奇説無惨絵条々書影

毎日小説を読んだら〇〇になる件③

 WEB連載の「桔梗の人」よろしくお願いいたします! と共に、2019年2月新刊の「奇説無惨絵条々」(文藝春秋)と文庫化「曽呂利」(実業之日本社)もよろしくお願いいたします。

 というわけで、前回の続きです。
 前回は主に2016年の読書についてお話していました。さて、その次は2017年なのですが……。

 2017年は、今にして思うと飛躍の年でした。
 のちに歴史時代作家クラブ作品賞を頂いたほか、新聞書評などでもたびたび取り上げていただいた「おもちゃ絵芳藤」(文藝春秋)や、島左近の彷徨を描き話題になった「某には策があり申す 島左近の野望」(角川春樹事務所)の刊行年なのです。
 (おもちゃ絵芳藤の多くは2016年であるとはいえ)今取りあげた二作は2017年に最終仕上げを行ないました。
 そしてこの2017年には、わたしの中である変化があったのです。

「気持ち悪い」

 相変わらず2017年も、やはり年間千冊程度本を読んでいます。飛躍的に小説と資料を読むことが増えました。その頃に、わたしはあることに気づいたのです。
 自分の小説のゲラが「気持ち悪い」のです。
 それまではなかった感覚です。自分の文章を読んでいて乗り物酔いみたいな感覚に襲われ、かなりビビりました。
 というわけで、「おもちゃ絵芳藤」以降はその気持ち悪さに追い立てられるようにゲラや原稿を直すようになりました。「気持ち悪い」ところに線を引き、そこをどう直すかをひたすら考えるという日々を送っていたのが2017年のわたしの活動となります。
 当初、名状しがたい「気持ち悪さ」の正体に戸惑っていたのですが、やがて、その正体に思い至ることになります。けれど、これはもう少し先の話になります。

「いい本ないっすか」

 新刊書籍を割と読むようになり、編集者さんや書店員さんと本の話をするようになりました。
 本を読んで感じるのは、「自分のアンテナだけではカバーしきれない」ということでした。わたしはミステリや純文学、ある種のジャンル小説に疎いところがあり、自ら手を伸ばすことをしてきませんでした。というわけで、餅は餅屋、編集者さんや書店員さんに「最近の一押し」本を聞いて回る面倒くさい作家がここに誕生しました。おかげで色々な作家さんの名作を知ることができたのは本当に大きな変化です。
 さらに、小説を書く際、編集者さんから「この本は押さえておいたほうがいい」という古典的作品を紹介していただけるようになったのも大きいです。
 世間の皆様には意外に思われるかもしれませんが、創作というのは先行作品を踏まえた上で展開されるものです。歴史小説を書くにあたりある程度司馬遼太郎(故人のため敬称略)を踏まえておけないといけないのと同様、他のジャンル小説を書く際にも踏まえておかなくてはならない作家や作品というのは存在するのです。
 そうした過去作品を読んで咀嚼し、己の小説に取り込むことができるようになったというのは本当に大きな変化だと思っています。

 2017年の読書ライフによって訪れたこれらの変化が、2018年にはさらに深まっていくことになるのですが……。続きは次回。明日公開予定。

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