迷うこと』です。
「次何描くんだっけ?」「階段の段数は本当にこれで合ってるか?」「ここに何補足書こうと思ってたんだっけ?」…
これらの迷いが手を止めます。この止まっている時間が最も無駄な時間でした。

だから私はエスキスの時点で、扉の向き、トイレの構成、PSDSEPSの位置、断面図、補足文章などの書き込み内容を網羅的に決定していました。決めてしまえば、作図中は迷いません。

(ここにプラスして、エスキスを覚えて見ながら描くのをやめればより速くなるという情報もあるのですが、私はニワトリ並みの記憶力だった事もありこれは実践できませんでした。)

それと、作図は道具と最低限のスペースが求められますが、エスキスは作図より道具も少なくスペースが狭くてもできます。製図試験は身構えないとできなさそうなイメージの中、その手軽さも私向きだったと言えます。

大切なことはなにか?
・製図試験は相対評価。
欠格に当たるミスがなければ採点土俵には乗るので、エスキスで欠格を無くし、作図を完成させるのは必要事項。

・この試験は受験生が一級建築士として活動していいかを判別する。
法的知識がない人が、図面に最低限必要な情報を表現できない人が、建築物への全般的な理解がない人が、一級建築士を名乗れるはずがない。

・思い込みをしないこと。
図面はキレイでなければいけない、図面の書き込みはたくさんなければいけない、作図は2時間以内に出来るようにならなければいけない…などなど。
なぜそれが「〜なければいけない」のかはキチンと自分の中に腹落ちさせてから挑むべき。

・資格学校の講師は試験採点者ではない。
上記思い込みの話にも繋がりますが、資格学校の講師陣は一級建築士ではありますが採点者ではありません。
本番以外の採点は一級建築士に繋がっていません。
良い採点結果をもらったにしろ悪い採点結果を受けたにしろ、何故そう判断されたのか、どこを見てそう判断したのかを把握し、その判断が適切だと感じれば次に活かし、根拠に欠けると思えば無視すればいいのです。

私は大学で建築学科に在籍していましたが、勉強は単位を取って卒業することがメインで、建築より卓球部の活動が大学生活の大部分を占めていました。
社会人になってからは不動産管理会社に勤め、そこで請負工事や設計監理的な仕事をしましたが、建設会社や設計事務所ほどガッツリの仕事したとは言えません。
私よりも実務的な能力は十分備わっている人や経験豊富な方でも不合格となった姿を見ていますが、それらは能力を一級建築士試験にアジャスト出来ていないだけではないかとも感じています。
能力や経験が宝の持ち腐れとならないよう、試験勉強にあたって「自分の努力が本質的に正しいのか?」を念頭に置いて、長く厳しい日々を頑張ってください。

いま頑張ってホームページを作成しています。
こんな情報載ってたらいいのに、こんな事はやらないんですか、といったご意見ご感想をいただけたらメチャクチャ喜びます!
【合同会社長沢防災ホームページ】
https://nagasawabousai.com

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