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第79話 世界の終わりを君に捧ぐ 破 3

「紀美丹君!?」

 倒れた僕を、尾張さんが瓦礫の影に引きずっていく。

「紀美丹君!大丈夫!?ねぇ!!」

「僕が、死んだら、骨は日本に持ち帰ってください。」

 咳き込みながら、胸を押さえる。

「?」

 あれ?血が出てない。
 衝撃を受けた胸部を確認する。胸には青痣が出来ている様だが、まったく出血していなかった。

 どういうことだ?確かに撃たれたと思ったんだけど。

「紀美丹君。これ。」

 尾張さんが、僕が首から下げていた御守りを見せてくれる。そこには、銃弾が突き刺さり、ひしゃげた鉄板が御守りの布の穴から見えていた。

「妙に重いと思ったら鉄板入ってたんですね。この御守り。」

 どうやら、椎堂さんがくれた御守りのおかげで、ひとまず命拾いしたようだった。

 だが、まだ安心はできなかった。
 先程僕を銃撃した誰かがまだその辺をうろついているかもしれない。

 尾張さんが、恐る恐る瓦礫から顔を出し周囲を確認する。

「誰もいないわね。倒れてる人以外。」

 僕も、痛む身体をおして確認する。確かに生きている人は誰もいないようだった。しかし、

「あの、倒れてる人が持ってる拳銃から微かに煙出てませんか?」

 僕が示した方を尾張さんも確認する。

「出てるわね。」

 どうやら、銃撃の犯人は彼のようだった。恐らく、死の直前に、意識が朦朧とするなか、最後の力を振り絞って引き金を引いたのだろう。

「わざわざ僕に向けて撃たなくても。」

「動いてたから敵だと思ったんでしょうね。」

 本当に勘弁してほしい。痛いのはもう懲り懲りなのに。

「紀美丹君。歩ける?」

「もう少し待ってもらっていいですか?」

 骨には異常は無さそうだが、一瞬肺の中の空気が全て持っていかれるような感覚だった。
 そのため、まだ呼吸が乱れている。

 尾張さんは、仕方ないわね。と言うと、僕の頭を膝の上にのせる。

「尾張さん?」

「地面の上だと、頭、痛いでしょう?」

 少し照れたような顔をしながらそう言う尾張さんに感謝をしながら、息が整うまでのしばらくの間、尾張さんの膝枕を堪能させてもらうことにする。

 こんな時間が待っているなら、たまには銃撃されるのもーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー良くないな。

 やっぱり痛いのは嫌だ。

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