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不動産管理会社が担うべき仕事、そうでない仕事

昨日お会いした消防設備会社の方の話の中で、
管理会社の上の人(施主)に仕切り値を伝えたら驚いていた。どれだけ管理会社が乗せているのか。」
というくだりが頭から離れず、勢いこの文章を書きます。

私も前職が不動産管理会社だったこともあり、聞いていて耳が痛い思いでした。

ではここで何を伝えたいのかというと、「コストを下げたければ、単純な値下げ交渉をするのではなく、発注の仕方を見直そう」的な事になると思います。
お暇であればお付き合いください。
※異論はあると思ってますが、個人の見解です。

自社で出来ること、出来ないこと

まず、不動産管理会社には様々な成り立ちがありますが、不動産管理を主体としてスタートした企業は少ないと思います。
それ故、仕事の内容によって向き不向きが存在するということをご認識ください。

例えば、清掃業務から派生して不動産管理を行う会社は、清掃という日常的に建物に居るという特性を活かして管理を行います。
しかし、清掃業務が主体となるためそれ以外の保守作業は外注で対応します。
例えば、一般的な不動産屋さんが「管理もします」という場合、自社で行っているのは入退去管理ではないでしょうか?
他の業務はどれも外注になると思います。
例えば、建設会社から派生した場合の不動産管理会社は、新築工事のノウハウを活かした改修工事などに強みがあります。
一方で、施工管理が主体となるため、作業員は外注となる傾向があります。

例を3つ挙げましたが、共通するのは『自社社員で出来ることと、外注しないと出来ないことがある』ということです。

不動産管理会社のポジション

次に、不動産管理会社を介した改修工事の施工体制を例に挙げけてみましょう。
ざっくりとした分け方をしていますが、以下のような流れになるケースもあると思って見てください。

【施工体制】
[発注者]
施主

[元請]
不動産管理会社

[一次下請]
建設会社(施工管理)

[二次下請]
設備会社(施工管理)、建設会社(作業員)

[三次下請]
設備会社(作業員)

上記体制をベースにして、不動産管理会社が設備改修工事を提案するとします。(一部建築工事あり)

その場合、提案ではこのような情報が提示されることになります。

・既存状況
改修提案の根拠
改修方法、選定機器
工程表、改修範囲、図面
見積書

上記のうち、太字は施工体制上は下請となっていた建設会社が出せる情報です。
既存状況だって現地調査すれば出てきます。

不動産管理会社は下請から出てきた情報を咀嚼して提案を行いますが、早い話建設会社が直接ご説明すれば済む話です。
(たまに、提案の時に説明してほしい、と臆面もなく相談する方もいらっしゃいます。)

あれ、じゃあ不動産管理会社はどこで活躍するの?と思ったそこのアナタ。
いえいえ、賃貸ビルであればテナントとの調整が必要となります。
それに保守作業などの他業務との調整だって不動産管理会社を元請けとすればスムーズに進みます。

…なんて聞いて「確かにそれもそうだな」と思ったなら、考えを改めた方がいいかもしれません。
だって、テナントとの調整、他業務との調整、ってどれも不動産管理の仕事に感じませんか?
契約内容にもよるかもしれません、しかし「不動産管理会社が元請にならなければ出来ない仕事」では全く無いと思います。

こうなってくると、不動産管理会社がいる分間接経費が増える=コストアップという構図がはっきりしてきます。

つまり改修工事で言えば、建設会社や設備会社など下請となっていた会社で完結できる仕事に不動産管理会社が入るのは、コスト以外の何者でもないということになります。

もちろん不動産管理会社にも価値がある

一方で、不動産管理会社を介した方が圧倒的にやりやすいケースもあります。
例をいくつか挙げると、

例えば、全国各地に不動産を持つお客様が、全国的に同じ工事をしたい場合。
不動産管理会社が全国規模であれば、一社に声をかけることで全国対応が可能となります。
多数の不動産を所有する方にとっても同様で、とりあえず一社に声をかければ済むという状況は、手間を省くことができます。
例えば、大規模ビルでの対応の場合。
建物は規模が大きくなればなるほど、求める質が高ければ高いほど維持管理に要す仕事が多くなる傾向にあります。
多大な仕事を各社に分けて依頼するよりも、不動産管理会社一社に声をかければ全館対応ができ省力化が図れます。
例えば、依頼先が見つからない場合。
不動産管理会社は多くの物件に対応するため、様々な企業との取引があります。お客様が同様のコミュニティを形成するのはハードルが高く、その場合は不動産管理会社を通すことでその繋がりを使わせてもらうことができます。

このように、認識を誤らずに適切な箇所で適切な企業選定が可能となれば、かかるコストは価値相応になってきます。

建物に関わる人々の将来のために

建設業や建物管理業はいま人手不足の業界です。
何故そうなったかといえば、各業界に魅力がないことで先達の後を行こうとする後継者が増えなかったからだと思います。

魅力が無い点で考えたことが、仕事に見合った報酬が受け取れない、時代に見合った働き方が出来ない、将来性が無い、です。

この内の『仕事に見合った報酬が受け取れない』というのは他の要素にもからむ重要な点です。
提供した価値に対して不相応な利益を上(元請)に取られてしまうと、それにより下請の取り分はどんどん減っていき、末端で実際の作業を担う人達は世の平均年収がもらえるかどうか。

そうなると、この業界で長く働き続ける未来を思い描くことができず、人が去っていくことになります。

働き手が居なくなってしまえば、まず建物の維持管理コストが大幅に上がり、各仕事に早期対応ができなくなり、いずれ建物の維持管理が出来なくなります。

放置された建物の不具合箇所は被害が悪化し、建物の使用可能な期間を短くし、結果として不動産のLCC(ライフサイクルコスト)が上がります。

つまり、居なくなっては困る人達(作業員)に適切な対価、報酬が行き渡らないことは、不動産を所有するオーナー、不動産管理会社の方々にとっても悪い未来しか無いのです。

どのお客様、企業にとっても利益向上は大切なことです。
ですが長期的な視点で見て長く続けてほしいと思える企業、作業員の方が身近にいらっしゃる方は、どうかその人たちへは適切な報酬を届けられるようご配慮ください。

それをきっかけに、この業界の未来が活気づき、ゆくゆくは働き手が増えていくことを願っています。


ちなみに。

私も不動産管理会社を辞めて起業した以上、ここまで書いてきたことを実践するお手伝いをしたいと思う部分があります。
(今はまだ消防設備の仕事ばかりですが)

もしこれを読んで興味を持って頂けましたら、ぜひ下記までご連絡を頂けましたら、可能な限り努力します。

吉川幸太 @ 川崎、横浜で消防設備点検・工事・建物管理アドバイス (@nsbs2020)
https://twitter.com/nsbs2020?s=09

【会社ホームページ】
https://nagasawabousai.com

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