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【天狼院書店初心者短編2020年4月コース受講者向け】⑩多分一番大事なこと

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 昨日の講座、大変お疲れさまでした。そして、これをもって、二か月余りの講座はすべて終了となります。
 それにしても、前回の講座はいろいろひどかったですね(笑)最後に話した小説家と銭の話が一番わたしの中で盛り上がってしまい、皆さんに一番お伝えしなくてはならなかった話をお伝えしそびれてしまいました。いやはや、ペース配分って難しいですね。

 小説を書く、という行ないは、ミクロ、マクロ両方面から見ても、「必ずしも、わたしやあなたが行なう必要性の薄いもの」です。
 どういうことか。
 これだけ世に小説が出回っていて、読まれていない小説がたくさんある昨今、わたしやあなたが小説を書く必要性は限りなく薄いということです。わたしはここで、「わたしや」とも書きました。はっきり言えば、現代、世の要請に応じて小説を書いているのはほんの一握りの方に過ぎません。多くは、要請などなく、書いている人ばかりです。
 なんのために?
 もちろん、世の中にはいろんな考えがあります。「世の中にエッジの利いた考えを拡散したい」と願い小説を書く方もいるでしょう。「自分の作った小説で数千人を笑顔にできればよい」とお考えの方もいるでしょう。
 けれど、小説を書き続けるためには「内的な理由」が要りますし、「内的な理由」を持っておくと、くじけなくなります。

 つまり、小説を書くことによる、あなたの利益です。
 第一回目の講座で少しお話ししましたが、小説を書くという行ないは、複雑怪奇なる自分を理解するための鏡として機能します。今まで知覚できなかった自分を知る喜び、そんな効能が小説にはあります。
 また、己の負った心の傷を癒す効果もあります。かつてあった哀しいことにフィクションで以ってふたをしたり、向き合ったりすることでやがて傷を克服していく、そんな効果もあります。
 また、単純に文章力がアップする良さもあります。
 結局のところ、「小説を書くことが好き」という感情があるかどうかが大事なのです。

 これは特にプロを目指す方に申し上げなくてはなりませんが、プロの世界に居続けると、自分を見失いがちになります。出版社の依頼に応じタイトなスケジュールで無理やり言葉をひねり出し、対価を得る。そのサイクルを繰り返すうちに、なんで自分は小説を書いているんだろう? そんな疑問に駆られ、気づけばおざなりなものを書いてしまっている。そんなことも起こりがちなのです(実はこれ、賞を目指している方にも起こりがちです。プロデビューが目的化してしまい、小説そのものがなおざりになってしまうことがままあるのです)。

 今回の講座で、「小説を書くことが好きだ」と思えた方は、ぜひこのまま小説を書いてみてください。もし、「あんまり好きになれなかったなあ」という方は、もしかしたら、自分に合ったアウトプットが他に存在するかもしれません。あるいは、「最近あんまり小説を書くのが好きじゃないんだよなあ」という方は、初心に帰って、「なぜ自分は小説を書き始めたのか」を思い出されるといいんじゃないかなあと思います。

 古人は良い言葉を残しています。
「好きこそものの上手なれ」
 小説は、作り手の好きが詰まった宝箱です。だからこそ、「小説を書くのが楽しい」という思い、「小説は楽しい」という感覚を持ち続けること、それが大事なのですね。
 今回の講座で、わたしがそこまで皆さんにお伝えできたかというとなかなか厳しいものがあります(今回は完全リモート講義となりましたし)。でも、小説って楽しいよ、という思いを少しでも持ち帰っていただけたなら、これ以上のことはありません。

「小説は、読むのも書くのも楽しい」

 多分、小説を書く人間にとって、この言葉がすべての始まりなのです。

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