第39話 約束の日
月曜日、退屈な授業の終わりを待ち望みながら、今日の予定を確認する。
今日は、百年に一度と言われる流星群が降る。
そこまで星に興味があったわけではない。
ただ、約束を果たす。それだけのために、ここまで準備してきた。
そうは言っても、いざ尾張さんとの星空デートが目の前に迫ってきていると考えると、ソワソワしてしまうのは男の性というものだろうか。
そんなことを考えながら1日を過ごした。
担任が、ホームルームの終了を告げる。
僕は、中身のない軽い鞄を引っ掴むと、旧文芸部室へと走り出す。
それを見つめる、一つの視線に気付かずに。
旧文芸部室では、尾張さんが、すでに荷物をまとめていた。
「あら、今日は早いのね。」
「えぇ、まぁ。」
遠足が楽しみで眠れなかった小学生のようで、少し気恥ずかしかった。
「じゃあ、行きますか。」
テントを持つ。最近のテントは軽くて持ち運びにも便利で助かる。
校門まで、尾張さんと連れ立って歩く。
「紀美丹君。山に行く前に、寄りたいところがあるんだけど、いいかしら。」
自転車の荷台にテントを積む。
「大丈夫ですけど、あんまり時間をかけると流星群来ちゃいますよ?」
そんなに長居するつもりはないわ。そう言う尾張さんはどこか遠くを眺めるようにしていた。
「ただ、ちょっとだけ、家を見ておきたいのよ。」
「あなたの心を揺さぶる物語を。」 あなたの感情がもし動かされたなら、支援をお願いします。 私達はあなたの支援によって物語を綴ることができます。 よろしくお願いします。