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第18話 結局

 通算15人。
 尾張さんの、呼びかけを完全スルーした生徒の人数である。

「これで、決定ですね。尾張さんは、幽霊です。」

「まだよ、まだ、単純に私が嫌われているだけという可能性が残っているわ。」

「自分で言ってて悲しくなりません?」

 尾張さんが何やらぶつぶつ呟きながら、現実から目を背けていると、

「ねぇ、尾張さん本当にそこにいるの?」

 と、椎堂さんが話しかけてきた。

「いますよ?今は、自分の存在証明を必死になってしているところです。」

 そう言うと、椎堂さんは、何やら考えるそぶりを見せながら、

「忙しいところ、悪いんだけど、私、尾張さんに聞いてみたい事があるのよ。」

「なんですか?」

「尾張さんは、亡くなったわけだけれど、死因は、その、他殺なわけじゃない?」

 椎堂さんは、僕に配慮してなのか言いにくそうにそう言う。

「だとすると、尾張さんをその、殺害した直接の犯人がいるわけよね?」

 じゃあ、尾張さんは犯人を知ってるはずじゃない?と、椎堂さんは言った。

 たしかに、そうだ。彼女を殺した犯人を彼女自身が目撃している可能性はある。しかし、

「たぶんですけど、覚えてないと思います。」

 僕のその言葉に椎堂さんは疑問符を浮かべる。

「尾張さん、この一ヶ月くらいの記憶ないみたいなんですよね。」

「・・・・・・たしか、紀美丹君と尾張さんが仲良くなったのって、先月ぐらいからよね?」

「まあ、そうですね。その前からクラスは一緒でしたけど、話すようになったのは、最近です。」

「つまり、あなた、ほぼ、初対面の尾張さんの幽霊に話しかけたってこと?」

「僕は、初対面じゃないです。尾張さんは、そうかもしれなかったですけど。」

 正直、僕の事を忘れられていたのは、かなりショックだったが、尾張さんの対応にはほとんど差はなかったので、いつもの調子で話しかけてしまっていた。

「とんだ、プレイボーイね紀美丹君。」

「プレイボーイって死語じゃないですか?あと、違います。」

 話しかけてきたのは、尾張さんです。と言うと、

「・・・・・・プレイガール。」

「その言葉は、意味が違うと思います。」

「ビッチ?」

「それは、ちょっとひどくないですか?尻軽くらいにしてあげてください。」

「ねぇ、聞こえてるのだけど?」

 僕たちの発言を聞いて、ジト目をしている尾張さんは、どうやら、生徒へのアプローチを諦めたようであった。

「あなたの心を揺さぶる物語を。」  あなたの感情がもし動かされたなら、支援をお願いします。  私達はあなたの支援によって物語を綴ることができます。  よろしくお願いします。