読書感想文と谷津の七転八倒①
【PR】
この前から騒いでいるので耳に入っておられる方も多いと思いますが、拙作『廉太郎ノオト』(中央公論新社)が青少年読書感想文コンクール高等学校の部課題図書に選出されました。
課題図書に選ばれたと知った時、甘酸っぱい気持ちが胸いっぱいに広がりました。ああ、子供の頃、書いたなあ! いや、懐かしいなあ! と。
まあ、かくいうわたしはあんまり褒められた学生生活は送っておらず、落第生的な日々を送っていましたのですが、それでも読書感想文を書いた記憶があります。まさか今、読書感想文の延長のようなことでお金を稼ぐようになるとは、あの頃のわたしも思っていませんでしたよ……。
というわけで、今回から数回に分けて、読書感想文の思い出を書いてゆければなあと思ってます。お付き合いいただけますと幸いです。
「あらすじだけで終わらすなよ!」
小学校低学年(確か)の時、先生の雷が落とされました。
わたしを含め、当時のクラスメイト達は「主人公のマー君がこれこれこういう事件に遭って、これこれこういう気持ちになって、こうしてああして、最後にはハッピーエンドで終わります。おしまい」みたいな内容で原稿用紙を埋めていました。
えっ、それの何が問題なの? と思っていたわたしたちを尻目に、先生はこう続けます。
「君たちが書いてきたのは、何が起こったのかを書いている、あらすじなの。わたしが皆さんに書いてほしいのは、その物語を受け止めたあなたが何を思ったのかを知りたいの」
今のわたしなら間違いなく「そういうこたぁ早く指示してくれい」とぼやくこと請け合いの汚れちまった34歳ですが、当時のわたしは(多分)目を輝かせながら、「へえ、あらすじと感想文って違うものなんだー。大人ってすごいなあ」
と感心することしきりでした。
でも、子供ながらに、「感想」って何なんだろう? と首をかしげることになるのです。
本のストーリーや論旨をまとめるのが感想でないとすれば、では、感想とは何を形にし、何を伝えるものなのだろう?
実は、この問題が解決までには、15年以上の歳月がかかることになるのですが……。ここからは次回に続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?