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文芸作家も宣伝活動しているよ!

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 ちょいと昨日、わたしはこんなことをつぶやいてしまいました。

 やや激烈な物言いであったかなと反省しております。
 宣伝の話についてはいろいろ嫌な思いもしてきましたし、本来わたしはあまり宣伝活動が好きじゃないのです。
 えっ、マジで? って思いますでしょ? でもマジなんですよ。歴史小説家の中ではかなりTwitter露出が多く(単にツイ廃なだけですけど)、イベント、サイン会にもよく参加しますし、さらにラジオのパーソナリティまでやっているので、たぶん世間の皆さんは「谷津さんって目立つことが好きな人なんだろうなあ」とお思いでしょうが、んなことァありません。Twitterを除く活動の多くは、作家の付帯事業としてやらせてもらっている面があります。あ、いや、百パーセント嫌いってわけじゃありませんけど(サイン会とかは結構好き)、小説を書くという一番好きで核心的な行為に差し障りがあるならやらない、くらいの距離感です。

 「文芸作家は宣伝活動に積極的ではない」というのは思い込みだと思います。確かに「作家自身が宣伝するのはよくない」という価値観が文芸界隈に存在するのは事実ですが、相対的に弱くなり始めているなあと感じています。今や、めちゃくちゃ宣伝活動に力を入れておられる作家さんもいらしますし(例を挙げるならミステリ作家の佐藤青南先生、同じくミステリ作家の天祢涼先生や、青春・スポーツ小説の額賀澪先生などなど。例を挙げたらきりがないよ!)、毎日のようにSNSを更新しておられる作家さんもたくさんおられます。
 えっ? 文芸作家さんたちはダイレクトに本の宣伝をしてないじゃないかって?
 宣伝活動は目標の設定によって戦い方が変わります。
 例えば、商品を売りたい場合。その時には商品名や性能、生活に迎えることでどういう風な変化があなたに訪れるのかという「物語」などといった情報を提供してやる必要があります。ある意味で、「商品名を連呼する」アプローチも間違いとは言い難い面があります。単純接触効果(よく目にし耳にするものに対し親しみを覚えるという人間心理のこと)もありますし。
 しかし、宣伝したいものが商品ではないことだってあります。
 例えば、年末年始のCMで、明らかにエンドユーザー商売をしていない企業のCMが流れることがあるじゃないですか。あれは税金対策ともいわれているのですが(笑)、一方で、「企業イメージの向上」という目的があってCMを打っているのです。これと同じように、SNSを使っている文芸作家さんたちは自らのブランドイメージの向上のために発信なさっておられる方も多いのです。

 作家のブランドイメージの向上を目的とした宣伝活動は、あまり出版社さんは得意としていません。出版社さんは自社の商品を宣伝し、販売するのが主業務だからです。SNSで活動していないとしても、出版社さんは各方面に交渉したりプレゼンしたりして、自社商品の宣伝に努めています(努めているはず……です)が、作家そのものを売り込むことはあまりしません。作家のブランドイメージは基本線、作家が自ら積み上げるもの。仕事をしていく中で、刊行された本の評判や方向性によって形成されるものなのです。

(……文芸賞には作家のブランドイメージを創出する出版社主導の宣伝事業という面もありますけど……この話は最悪版元さんに怒られかねないセンシティブな話題なのでこの辺で。)

 ちょっと話が長くなりましたので色々端折りますが、SNS時代の到来で、これまでは本を書くことでしか積み上げることができなかった作家のブランドイメージを作家の手でコントロールし、宣伝することが可能になりました。文芸作家の宣伝の多くはこちらであることが多いのです。

 ほとんど自作の宣伝をせず、ひたすら日常を話しておられる文芸作家さんのアカウントがあったとします。もしかしたら親しみやすさや共感性を演出しているのかもしれません。難しい政治の話をしている文芸作家さんは、インテリジェンスを自らに付与したいのかもしれません。趣味の話をしている方は、同好の士を自らの小説世界に手招きしているのかもしれません。あるいは天然でやっておられるだけかもしれませんが、それでもブランドイメージの向上に少なからず寄与しているのです。

 同じことはライトノベル作家さんや漫画家さんなどにも言えるんじゃないかなあと個人的には思うのですが、すみません、そちらの世界のことは門外漢ゆえ、断言は避けておきます。

 よく言われる言葉ではありますが、宣伝には正解がなく、すぐ陳腐化し、実効性の不明なものです。色んなことを試しながらやっていけばよいのではないかなあというところですが、宣伝を突き詰めてゆくとある種の創作活動と区別がつかなくなっていきます。ただでさえ目の前の創作(小説)でいっぱいいっぱいなのに、さらに創作を抱えるのは実に面倒くさいなあ、メモリを消費しちゃって嫌だなあ、というのが、ものぐさ作家であるわたしのぼやきです。

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