刀と算盤

「作家埋もれがち問題」の処方箋について考える③

 新刊「刀と算盤」(光文社)好評発売中です!

 本エントリは前回の続きです。前回は以下に。

 前回は「第一回で紹介した①クオリティを上げる ②マーケティングを頑張る ③営業を頑張る」という作家個人の努力に関する競争が激化していて、結局はこの三つを頑張っても埋もれるときには埋もれるぜ、という絶望に満ちた話をさせていただきました。
 夢がない? そりゃそうだ。出版業は明治から数えれば150年余り、江戸期や日本最初の活版印刷(嵯峨本)まで話を広げれば400年の歴史がある古い業態です。成熟しているがゆえの手詰まり感が閉塞感に繋がっているという面もありましょう。

 けれど、今回は夢を語りたいのです。

狙い目は作家個人の営業活動

 実は、作家個人でできる努力の内、①②は研究が進んで(むしろ進み過ぎて)います。ある意味で、目指すべき方向性みたいなものが固定化・可視化され、かなり高い位置のところまで引き上げられています。けれど、①②とくらべれば、③の作家個人による営業活動についてはさまざまな抑圧もあって研究が進んでいないのが実態だと思います。
 これが何を意味するかというと、①②にかける労力の一部を③に振り分けてやると、もしかしたら①②だけに注力するよりはるかに注目してもらえる可能性があるかもしれないということです。実際、個人レベルでの営業活動で名が知られ、今では人気者になられている作家さんもおられます。まだまだ未開のフロンティアがたくさんあるだけに、チャンスの機会もまた多いということですね。
 もちろん、個人での営業活動については恐らくあと五年ほどで相当高度化してしまい、それはそれで結構ないばらの道になってしまうだろうという予感もあります。実際2018年現在でも、自ら小説PVを作り発表なさっておられる方やyoutuberとして活動しながら知名度をさらに広げてらっしゃる方などもおられます。今後、作家個人の営業活動は高度化の一途をたどることになるでしょう。2018年現在はその過渡期であるというのがわたしの感想です。

よりよくWEB上で目立つ

 本当なら作品力によって目立つのが理想ですが、そこまで行くまでにはまず本を手に取っていただかなければならない。何らかの方法で目立たなくてはなりません。
 けれど、わたしの経験上申し上げると、炎上で本は売れません。「えっ、中には炎上で本を売っているやつがいる」ですって? 誰のことかは存じ上げませんが、そうした方々は炎上のエネルギーでお湯を沸かしてタービンを回すという炎上発電を発明しておられます。炎上発電のテナントを建てるためにはそもそも知名度が必要ですし、窯のメンテナンスのために(=自分のブランドイメージを損ねないように)様々な手を打っています。考えるだに色々大変そうなので、あまり真似はしないほうがよろしいでしょう。
 TwitterやFacebookを自らの宣伝ツールとして用いる際には、「よりよく目立つ」方法を模索した方がよいかもしれません。もちろんこれは作家性にもよるのですが、あまり攻撃的にならず、淡々と、ゆるゆると運営し、少しずつフォロワーさんや友達の輪を広げていく……というのがなんだかんだで一番早い「よりよく目立つ」方法だと思います。紆余曲折を経て、ようやくTwitterとの付き合い方を覚えてきたクソ作家が自戒を込めて述べるものです。


 と、ここまで主に作家個人の営業に関する話をしちゃいましたが、実は個人的にはまだ秘策がありますし、まったく語っていないこともあります。というわけで、続きは次回。

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