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本棚を家に据えよう

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 本をたくさん読む人間にとって、本棚は独特の地位を占めていると思います。
 いえね、本って、どんどん増殖していくじゃないですか。外に出れば書店さんを冷やかして本を買い、ネットで話題の本があればまた出かけ先で買い、書店さんに挨拶に行けばその場で買い……。気づけば本棚から本があふれ出て、「まだ読んでない本」の段ボールがPCの後ろに積み重なってます。そんな環境だと、なおのこと本棚はふしぎな存在感を放つことになるのです。
 わたしはこうやって本棚を使っているよ、とご理解ください。

本棚に入っているのは「殿堂入り」した本?

 わたしは本を読んだ後、このような判断をしています。

①一度読めば十分な本
②何度も読むことになるだろう本
③手元に置いておきたい本
④手元に置いておかなくてもいいが所有しておきたい本

 本当はすべての本を取っておきたいのですが、そうもいかないのですよ……。家の環境を守るためにも、一部は手放しています。
 ①に関してはほぼすべて手放しています。②に関しては、その本の稀覯状態を把握しつつどうするか判断しています。④については段ボールなどに梱包して保管しています。ここで大事なのは③ですね。広範な基礎資料となるような本(事典の類ですね)とか好きな本。わたしは基本的に②の一部と③のために本棚を置いています。
 ということは、谷津の本棚はある種の「殿堂入り」なんだな、と思ったあなた、ある意味においては正しいのですが、ある意味では外れです。実はわたしの本棚の半分ほどは、別の本が詰まっています。それは……。

今のわたしでは判断のつかない本を置く場所

 皆さんは本を読んでいて、
「うわあ、この本、今のわたしでは歯が立たないなあ」
「名著らしいけど、今一つぴんと来ないなあ」
「何を言っているのか分からないなあ」
 という本はありませんか。
 わたしもよくあります。
 もちろん世の中の本がすべてそう、ということはありませんが、読者の知識や経験に依存した本も世の中には存在します。あるいは小説などでも、今の読書体験や人生経験では良さがぼやけてしまう、そんな作品もたくさんあります。それに、人生を重ねるごとに、テキストの味わいが変化する本も。
 本というメディアは、寝かしておくと(読み手が変わり続ける限りにおいて)発酵することがある、面白いメディアなのです。
 「ああ、この本は発酵しそうだな~」と感じた本に出会ったら、わたしは迷わず本棚に差すようにしています。
 つまりわたしは、「本を寝かす場所」として本棚を用いているのです。

本棚は脳の外付けHDDである

 なんでも、断捨離的な文脈において、本は敵役扱いされているみたいです。もちろん、いろんなライフスタイルが存在する中、できる限り余計なものをそぎ落としていく生活というのも一概に否定できませんし、そもそも他人のなさることを否定するほどわたしは偉い存在じゃありません(というより、個人の領域の話に、誰も踏み込むことはできない)。
 なので、ここからはわたしのご提案です。
 一家に一竿、本棚を据えませんか。
 いかなる本も、情報の集まりです。
 そしてその情報を抜き取りやすい形で並べることのできる本棚は、いわば脳の外付けHDDです。そして、「わからない」「解析できない」データをそのままの形で保存しておくことができます。将来、あなたがアップグレードされて、以前理解できなかった本の良さを理解できるようになったとしても、その本が絶版して手に入りづらい状況になっていることも。「わからない」ことを抱えておくための場所としても本棚は有効なのです。
 今必要な本を買って、すぐ読んで、読んだら即座に手放す。
 この消費行動を否定するものではありません。
 けれど。
 叡智を手元に置いておく。
 未来の自分のための本を置いておく。
 これはこれで乙なものですよ。

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