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【天狼院書店初心者短編2020年夏休み特講受講者向け】⑧メモリを軽くするために「切り分ける」

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 講座に参加くださった皆様、10日余りお疲れさまでした。
 最後まで書けましたか? いえいえ、書けなくてもいいんです。そのうち、また時間を見つけていただいて、ゆっくりと書き繋いでいただき、ラストまで書き上げていただけたら幸甚です。

 さて、今日はこの講座最後のTIPSです。

 わたしは講座の中で、

人間は、HDDが大きくメモリの小さいパソコンのようなスペックをしている

 という話をしました。
 わたしはそんなにパソコンについて詳しい人間ではないので不正確な説明になってしまうかもしれませんが、HDDはデータを保存しておく領域のことで、本棚や押し入れに譬えられます。それに対し、メモリというのはデータを稼働する能力のことで、これが大きいと同時にいくつも作業ができたり、重いデータを迅速に動かすことが可能になります。メモリはよく作業台に譬えられます。
 つまり、HDDが大きく、メモリが小さいとは、

押入れが大きく、作業机が小さい家

 みたいなものです。パソコンや家ならメモリ(作業机)を大きくすることもできますが、人間のメモリはそう簡単に性能を上げることはできません。そのため、人間は同時に複雑な計算をすることに向いておらず、基本的にはその都度その都度計算を繰り返し、答えに至る必要があります。人間は、並列的にものを考えることが苦手なのですね。

 小説を書くという行為について考えてみましょう。
 小説は、かなり高度で複雑な情報です。
 これを一から組み上げようとしても、人間の頭のメモリが小さすぎるので、なかなか処理が追い付かない、そんなことは起こりえます。もちろん、小説家の中には無理矢理小さい机の上に山のような情報を乗っけて処理をする荒業をやっておられる方もいますが、これはかなりの職人芸です。
 わたしがご提案したいのは、「大きな問題を切り分ける」ことなのです。
 「小説を書く」というあまりに高度で複雑な情報制御に対し、少しずつ対応が取れるよう、問題を小さく切り分けていくのです。わたしが申し上げた「小説の三要素」などはその一つです。小説を登場人物、世界観、ストーリーに切り分け、それぞれに考える。もし、「登場人物」というのがあまりに大きいとお感じなら、さらに「主人公」に切り分ける。そして小さな情報を小さな机の上で各個撃破して、完成品を押し入れに収めておく。そして、最終的に組み上げようとなった際に、また取り出してドッキングさせる。
 大きな情報を切り分け、それぞれに解決していって最終的な解決を目指す。わたしが皆さんにお伝えしたのは、ざっとそうしたことなのです。

 小説を書いていると、「咀嚼しきれないなー」と感じる問題や壁にぶつかることがあります。そうしたときに「どこかで切り分けることができないだろうか」と考え、実際に切り分けてみるというのが大事なのです。
 たとえば、「ここまでは分かっている」「ここからは分かっていない」という切り分けでも結構です。あるいは、諸問題を属性に基づいて分類し、それぞれに撃破していく、でもいいでしょう。自分で理解してさえいれば、どんな切り分け方でもいいのです。とにかく切り分け、少しずつ解決してゆく。そうした姿勢が大事なのです。

【註】
 これをご覧の方の中には、「そんなことしなくても小説書けるもんね」という方もいらっしゃることでしょうが、それはあなた様がある種の天才だからなので、今まで通りやっていただけたらと思います。

 身に余る事態に出会ったら、とりあえず切り分ける。
 これはなにも小説だけの話ではないと思います。うまく用いれば、あなたの目の前にある問題を撃破できる武器になるかもしれませんよ。


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