【天狼院書店初心者短編2020年4月コース受講者向け】⑨何を書くべきか「想像」しつつ、ペースを考える
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【注意】
こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】
講座を受講されている皆様、執筆はお進みでしょうか。
ふむふむ、書いている途中なのだけど、何を書いたら、どう書いたらいいかわからずに手が止まっている? それは良くないですね。
そうした皆さんに、お伝えしたいことがあります。それは「イメージ」です。皆さんは、「イメージ」、できてますか?
小説は言葉の産物です。なので、ついつい「言葉」を思い浮かべようと躍起になってしまいますが、これはあまりいい傾向ではありません。作家の側から見た際、小説は
頭の中で思い浮かべた光景を、言葉に変換したもの
であるのが好ましいのです(なぜ「好ましい」という表現を使ったのかというと、そういう機序から生まれない小説もあるはずですが、おそらくこの講座を受けておられる皆様にはまだ縁遠い話と思われるので、あえてこの講座では説明しません)。
もっと端的なことを言うと、
頭の中で思い浮かべたシーンを、言葉に変換したもの
である、ということです。
さて、ここで皆さんに質問です。頭の中に確固たるイメージを持って、今お書きですか?
わたしは本講座において、構想やプロットを練る時間をたくさん設けました。なぜかというと、皆さんにこれからお書きになる世界のイメージを強く持っていただきたいからなんです。
小説を書くという作業において一番大事なのは執筆そのものではなく、架空の世界の登場人物やストーリー、場所やシチュエーションについて、どれだけ深くイメージをするかにかかっています。
たとえば、(わたしは歴史小説家なので)戦国時代の戦場を想像する際、どんな匂いがするだろう、とか、どんな音が聞こえるだろう、と想像するようにしています。恐らくいい匂いはしないでしょうし(兵士たちの汗はもちろん臭いですが、腹を突き刺すと饐えた臭いがするそうですし、馬の糞も転がってそうですよね)、鉄砲とか太鼓とかほら貝の音がするかもしれません。あるいは死肉に群がる鴉の羽音とか……。そう、イメージを深くすると、必然的に「書きたくなる要素」が見えてきます。
が、えてしてこういう描写は、お話の展開を止めてしまいます。深くイメージしすぎると、あれもこれもと描写したくなり、いつまで経ってもストーリーが進まないなんてことになりかねません。
ならばどうしたらよいのか。
そう、プロットです。
プロットを確認しつつ、「ああ、今はこういう風にストーリーを展開させなくちゃならないんだ」と確認しつつ、お話を先に進めていけばよいのです。
必ずしも二者が対立関係にあるわけではありませんが、
描写とストーリー展開は往々にして互いの邪魔をしがち
と覚えておくとよいでしょう。その上で、ストーリーが止まらず、さりとて適切な描写をする、という二者の均衡点を見つけると、すらすら書けるようになっていきます。
今悩んでおられる皆様は、プロットと実作を見比べてみてください。「あれ? 想像以上にプロットの消化がいい……」という方は、やや描写が足りないかもしれません。逆の方はむしろ描写が多すぎかもしれません。
プロットは、お話のペースメーカー、メトロノームの役割も負っています。プロットについて長く取り組んでもらったのは、実作の際のメトロノーム機能を期待してのことだったのです。
今回のお話は、「構想、プロット段階での準備は無駄じゃないんだよ」という内容です。
皆さん、あともう少しです。頑張りましょう!
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